1993年9月19日放送の J-WAVE「TOKIO HOT 100」を振り返る回顧コラムです。当時のチャート上位曲を手がかりに、その週の音楽シーンを読み解きます。
本サイトは非公式のファンサイトです。チャートデータの出典:J-WAVE「TOKIO HOT 100」(1993年9月19日放送回)。
この週の音楽シーン
1993年9月19日放送の「TOKIO HOT 100」を振り返ると、栄えある1位はマライア・キャリーの「DREAMLOVER」だった。前年の「エモーションズ」から続く伸びやかなハイトーンと、当時のポップスに漂い始めていたヒップホップ/R&Bの黒っぽいグルーヴを両立させたこの曲は、彼女のキャリアの中でも屈指のポップネスを持つ一曲として記憶されている人も多いだろう。90年代前半という時代は、シンガーの表現力が過剰なまでにフィーチャーされる一方で、トラックそのものはミニマルでリズム主体という、のちのR&Bの潮流を予感させる作りが増えていた時期であり、「DREAMLOVER」はまさにその過渡期を象徴する存在だったといえる。
2位にはUB40による「(I CAN’T HELP)FALLING IN LOVE WITH YOU」がランクインしている。エルヴィス・プレスリーの名曲をレゲエ/ラヴァーズロック調にアレンジしたこのカヴァーは、原曲の持つロマンティックな旋律をそのままに、レイドバックしたビートで包み込むことで、90年代のリスナーにも自然に届く仕上がりになっていた。この時期はオリジナル至上主義ではなく、こうした異ジャンル間の「翻訳」としてのカヴァーが商業的にも文化的にも大きな存在感を持っていたことがよくわかる並びだ。
3位のビリー・ジョエルによる「THE RIVER OF DREAMS」も見逃せない。ゴスペル的なコーラスワークを大胆に取り入れたこの曲は、80年代からのシンガーソングライターが自身のルーツを再確認しながら新しい表現に挑んだ好例であり、ベテラン勢の底力を感じさせる存在だった。
一方、4位のポール・ウェラー「SUNFLOWER」、5位のジャミロクワイ「EMERGENCY ON PLANET EARTH」という並びは、当時のUKシーンの熱量をそのまま伝えている。ザ・スタイル・カウンシル解散後、ソロとしての表現を模索していたウェラーの新たな一歩と、レア・グルーヴやアシッド・ジャズの文脈から登場したジャミロクワイのデビュー作が同じチャートに並ぶことで、UKソウル/ファンクの再評価という時代の空気が浮かび上がってくる。
6位のベイビーフェイス、7位のダリル・ホールという名前からは、都会的でメロウなAOR/ブラックコンテンポラリーの系譜が続いていたことも読み取れる。ソングライター/プロデューサーとしても活躍していたベイビーフェイスの作家性、そしてホール&オーツの片割れとして時代を築いてきたダリル・ホールのソロワークは、それぞれ異なる角度から「大人のポップス」を提示していた。
8位のマット・ビアンコ「OUR LOVE」は、洗練されたラウンジ/ソフィスティ・ポップの感触を持つ楽曲で、ヨーロッパ発のポップスがまだ独自の存在感を保っていた時代性を物語っている。9位にはブラジルの歌姫ガル・コスタが登場し、MPBのしなやかな表現力をチャートの中で際立たせていた点も興味深い。そして10位のゲイリー・クラークは、元アズテック・カメラのメンバーとしても知られる人物で、ソロとしての洗練されたソングライティングが光る一曲だった。
こうして並べてみると、この週のTOP10はUS・UK・ブラジルという地理的広がりと、ポップス・ソウル・レゲエ・アシッド・ジャズ・MPBというジャンルの多様性を同時に内包していたことがわかる。「TOKIO HOT 100」というフォーマットが、単なる洋楽ヒットチャートにとどまらず、当時の世界的な音楽の潮流を一週間単位で切り取るショーケースとして機能していたことを、この回のラインナップは静かに証明しているのではないだろうか。
1993年9月19日付 TOP10(出典:J-WAVE TOKIO HOT 100)
- 1位 DREAMLOVER — MARIAH CAREY ▶ YouTube Music / Spotify / 🛒 Amazonで探す / 🛒 楽天で探す
- 2位 (I CAN’T HELP)FALLING IN LOVE WITH YOU — UB40 ▶ YouTube Music / Spotify / 🛒 Amazonで探す / 🛒 楽天で探す
- 3位 THE RIVER OF DREAMS — BILLY JOEL ▶ YouTube Music / Spotify / 🛒 Amazonで探す / 🛒 楽天で探す
- 4位 SUNFLOWER — PAUL WELLER ▶ YouTube Music / Spotify / 🛒 Amazonで探す / 🛒 楽天で探す
- 5位 EMERGENCY ON PLANET EARTH — JAMIROQUAI ▶ YouTube Music / Spotify / 🛒 Amazonで探す / 🛒 楽天で探す
- 6位 FOR THE COOL IN YOU — BABYFACE ▶ YouTube Music / Spotify / 🛒 Amazonで探す / 🛒 楽天で探す
- 7位 I’M IN A PHILLYY MOOD — DARYL HALL ▶ YouTube Music / Spotify / 🛒 Amazonで探す / 🛒 楽天で探す
- 8位 OUR LOVE — MATT BIANCO ▶ YouTube Music / Spotify / 🛒 Amazonで探す / 🛒 楽天で探す
- 9位 RIGHT HERE/HUMAN NATURE — GAL COSTA ▶ YouTube Music / Spotify / 🛒 Amazonで探す / 🛒 楽天で探す
- 10位 FREE FLOATING — GARY CLARK ▶ YouTube Music / Spotify / 🛒 Amazonで探す / 🛒 楽天で探す


コメント