2009年11月22日放送の J-WAVE「TOKIO HOT 100」を振り返る回顧コラムです。当時のチャート上位曲を手がかりに、その週の音楽シーンを読み解きます。
本サイトは非公式のファンサイトです。チャートデータの出典:J-WAVE「TOKIO HOT 100」(2009年11月22日放送回)。
この週の音楽シーン
2009年11月22日放送の「TOKIO HOT 100」でトップに立ったのは、ノラ・ジョーンズの「CHASING PIRATES」だった。ジャズ・ピアニストとしてキャリアをスタートさせ、2002年のデビュー作『Come Away with Me』で世界的なブレイクを果たした彼女が、この曲を含むアルバム『The Fall』で見せたのは、それまでのアコースティックで内省的な佇まいから一歩踏み出した、ロックの手触りを帯びたサウンドだった。プロデューサーにジャクノ・シェイド・アンダーソンを迎え、エレキギターの陰影やビートの効いたリズムを取り入れたことで、彼女の柔らかなヴォーカルは新しい緊張感をまとって響いていた。「CHASING PIRATES」というタイトルの浮遊感と、実際に鳴っている音の乾いた質感の対比も、この曲の魅力のひとつだったように思う。
2位にはマイケル・ジャクソンの「THIS IS IT」がつけている。同年6月に彼が急逝してから半年に満たない時期であり、ロンドン公演のために準備されていたはずの新曲がこうしてチャートに現れたこと自体が、当時のリスナーにとって特別な意味を持っていたはずだ。同名のドキュメンタリー映画が公開されたのもこの時期で、キング・オブ・ポップの不在を音楽と映像の両面から実感させられる、そんな秋だった。3位のボン・ジョヴィ「WE WEREN’T BORN TO FOLLOW」も含め、上位には海外の大御所アーティストたちの存在感が色濃く、洋楽シーンの厚みをそのまま映し出すような並びになっている。
一方で邦楽勢も存在感を示していた。6位の大橋トリオ「WINTERLAND」は、宅録から出発したベッドルーム・ポップの感性を保ちながら、次第に洗練されたポップスへと歩みを進めていた時期の楽曲で、冬の情景を静かに描く筆致は季節番組のプレイリストにふさわしいものだった。7位の大塚愛「IS」、9位のEXILE「ふたつの唇」も、それぞれの持ち味――前者のポップな躍動感、後者のバラード的な情感――で存在感を放っており、当時のJ-POPが多様な引き出しを持っていたことをうかがわせる。
洋楽勢では、8位にアリシア・キーズ「DOESN’T MEAN ANYTHING」、10位にジャネット・ジャクソンの「MAKE ME」が並ぶのも興味深い。マイケル・ジャクソンの妹であるジャネットの楽曲がこのタイミングでチャートインしていたことは、単なる偶然にせよ、あの年の秋の空気を象徴する巡り合わせだったと言えるだろう。5位のマイケル・ブーブレ「HAVEN’T MET YOU YET」は、後にスタンダード化するほど息の長いヒットとなった一曲で、この時点ではまだ多くのリスナーにとって「発見」の途中にあった新曲だったはずだ。
こうして振り返ると、この週のTOP10は、ジャズ/ソウルの素養を持つシンガーソングライターの新境地、突然失われた王の遺した仕事、そして日本のポップシーンの多様な表情が、ひとつのチャートの中で自然に共存していたことがわかる。ノラ・ジョーンズが1位に選ばれたのは、派手さではなく、静かな変化を聴き分けようとするリスナーの耳が、この時代にはまだ確かに存在していたことの証だったのかもしれない。
2009年11月22日付 TOP10(出典:J-WAVE TOKIO HOT 100)
- 1位 CHASING PIRATES — NORAH JONES ▶ YouTube Music / Spotify / 🛒 Amazonで探す / 🛒 楽天で探す
- 2位 THIS IS IT — MICHAEL JACKSON ▶ YouTube Music / Spotify / 🛒 Amazonで探す / 🛒 楽天で探す
- 3位 WE WEREN’T BORN TO FOLLOW — BON JOVI ▶ YouTube Music / Spotify / 🛒 Amazonで探す / 🛒 楽天で探す
- 4位 EVERYBODY — JAY’ED ▶ YouTube Music / Spotify / 🛒 Amazonで探す / 🛒 楽天で探す
- 5位 HAVEN’T MET YOU YET — MICHAEL BUBLE ▶ YouTube Music / Spotify / 🛒 Amazonで探す / 🛒 楽天で探す
- 6位 WINTERLAND — 大橋トリオ ▶ YouTube Music / Spotify / 🛒 Amazonで探す / 🛒 楽天で探す
- 7位 IS — 大塚 愛 ▶ YouTube Music / Spotify / 🛒 Amazonで探す / 🛒 楽天で探す
- 8位 DOESN’T MEAN ANYTHING — ALICIA KEYS ▶ YouTube Music / Spotify / 🛒 Amazonで探す / 🛒 楽天で探す
- 9位 ふたつの唇 — EXILE ▶ YouTube Music / Spotify / 🛒 Amazonで探す / 🛒 楽天で探す
- 10位 MAKE ME — JANET JACKSON ▶ YouTube Music / Spotify / 🛒 Amazonで探す / 🛒 楽天で探す


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