2018年3月4日放送の J-WAVE「TOKIO HOT 100」を振り返る回顧コラムです。当時のチャート上位曲を手がかりに、その週の音楽シーンを読み解きます。
本サイトは非公式のファンサイトです。チャートデータの出典:J-WAVE「TOKIO HOT 100」(2018年3月4日放送回)。
この週の音楽シーン
2018年3月4日の「TOKIO HOT 100」で首位に立ったのは、SUCHMOSの「808」だった。前年に発表されたアルバム「THE KIDS」からの楽曲で、彼らがブレイクのきっかけとなった「STAY TUNE」で確立した、日本語のフロウを英語のグルーヴに溶け込ませるスタイルがここでも貫かれている。ファンクやソウル、ヒップホップの語彙を吸収しながら、あくまで脱力した質感でまとめ上げる手つきは、当時「シティポップ・リバイバル」と呼ばれた潮流とも重なりながら、それだけでは括りきれない独自の浮遊感を持っていた。バンドサウンドでありながらクラブミュージック的な重心の低さを備えている点が、この曲を単なるロックともJ-POPとも違う場所に位置づけている。
この週のTOP10を眺めると、当時の音楽シーンが日本語詞と英語詞、バンドサウンドと打ち込み、映画音楽と洋楽ヒットチャートの最先端が違和感なく並列していたことがよくわかる。2位のJUJU、6位の家入レオ、9位の米津玄師はいずれも日本のポップスの歌の強度を体現する存在であり、とりわけ米津玄師の「LEMON」は、この時期を境にして日本のシーンの空気そのものを塗り替えていくことになる楽曲として記憶されている。一方で3位のNULBARICHは、SUCHMOSと並んで「歌詞は英語、しかしルーツは日本のシティ感覚」というバンド像を示し、国内シーンにおけるオルタナティブR&Bやネオソウル的な感性の浸透を裏付けていた。
洋楽勢に目を向けると、4位の「THIS IS ME」は前年公開の映画「グレイテスト・ショーマン」からの一曲で、この時期の日本では映画自体がロングランヒットとなり、劇中歌が単独でチャートに食い込むという現象を後押ししていた。10位の「ALL THE STARS」はケンドリック・ラマーとSZAが手掛けた、同時期に公開された映画のサウンドトラック曲であり、ヒップホップとR&Bの美意識が映像作品と結びついて世界的に広がっていった時代の空気を伝えている。5位のCHVRCHESや7位のRudimental feat. Jess Glynne, Macklemore and Dan Caplen、8位のDNCEといった顔ぶれは、UKのエレクトロポップやダンスミュージックの潮流が依然としてラジオチャートの重要な位置を占めていたことを示しており、ジャンルを横断する選曲そのものがこの番組の特色だったと言える。
こうして振り返ると、この週のチャートは「808」を筆頭に、ジャンルの境界が急速に溶けていく過渡期の空気を凝縮していたことがわかる。バンド、ソロシンガー、映画音楽、海外のヒップホップやエレクトロが同じテーブルに並び、それぞれが影響を与え合いながら次の時代の音楽地図を描こうとしていた。SUCHMOSの脱力したグルーヴが首位に立ったこと自体が、その後数年にわたって日本のポピュラー音楽が志向していく方向性、すなわちジャンルを厳密に区切らない自由な聴取のあり方を先取りしていたと言えるだろう。当時この曲を耳にした人にとって、「808」はただのヒット曲ではなく、時代の耳の変化を告げる合図のように響いていたのではないだろうか。
2018年3月4日付 TOP10(出典:J-WAVE TOKIO HOT 100)
- 1位 808 — SUCHMOS ▶ YouTube Music / Spotify / 🛒 Amazonで探す / 🛒 楽天で探す
- 2位 かわいそうだよね — JUJU WITH HITSUJI ▶ YouTube Music / Spotify / 🛒 Amazonで探す / 🛒 楽天で探す
- 3位 AIN’T ON THE MAP YET — NULBARICH ▶ YouTube Music / Spotify / 🛒 Amazonで探す / 🛒 楽天で探す
- 4位 THIS IS ME — KEALA SETTLE AND THE GREATEST SHOWMAN ENSEMBLE ▶ YouTube Music / Spotify / 🛒 Amazonで探す / 🛒 楽天で探す
- 5位 GET OUT — CHVRCHES ▶ YouTube Music / Spotify / 🛒 Amazonで探す / 🛒 楽天で探す
- 6位 春風 — 家入 レオ ▶ YouTube Music / Spotify / 🛒 Amazonで探す / 🛒 楽天で探す
- 7位 THESE DAYS — RUDIMENTAL FEAT. JESS GLYNNE, MACKLEMORE AND DAN CAPLEN ▶ YouTube Music / Spotify / 🛒 Amazonで探す / 🛒 楽天で探す
- 8位 DANCE — DNCE ▶ YouTube Music / Spotify / 🛒 Amazonで探す / 🛒 楽天で探す
- 9位 LEMON — 米津 玄師 ▶ YouTube Music / Spotify / 🛒 Amazonで探す / 🛒 楽天で探す
- 10位 ALL THE STARS — KENDRICK LAMAR AND SZA ▶ YouTube Music / Spotify / 🛒 Amazonで探す / 🛒 楽天で探す


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