1995年12月31日放送の J-WAVE「TOKIO HOT 100」を振り返る回顧コラムです。当時のチャート上位曲を手がかりに、その週の音楽シーンを読み解きます。
本サイトは非公式のファンサイトです。チャートデータの出典:J-WAVE「TOKIO HOT 100」(1995年12月31日放送回)。
この週の音楽シーン
1995年12月31日、大晦日の東京から流れていたJ-WAVE「TOKIO HOT 100」のTOP10には、この年を締めくくるにふさわしい静けさと余韻をたたえた一曲が輝いていた。1位に立ったのは、アイルランド出身のシンガー、エンヤの「ANYWHERE IS」。多重録音されたコーラス、ケルト的な旋律、そしてプロデューサーのニッキー・ライアンとロマ・シェリーが作り上げる霧のような音響空間――エンヤの音楽は、ヒットチャートの喧騒とは一線を画す独自の時間軸を持っていた。慌ただしく過ぎ去っていく一年の最後の日に、この浮遊感のあるサウンドが首位に選ばれていたというのは、なんとも象徴的な巡り合わせに思える。年の瀬の夜、車のラジオやコンポから静かに流れてきたこの曲を、当時のリスナーはどんな気持ちで聴いていただろうか。 2位以下を見渡すと、90年代半ばという時代の空気が濃密に詰まっている。UKのR&Bグループ、エターナルの「POWER OF A WOMAN」、映画「ウェイティング・トゥ・イグゼイル」のサウンドトラックから生まれたホイットニー・ヒューストンの「EXHALE(SHOOP SHOOP)」、そしてマライア・キャリーとボーイズIIメンが共演した「ONE SWEET DAY」。この時期のアメリカのチャートを席巻していたメロウなR&Bバラードの潮流が、そのままこの週のTOP10にも色濃く反映されている。エイス・オブ・ベイスの「BEAUTIFUL LIFE」はスウェーデン発のユーロポップらしい爽やかさで異彩を放ち、7位のラヴ・シティ・グルーヴはドラムンベース色を帯びたクラブサウンドで当時のダンスミュージックの実験性を感じさせる。 とりわけ話題性という点で見逃せないのが6位のザ・ビートルズ「FREE AS A BIRD」だろう。解散から四半世紀を経て、ジョン・レノンが残したデモテープに残る三人のメンバーが新たな演奏を加えて完成させたこの曲は、「アンソロジー」プロジェクトの目玉として世界中を驚かせた。90年代半ばという時代に、伝説のバンドの「新曲」が現役のヒットチャートに顔を出すという出来事そのものが、音楽シーンにとって特別な意味を持っていた。 一方でベン・フォールズ・ファイヴの「JACKSON CANNERY」は、ギターロック全盛の中でピアノを主軸に据えたオルタナティブ・サウンドとして異彩を放ち、C+C ミュージック・ファクトリーの「I’LL ALWAYS BE AROUND」はハウス〜ダンス系の系譜を感じさせる。そして10位には、当時の渋谷系〜J-POPシーンを象徴する存在だったマイ・リトル・ラヴァーの「evergreen」がランクイン。洋楽と邦楽が同じテーブルに並ぶこの並び方こそ、「TOKIO HOT 100」という番組が体現していた東京発の国際感覚だったのかもしれない。 震災や社会的な出来事など、決して穏やかとは言えなかった1995年という年の最後に、静謐なエンヤの歌声が首位を飾っていたという事実は、聴き手にとって一つの安らぎだったのではないだろうか。多様なジャンルがひしめき合うこの週のチャートは、90年代半ばという音楽の過渡期を映す貴重な記録として、今聴き直しても新鮮な発見に満ちている。
1995年12月31日付 TOP10(出典:J-WAVE TOKIO HOT 100)
- 1位 ANYWHERE IS — ENYA ▶ YouTube Music / Spotify / 🛒 Amazonで探す / 🛒 楽天で探す
- 2位 POWER OF A WOMAN — ETERNAL ▶ YouTube Music / Spotify / 🛒 Amazonで探す / 🛒 楽天で探す
- 3位 EXHALE(SHOOP SHOOP) — WHITNEY HOUSTON ▶ YouTube Music / Spotify / 🛒 Amazonで探す / 🛒 楽天で探す
- 4位 ONE SWEET DAY — MARIAH CAREY AND BOYZ Ⅱ MEN ▶ YouTube Music / Spotify / 🛒 Amazonで探す / 🛒 楽天で探す
- 5位 BEAUTIFUL LIFE — ACE OF BASE ▶ YouTube Music / Spotify / 🛒 Amazonで探す / 🛒 楽天で探す
- 6位 FREE AS A BIRD — THE BEATLES ▶ YouTube Music / Spotify / 🛒 Amazonで探す / 🛒 楽天で探す
- 7位 LOVE CITY GROOVE — LOVE CITY GROOVE ▶ YouTube Music / Spotify / 🛒 Amazonで探す / 🛒 楽天で探す
- 8位 JACKSON CANNERY — BEN FOLDS FIVE ▶ YouTube Music / Spotify / 🛒 Amazonで探す / 🛒 楽天で探す
- 9位 I’LL ALWAYS BE AROUND — C+C MUSIC FACTORY ▶ YouTube Music / Spotify / 🛒 Amazonで探す / 🛒 楽天で探す
- 10位 EVERGREEN — MY LITTLE LOVER ▶ YouTube Music / Spotify / 🛒 Amazonで探す / 🛒 楽天で探す


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