1998年11月8日放送の J-WAVE「TOKIO HOT 100」を振り返る回顧コラムです。当時のチャート上位曲を手がかりに、その週の音楽シーンを読み解きます。
本サイトは非公式のファンサイトです。チャートデータの出典:J-WAVE「TOKIO HOT 100」(1998年11月8日放送回)。
この週の音楽シーン
1998年11月8日放送の「TOKIO HOT 100」で1位に輝いたのは、フィリー・スリムことノーマン・クックが手掛けるFATBOY SLIMの「GANGSTER TRIPPIN」だった。この年はケミカル・ブラザーズやプロディジーらと並び、いわゆる「ビッグビート」がクラブフロアだけでなくラジオのチャートにも堂々と顔を出すようになったタイミングで、ブレイクビーツにファンクやソウルのサンプルをコラージュしたFATBOY SLIMのサウンドは、踊るための音楽でありながらポップスとしても十分に成立するという、当時ならではの越境性を体現していたと言える。ダンスミュージックがロック的な文脈でも語られるようになった転換点の空気を、この1位という結果は象徴していたのではないだろうか。
TOP10全体を眺めると、この週は本当にジャンルの振れ幅が大きい。2位のLAURYN HILLによる「DOO WOP」は、フージーズでの活躍を経てソロへと踏み出した彼女が、ヒップホップとソウル、ゴスペル的な深みを一つの楽曲に凝縮させた仕事で、後にこの時期のアルバムが長く語り継がれることになる出発点の一曲だ。一方で3位にはPHIL COLLINSが往年のスタンダードをしっとりと歌う「TRUE COLORS」が入り、9位にはINOJによる「TIME AFTER TIME」という、こちらも別のテイストでのカバー的解釈が並ぶ。90年代後半は名曲の再解釈やカバーがラジオでも自然に受け入れられていた時期で、オリジナルとカバーが同じ週のチャートに同居すること自体が、当時のポップシーンの懐の深さを物語っている。
4位THE CARDIGANSの「MY FAVOURITE GAME」は、スウェーデン発のギターポップが持つ乾いたセンスと歌謡的なメロディの融合が心地よく、5位SHERYL CROWの「MY FAVORITE MISTAKE」はルーツロック的な骨太さを持ちながらも都会的な軽さを失わない、90年代女性シンガーソングライターの成熟を感じさせる仕事だった。6位ALANIS MORISSETTEの「THANK U」は、内省と解放をテーマにした歌詞世界がオルタナティブロックの枠を超えて広く受け入れられていたことを示しているし、7位BECKの「TROPICALIA」はブラジルの60年代トロピカリア運動へのオマージュを自身の音楽的雑食性の中に取り込んだトラックで、当時のBECKがいかに自由に音楽ジャンルを横断していたかがよくわかる。
8位BILLY CRAWFORDの「URGENTLY IN LOVE」は、ティーンポップやR&B寄りのサウンドが北米だけでなくアジア圏からも発信され始めていた時代の空気を伝えるし、10位のCELINE DIONとR.KELLYによる「I’M YOUR ANGEL」は、大型バラードデュエットがまだラジオの主戦場として強い存在感を持っていたことを思い出させてくれる。こうして見渡すと、この週のTOP10はダンス、ヒップホップ、AOR、ギターポップ、オルタナ、実験的ポップ、ティーンポップ、王道バラードデュエットまでが一堂に会しており、90年代末という時代がジャンルの垣根を越えてポップミュージックを楽しむ余地に満ちていたことを教えてくれる。1位のFATBOY SLIMという選択は、そうした多様性の中でもとりわけ「踊ることと聴くことの境界」を軽やかに越えていく音楽が支持されていたことの、わかりやすい証だったように思う。今聴き返しても、この一曲が持つビートの躍動感は色褪せていない。
1998年11月8日付 TOP10(出典:J-WAVE TOKIO HOT 100)
- 1位 GANGSTER TRIPPIN — FATBOY SLIM ▶ YouTube Music / Spotify / 🛒 Amazonで探す / 🛒 楽天で探す
- 2位 DOO WOP — LAURYN HILL ▶ YouTube Music / Spotify / 🛒 Amazonで探す / 🛒 楽天で探す
- 3位 TRUE COLORS — PHIL COLLINS ▶ YouTube Music / Spotify / 🛒 Amazonで探す / 🛒 楽天で探す
- 4位 MY FAVOURITE GAME — THE CARDIGANS ▶ YouTube Music / Spotify / 🛒 Amazonで探す / 🛒 楽天で探す
- 5位 MY FAVORITE MISTAKE — SHERYL CROW ▶ YouTube Music / Spotify / 🛒 Amazonで探す / 🛒 楽天で探す
- 6位 THANK U — ALANIS MORISSETTE ▶ YouTube Music / Spotify / 🛒 Amazonで探す / 🛒 楽天で探す
- 7位 TROPICALIA — BECK ▶ YouTube Music / Spotify / 🛒 Amazonで探す / 🛒 楽天で探す
- 8位 URGENTLY IN LOVE — BILLY CRAWFORD ▶ YouTube Music / Spotify / 🛒 Amazonで探す / 🛒 楽天で探す
- 9位 TIME AFTER TIME — INOJ ▶ YouTube Music / Spotify / 🛒 Amazonで探す / 🛒 楽天で探す
- 10位 I’M YOUR ANGEL — CELINE DION AND R.KELLY ▶ YouTube Music / Spotify / 🛒 Amazonで探す / 🛒 楽天で探す


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