Rol3ert『Kodoku』は何が新しいか——初の日本語タイトルに込めた引き算のロック

薄暗い部屋で歪んだギターの残響が広がる、内省的なロックの抽象イメージ 楽曲

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台北のワンマンをソールドアウトさせた翌週、東京のスタジオでノイズだらけのギターを重ねていた——そんな移動距離と感情の温度差を、まるごと1曲に閉じ込めたのがKodoku🛒楽天だ。Rol3ertが2026年6月24日にリリースした2nd EPのリード曲で、彼が初めて日本語タイトルを付けた曲でもある。まず耳を掴むのは、ラウドなのに湿っぽい質感。感情を抑え込むように置かれたボーカルの上を、歪んだギターと重たいドラムが少しだけ遅れて追いかけてくる。

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この曲の要点

  • 「Kodoku」はRol3ertの2nd EP『Kodoku EP』のリード曲で、2026年6月24日にExciter Recordsからリリースされた(配給:HIP LAND MUSIC CORPORATION)。
  • Rol3ertが初めて日本語タイトルを付けた楽曲で、ノイズを含んだギターと重いドラム、感情を抑えたようなボーカルで孤独と内面の葛藤を描く。
  • Rol3ertは2005年生まれ、アメリカ出身で2歳から日本育ちのシンガーソングライター。「MUSIC AWARDS JAPAN 2026」でラジオ特別賞を受賞している。
  • リリース月の2026年6月には、Golden Melody Awards Showcase 2026への出演と、台北での初の海外ソロ・ヘッドライン公演のソールドアウトも重なった。

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なぜ「Kodoku」だったのか——日本語タイトル第一号の意味

結論から言うと、この曲名は”翻訳できない状態”を選び取った結果だと思ってます。Rol3ertはこれまで「meaning」「HOPE」「Nerd」「frozen」「savior」「(how could i be)honest?」と、英語のワンワードを積み上げてきた。そこに突然、漢字二文字。The 5-track Kodoku EP is anchored by its lead track “Kodoku,” the first song Rol3ert has ever titled in Japanese.という事実だけを見ても、この選択は明らかに”わざと”だ。

Lonelinessでもisolationでもなく、孤独。英訳すると意味が3つくらいに分裂してしまう単語を、彼はあえてそのまま置いた。2歳からずっと日本で育った”アメリカ出身の日本人”という自身の輪郭とも重なる選択で、ここが面白い。母語のようで母語じゃない、外国語のようで外国語じゃない——その隙間に置かれる音として、Kodokuはたぶん最適な単語だった。

作品としては、いわゆる”J-POPのオルタナ寄り”に括られがちだけれど、聴くとむしろ2020年代前半の海外ベッドルーム・ロック——たとえばbeabadooboeeやWallowsあたりの手触りに近い。歪ませ方が違う。日本のバンドは歪みを”パワー”として使う人が多いが、この曲の歪みは”かさぶた”みたいな使い方をしている。剥がれかけていて、下から生々しい皮膚が見える。

基本情報とクレジット——2026年6月24日、Exciter Records

まず事実関係を整理しておく。「Kodoku」は2026-06-24にリリースされた5曲入りEPのリード曲で、レーベルはExciter Records、配給はHIP LAND MUSIC CORPORATION。プロデュースはRol3ert自身と、YouTubeのクレジット表記からTakayukiという名の共同プロデューサーの連名になっている(後半は表記が省略されているため、詳細は公式情報を参照)。

EP自体は5トラック構成で、後半にはREJAYを客演に招いた「Aftertaste (feat. REJAY)」が収録されている。Japanese singer-songwriter Rol3ert releases the official music video for “Aftertaste (feat. REJAY)”, the latest moment in a June that has seen him release his second EP Kodoku, perform his first-ever overseas solo headline show in Taipei, and receive a major industry award in Japan.——つまり6月というひと月のあいだに、EPリリース/海外初ワンマン/国内主要アワード受賞が同時進行で走っていた。20歳前後のキャリアとしては、正直かなり異常な密度だ。

ちなみにRol3ertの読みは「ロバート」。Rol3ert(ロバート、2005年10月12日 – )は、日本のシンガーソングライター。 2005年10月2日にアメリカ合衆国で生まれ、2歳の頃から日本で育つ。数字の3が入る綴りはSEO・視認性の両面でよく効いていて、SpotifyでもYouTubeでも他アーティストと絶対に被らない。この命名のセンスは、そのままKodokuというタイトルの選び方にも通じている気がする。

サウンドの読みどころ——ノイズは”武器”ではなく”皮膚”

この曲のプロダクションは、大きく3つの層でできている。前面のボーカル、その周りを取り囲むギター、下から支える重たいドラム。ただし、この3層の距離感が普通じゃない。Driven by noise-tinged guitar, heavy drums and a vocal that seems to suppress emotion, the track explores loneliness and the inner conflict of becoming, depicting the anxiety that lives beneath the surface of self-establishment.——公式のこの一文にある”suppress emotion(感情を抑え込む)”という表現が、聴取印象と完全に一致する。

普通、ラウドなロックはボーカルを”張らせる”。叫ぶ、吠える、ぶつける。だがKodokuは逆で、ギターとドラムが上がっていくほどボーカルは沈んでいく。この反比例が肝で、たぶん多くのリスナーが最初の1回で気づく違和感はここだと思う。イントロのリバーブの掛かり方も特徴的で、部屋の残響というより”頭蓋骨の内側で鳴っている”感じ。ヘッドフォンで聴くと明確にわかる。

もうひとつ、ドラムの処理。キックの帯域が意図的にモコっと丸められていて、”殴る”というより”のしかかる”重さになっている。BPMを上げてタイトに詰めれば、いわゆる邦ロック的なカタルシスに寄せることもできたはずだが、そこは選ばなかった。90年代のスマッシング・パンプキンズや、もっと最近ならSoccer Mommyの”歪みが陰鬱に見える”側の系譜に近い。

そう。ノイズは武器ではなく、皮膚の一部として使われている。ここを聴き逃すと、この曲はただの”ラウドで暗い曲”に見えてしまう。

聴きどころ3点

  • ボーカルとバンドの”逆相”——楽器が高まるほどボーカルが引く、感情を抑える演唱の設計。
  • ノイズの質感——アタックの強さで押すのではなく、輪郭を溶かして”皮膚”のようにボーカルに纏わせる歪みの使い方。
  • タイトルの言語選択——初の日本語タイトルとしての「Kodoku」。英語で書いたら分裂してしまう情感を、漢字二文字に閉じ込めた判断そのもの。

Rol3ertというアーティストの現在地

「Kodoku」を語る前に、彼のキャリアの短さも押さえておきたい。本格始動はほんの1年半前、2025年1月のシングル「meaning」から。デビューからわずか3カ月、前作「meaning」はYouTube再生50万回を突破。Spotifyでは2400以上のユーザープレイリストに保存され、イギリスを中心にラジオプレイも100回以上。この立ち上がり方がまず異例で、無名のSSWがイギリスのラジオから火が付くというルート自体、日本のインディーではあまり例がない。

その後、4月リリース「HOPE」はJ-WAVE TOKIO HOT 100でTOP20入りを果たし、6月リリース「Nerd」はインドネシア、日本、アメリカ、台湾、韓国など世界中のプレイリストにて取り上げられた。——地元の東京から出て、アジア圏で先に火が付いたパターンだ。日本のバンドが台湾でウケる例は珍しくないが、日本のSSWがインディーの段階でアジア横断的に拾われるのは、ここ数年でようやく出てきた流れだと思う。

そしてこの流れの延長線上に、2026年6月がある。Performed at the Golden Melody Awards Showcase 2026 and sold out debut overseas headline show in Taipei Took home the Radio Special Award at MUSIC AWARDS JAPAN 2026——台北でのショーケース、初の海外ワンマン・ソールドアウト、そして国内の主要アワードでの受賞。20歳の作家として、通常なら3年かけて起こす出来事が1ヶ月に圧縮されている。

この密度の中で書かれた曲、というのが「Kodoku」を聴くうえで地味に重要だと思ってます。派手なプロモの真ん中で、あえて”孤独”というタイトルを立てる。ここに彼の作家としての体温がある。

キャリアの中での「Kodoku」の位置——2nd EPというフェーズ

結論を先に書くと、この曲はRol3ertの”内側モード”の代表曲になると思ってます。彼にはざっくり2つのモードがあって、ひとつは「HOPE」「meaning」系のメロディック・ポップのライン。もうひとつが「Nerd」「frozen」系のオルタナ寄り・ローファイ寄りのライン。「Kodoku」は明らかに後者の系譜で、しかもそこにさらに”日本語圏の湿度”を注ぎ足した曲だ。

2nd EPというフォーマットも効いている。フルアルバムだと世界観を広げないと持たないが、5曲入りのEPなら1つのムードを掘り切れる。彼のこれまでのシングル・ワークで散らばっていた”孤独””不安””becomingの途中で感じる違和感”のようなテーマを、1枚に凝縮する器としてEPを選んだのは合理的だ。「Aftertaste (feat. REJAY)」のようなコラボ曲を後半に置くことで、内向きの世界にちゃんと風穴が開いている構成にもなっている。

あともうひとつ、地味に大きいのが”素顔を見せた後”のリリースであること。MVには、これまで”トレードマーク”としてかぶり続けていたキャップを脱ぎ、初めて素顔を見せるRol3ertが登場——これが2025年4月の「HOPE」MVでの出来事だった。匿名性から実像へ、というアーティストとしての通過儀礼を済ませた上で、日本語タイトルの内省曲に踏み込んだ。順序がとても丁寧だ。

チャートとリアクション——アジア横断で広がった6月

チャート面については、EP全体としてはまだ動きが継続中なので、断定できる数字は控える。ただ確実な事実として押さえておきたいのは、リリース月の周辺で複数のマイルストーンが同時に起きたということ。

まず国内では、国内最大規模の国際音楽賞「MUSIC AWARDS JAPAN 2026」において「ラジオ特別賞」を受賞。ラジオ発でリスナーを掴んできたアーティストとしては、これ以上ないタイミングでの受賞だ。J-WAVEはさらに新音楽プロジェクト「RISING CUTS」を始動! 未来の音楽シーンを切り拓く才能をいち早く発掘・発信。第1弾アーティストはRol3ertに決定、と続く座組みを組んでいる。ラジオ局側からの推し方が、単発のパワープレイではなく座組みごと変えるレベルになっているのがポイントだ。

海外側では、台北。台湾のGolden Melody Awards Showcase 2026への出演と、初の海外ワンマンのソールドアウトが同時期に走った。台湾のインディーシーンは日本のシティポップ〜オルタナ系にもともと感度が高く、その土壌にKodoku EPは相性がいい。日本語タイトルの曲を、日本語圏外のリスナーがどう受け取るか——これは今後半年から1年で観測ポイントになる。

それから、Rol3ertのInstagramではnew ep “Kodoku” out now going on a tour in november (tokyo and osaka)と告知されており、11月に東京・大阪でツアーが組まれている。ライブでこの曲がどう鳴るのか——スタジオ音源のノイズ処理を生バンドに落とし込むと、印象がかなり変わるはずで、そこも聴きどころになる。

関連作と、Rol3ertを聴き始める順序

結論から言えば、「Kodoku」から入って気に入ったなら、次は同EP収録の「Aftertaste (feat. REJAY)」に進むのがいい。内省側の「Kodoku」に対して、コラボレーションで風通しを作った側の顔が見える。そこから遡って「Nerd」(2025年6月)、さらに「HOPE」(2025年4月)——このあたりで、彼の”暗い側”と”開けた側”の両方が掴めるはずだ。

個人的にひとつだけ推しておきたいのが、始点の「meaning」。派手さはないけれど、この1曲で彼のメロディ作家としての骨格が全部見える。イギリスのラジオ局が最初に食いついたのが納得できる、というか。声の”引き算”の巧さは、Kodokuの抑制的なボーカル処理にそのまま繋がっている。

入門動線

この曲の次に聴くなら、同EPの「Aftertaste (feat. REJAY)」。内省の「Kodoku」に対して、他者との関係性の中で揺れる質感を持つコラボ曲で、Kodoku EPを1枚として体感するならこの流れが自然だ。関連1枚として推すなら、当然そのまま『Kodoku EP』全5曲通し。20分ほどで聴けるボリュームで、彼の現在地がまるごと入っている。

まとめ——20歳の”内側”を、外に出さずに聴かせる曲

「Kodoku」の面白さは、感情を外に出さないまま、聴き手の内側にちゃんと届いてしまうところにある。叫ばない、泣かない、盛り上げない。それでも、聴き終わったあと胸のあたりに何か沈殿している。この”引き算のロック”を、20歳前後の作家が2026年の日本でやっているというのが、地味に事件だと思ってます。

台北で客席を埋め、国内でアワードを取り、ラジオ局が座組みごと動く——その真ん中で、あえて漢字二文字の”孤独”を立てる。派手なフェーズにいるアーティストほど、こういう曲を書ける時期は短い。今のうちに聴いておくべき1曲、というのが個人的な結論です。11月の東京・大阪ツアーで、この曲がどうバンドに解けていくのかも、いまから楽しみにしてる。

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