『MISSING』が示すBE:FIRSTの現在地
BE:FIRSTのMISSING🛒楽天は、6人組ボーイズグループが「別れ」「喪失」をテーマに据えた一曲として、リリース直後からファンダムの外にも波紋を広げている。英国の著名DJ/プロデューサーJonas Blueが作曲共作・プロデュースを手がけたダンスポップ・ナンバーで、2022年の「Don’t Wake Me Up」以来2度目のコラボレーションとなる。四つ打ちのビートに乗せて、6人の声がどう役割分担するかを聴かせる作品だ。SKY-HIが率いるBMSGというレーベルは、デビュー以来「歌えて踊れるアーティスト集団」という言い方を繰り返してきたが、その理念がもっとも素直に音として出ているのが、この曲だと感じる。
チャート面でも動きが大きい。TOKIO HOT 100を含む各種エアプレイ/ストリーミング系の指標で上位に食い込み、リリースからしばらく経っても順位が落ちきらない粘り腰を見せている。派手なタイアップやフェス連動で瞬間風速を作るというより、聴き返されて残る種類の楽曲。6人が「量産型ボーイズグループ」の外に踏み出したい、という意志がはっきり刻印されている。
基本情報とリリース文脈
BE:FIRSTは2021年にオーディション番組「THE FIRST」を経て結成されたグループ。当初はSOTA、SHUNTO、MANATO、RYUHEI、JUNON、RYOKI、LEOの7人組として活動していたが、RYOKIが2025年11月8日付で脱退し、現在はSOTA、SHUNTO、MANATO、RYUHEI、JUNON、LEOの6人体制。ダンサー/ラッパー/ボーカリストの役割が緩やかに重なり合う構成をとっている。デビュー曲『Gifted.』以降、シングル・EPを重ねてきたが、2023年から2024年にかけては海外フェス出演やアジア圏でのツアー展開を進め、活動の重心が明らかに広がった。
『MISSING』は、その延長線で置かれた一曲だ。プロデュースはJonas Blueが担当し、彼の得意とする四つ打ちダンスポップの語法と、BMSG勢のボーカルワークが噛み合った選曲になっている。派手さと歌の抑揚を両立させる、洋楽ダンスポップ寄りの設計だ。この方向性は、SKY-HI自身がインタビューで繰り返し語ってきた「ボーカルグループとしての強度」への意識と地続きだ。
個人的に印象的なのは、リリース時のプロモーションでダンスパフォーマンスと歌唱の両面を等価に打ち出していた点。Jonas Blueとの再タッグという話題性もあり、洋楽リスナー層への訴求も明確に意識されている。6人体制で初めて世に出す本格シングルという意味でも、節目の一曲になった。
サウンドとプロダクションの読みどころ
音の作りを言葉で追うと、Jonas Blueらしい四つ打ちのダンスポップが軸にある。キックは正確に前に出て、シンセのフックがサビへ向けて張り出す。上物はプラッキーなシンセとパッドが層を成し、ボーカルとの間で軽やかに呼吸する。J-POPというよりUKダンスポップの文法に近く、Jonas Blueの過去作を知るリスナーには馴染みの深いプロダクションだ。
これは、6人のボーカリストを聴かせるための計算でもある。6つの声質・6つの音域・6つの発語の癖をダンスビートの上で明快に配置し、Jonas Blueらしい抜けの良いミックスで一人ひとりの輪郭を保っている。だから、誰がどこを歌っているのかが自然に聞き分けられる。
コード進行もポイントだ。長調と短調の境目をゆらす作りになっていて、明るく響く瞬間と、影が差す瞬間が交互にやってくる。「失う」というテーマを、ダンスポップの高揚感の中に切なさとして織り込んでいる。ここはJonas Blueの手腕が出ているところで、フロア映えする曲でありながら、和声には哀感がしっかり刻まれている。
聴きどころ3点
- 6人のボーカルの受け渡し。低音の厚みを持つJUNON、透明感のあるMANATO、鋭さを持つSHUNTOなど、声質の違いが1曲の中で切り替わる設計になっている
- Jonas Blueらしいダンスポップの構築。四つ打ちのビートとシンセフックが、サビで一気に開ける
- コードの陰影。ダンスビートの高揚と、和声に潜む哀感が同居しており、感情の起伏が立体的に描かれている
キャリアの中での位置づけ
BE:FIRSTのシングル群を並べると、『Gifted.』のシリアスさ、『Bye-Good-Bye』のポップ性、『Scream』の攻撃性、『Boom Boom Back』の陽性、と幅がかなり広い。そのバリエーションの中で、『MISSING』は洋楽ダンスポップの側にはっきり寄せた一曲だ。6人体制での再出発と、Jonas Blueとの再タッグという二つの節目が重なり、グループの新章を告げる楽曲になっている。
ボーイズグループにとって、海外プロデューサーとのタッグでグローバルな文脈に足を掛けられるかは分水嶺だと思う。国内向けのアッパーチューンだけに寄ると、キャリアは早期に飽和する。Jonas Blueのようなワールドクラスの作り手と組んだシングルで足場を作れると、10年単位で活動の射程を伸ばせる。BE:FIRSTがこのタイミングで『MISSING』を出した意味は、たぶんそこにある。
もう一つ挙げておきたいのは、メンバー個々のソロ活動との棲み分けだ。BMSGはメンバーのソロ/ユニット活動を積極的に走らせるレーベルで、SOTAやRYUHEIはダンス/ソロ楽曲でも露出を伸ばしている。ソロで見せられる個性と、6人で束ねたときの化学反応。この両輪のうち、『MISSING』は明確に後者の側で、「束ねること自体が価値になる」曲だ。ソロでは出せない厚みが、ここにはある。
チャートでの動きと受容のされ方
ラジオエアプレイ主体のTOKIO HOT 100で上位に食い込んでいるという事実は、この曲の性格を考えると象徴的だ。ストリーミング数だけで押し上がるタイプではなく、ラジオでかけたときに「これは何の曲だろう」と手を止めさせる音の作りをしている。BGMとして流していても違和感がなく、集中して聴くと発見がある。この二段構えの構造が、エアプレイ系のチャートで強い。
SNSでの反応を見ると、コアなファンダム以外からの言及が目立つのが特徴だ。ボーイズグループの曲は、ファンダム内での熱狂と外側の温度差が大きくなりがちだが、『MISSING』はその壁を薄くしている。原因はたぶんシンプルで、歌のうまさとサウンドの品位を同時に成立させているから。派手さで距離を取っていた層が、この曲で足を止めた。具体的な数値は公式発表を参照してほしいが、聴取層の広がりという意味では、キャリアの中でも重要なポイントになる曲だと思う。
海外の反応も見逃せない。BE:FIRSTはK-POPとの比較で語られることが多いグループだが、Jonas Blueが手がけるダンスポップは、欧州・アジアを問わず既に広い聴取基盤を持つ。言語の壁を越えるのはメロディとサウンドで、歌詞理解の依存度が低い曲ほどグローバルには効く。この曲の設計は、その理屈にきちんと合っている。
ボーカルの分担と6人の役割
6人組で歌ものをやる難しさは、パート配分に集約される。全員に見せ場を作ろうとすると散漫になり、絞ると不満が残る。『MISSING』はそのバランスの取り方が上手い。ソロで出るパートと、ハーモニーで支えるパートを明確に分け、ソロパートでも「見せ場としてのソロ」ではなく「曲の流れとしてのソロ」に落とし込んでいる。
特に、低音域と高音域の受け渡しが自然だ。低い声が場面を作り、高い声が感情のピークを取りに行く。この往復が繰り返されることで、聴き手は「別れ」の複数の面を同時に体験できる。悲しみだけでも、諦めだけでもない、複層的な感情。6人いる意味が、ここで音楽的な価値に変換されている。
ラップ/スポークンワード的な要素も、この曲では控えめに使われている。BE:FIRSTはラップスキルの高いメンバーが複数いるが、『MISSING』では前に出しすぎない。歌もののシングルとして統一感を優先した判断だと思う。個人的には、この抑制がむしろラップパートの効きを強めていると感じる。少ないからこそ、そこだけ空気の質が変わる。
MVとビジュアルの方向性
ミュージックビデオは、群舞の派手さより情景描写に振った作りになっている。BE:FIRSTのMVといえば、シャープなダンスシーンが定番だったが、『MISSING』ではその文法を一度手放している。夜、光の少ない空間、メンバー同士の距離、視線のやり取り。ダンス曲のMVというより、短編映像作品に近い温度だ。
この選択は、曲の性格から言えば正しい。派手な振り付けを詰め込むと、曲の持つ「静けさ」が消えてしまう。抑えた振付と、抑えた撮影。全体で一つの空気を作りに行っている。ボーイズグループのMVでこの舵の切り方は、勇気がいる判断だと思う。パフォーマンス映えする素材を持っているのに、あえて出さない。長期的なブランド構築を考えたときには、この選択が効いてくる。
入門動線
『MISSING』からBE:FIRSTを掘り始めるなら、次の1曲は『Bye-Good-Bye』が入りやすい。ポップネスと切なさのバランスが近く、グループのボーカル面の強度が確認できる。関連1枚としては、1stアルバム『BE:1』を推したい。デビューからの主要曲がまとまっており、7人がどんな幅を持っているかを一気に把握できる。そこから最新作へと遡っていくと、『MISSING』でなぜこの選択になったかが立体的に見えてくる。
「MISSING BE:FIRST」の関連作品
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次に聴くべき曲と、この曲が残すもの
『MISSING』がキャリア上の転機になるかは、次のシングルを待たないとわからない。ただ、この曲でBE:FIRSTは「盛り上げなくても勝負できるグループ」であることを証明した。ここから戻る道と、進む道の両方が開けている。派手なアッパーチューンに戻ることもできるし、より深い歌ものに踏み込むこともできる。どちらを選んでも、この曲の存在が土台になる。
個人的には、この曲を夜のドライブや、仕事終わりの帰り道で聴くのが好きだ。ヘッドホンで聴くと声の距離感がぐっと近づく。派手さで消費される曲ではなく、生活のどこかに置いておく曲。BE:FIRSTがこういう曲を出せるようになったのは、率直に大きい。次はどこに向かうのか、素直に楽しみにしている。
まずこの作品から聴く
- Bye-Good-Bye — 切なさと歌の強度が近い
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