1992年6月21日放送の J-WAVE「TOKIO HOT 100」を振り返る回顧コラムです。当時のチャート上位曲を手がかりに、その週の音楽シーンを読み解きます。
本サイトは非公式のファンサイトです。チャートデータの出典:J-WAVE「TOKIO HOT 100」(1992年6月21日放送回)。
この週の音楽シーン
1992年6月21日放送の「TOKIO HOT 100」を振り返ると、まず目に留まるのが1位に輝いたWILSON PHILLIPSの「YOU WON’T SEE ME CRY」です。ウィルソン・フィリップスは、ビーチ・ボーイズのブライアン・ウィルソンの娘たちと、ママス&パパスのジョン・フィリップスの娘という、ウエストコースト・ポップの血統を受け継ぐ女性三人組でした。透明感のあるコーラスワークと、親世代から受け継いだハーモニー感覚を現代的なアダルト・コンテンポラリー・サウンドに落とし込んだのが彼女たちの持ち味で、この曲でもその繊細な声の重なりが前面に出ています。90年代初頭という時代は、80年代のきらびやかなダンス・ミュージックが一段落し、こうした落ち着いたメロディアスな楽曲がラジオでもじっくり支持されるようになった過渡期でもありました。1位という結果は、そうした空気を象徴していたように思います。
2位につけたMARIAH CAREYの「I’LL BE THERE」も見逃せません。デビューして間もない彼女が、ジャクソン5の名曲をしなやかにカバーしたこの一曲は、圧倒的な歌唱力を持つ新世代シンガーの登場を強く印象づけるものでした。以降のR&B/ポップシーンを塗り替えていく存在の、まさに黎明期の輝きがここにあります。3位のSWING OUT SISTER、4位のSOUL II SOULは、いずれも英国発のソフィスティケートされたソウル/クラブ・ミュージックの系譜。前者はジャジーな洗練を、後者はジャジー・Bが牽引したUKソウルのグルーヴを体現しており、当時のロンドンのクラブ・カルチャーが色濃くラジオの上位にも反映されていたことがわかります。
5位のGENESIS、6位のLIONEL RICHIEは、80年代から活躍を続けるベテランたちの安定した存在感を示す並びです。フィル・コリンズ在籍期のジェネシスは、プログレの実験精神を残しつつも大衆的なポップ・ロックへと軌道を定めていた時期であり、ライオネル・リッチーはソウルの重鎮としての貫禄あるメロディメイカーぶりを発揮していました。7位のWORKSHY、8位のRIGHT SAID FREDもまた英国からの発信で、特にライト・セッド・フレッドはこの後「I’M TOO SEXY」で世界的なブレイクを果たすユニットとして知られるようになります。ユーモアと洒脱さを併せ持つ英国製ポップの層の厚さが、このTOP10からもうかがえます。
9位のPAULA ABDULは、ダンスとポップスを融合させたステージングで一時代を築いたアーティストで、振付師出身ならではのビートへの意識が楽曲にも生きています。そして10位のKRIS CROSSは、当時まだ10代前半の少年二人によるヒップホップ・デュオで、服を後ろ前に着る独特のファッションとともに世界的な話題をさらいました。ロックともAC歌ものとも違う、ヒップホップという新しい潮流がチャートの一角に食い込んでいたことは、90年代という時代の広がりを象徴しています。
こうして俯瞰すると、この週のTOP10は、ウエストコースト由来のハーモニー・ポップ、新世代R&Bシンガーの台頭、英国発のソウル/クラブ・ミュージック、80年代からのベテラン勢、そして台頭しつつあったヒップホップまで、実に幅広いジャンルが同居していたことがわかります。J-WAVEのカウントダウン番組ならではの、洋楽シーンの多層性をそのまま切り取ったような一週間だったと言えるでしょう。バブル経済の余韻がまだ残る一方で、音楽の好みは確実に細分化・多様化へと向かっていた1992年。そんな時代の空気を、このチャートは静かに、しかし雄弁に物語っています。
1992年6月21日付 TOP10(出典:J-WAVE TOKIO HOT 100)
- 1位 YOU WON’T SEE ME CRY — WILSON PHILLIPS ▶ YouTube Music / Spotify / 🛒 Amazonで探す / 🛒 楽天で探す
- 2位 I’LL BE THERE — MARIAH CAREY ▶ YouTube Music / Spotify / 🛒 Amazonで探す / 🛒 楽天で探す
- 3位 AM I THE SAME GIRL — SWING OUT SISTER ▶ YouTube Music / Spotify / 🛒 Amazonで探す / 🛒 楽天で探す
- 4位 JOY — SOUL Ⅱ SOUL ▶ YouTube Music / Spotify / 🛒 Amazonで探す / 🛒 楽天で探す
- 5位 HOLD ON MY HEART — GENESIS ▶ YouTube Music / Spotify / 🛒 Amazonで探す / 🛒 楽天で探す
- 6位 DO IT TO ME — LIONEL RICHIE ▶ YouTube Music / Spotify / 🛒 Amazonで探す / 🛒 楽天で探す
- 7位 SHOW ME THE NIGHT — WORKSHY ▶ YouTube Music / Spotify / 🛒 Amazonで探す / 🛒 楽天で探す
- 8位 DON’T TALK JUST KISS — RIGHT SAID FRED ▶ YouTube Music / Spotify / 🛒 Amazonで探す / 🛒 楽天で探す
- 9位 WILL YOU MARRY ME — PAULA ABDUL ▶ YouTube Music / Spotify / 🛒 Amazonで探す / 🛒 楽天で探す
- 10位 JUMP — KRIS CROSS ▶ YouTube Music / Spotify / 🛒 Amazonで探す / 🛒 楽天で探す


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