1990年11月4日放送の J-WAVE「TOKIO HOT 100」を振り返る回顧コラムです。当時のチャート上位曲を手がかりに、その週の音楽シーンを読み解きます。
本サイトは非公式のファンサイトです。チャートデータの出典:J-WAVE「TOKIO HOT 100」(1990年11月4日放送回)。
この週の音楽シーン
1990年11月4日放送の「TOKIO HOT 100」を振り返ると、1位に輝いていたのはダリル・ホール&ジョン・オーツの「SO CLOSE」だった。80年代を通じてアメリカン・ポップ/ソウルの最良の部分を体現してきた二人が、90年代の入り口でもチャート上位に姿を見せていたという事実は、当時のリスナーにとって一種の安心感を伴う出来事だったのではないだろうか。デジタル録音やダンス・ビートが主流になりつつあった時代の空気の中で、彼らの歌声とメロディの丁寧な作り込みは、良質なポップ・ミュージックの手本として機能していたように思う。ロックともソウルとも言い切れない、あの独特のブルーアイド・ソウルの質感は、時代が変わっても揺るがない強度を持っていた。
この週のTOP10全体を眺めると、90年代序盤特有の音楽的な過渡期の空気が濃く漂っている。2位にはホイットニー・ヒューストンの「I’M YOUR BABY TONIGHT」。80年代のバラード女王というイメージから一歩踏み出し、ニュージャックスウィングの要素を取り入れたこの曲は、彼女自身のサウンドの更新を象徴していた。4位にはMCハマーの「PRAY」がランクインしており、前年からの「U Can’t Touch This」の大ヒットを追い風に、ヒップホップがポップ・メインストリームの中心へと躍り出ていく流れがはっきりと見て取れる。ラップとダンスが融合したスタイルは、90年代の音楽シーンを形作る大きな潮流のひとつだった。
一方で5位のペット・ショップ・ボーイズ「SO HARD」や6位のINXS「SUICIDE BLONDE」は、英国・オーストラリア出身のアーティストによるオルタナティブ色の強いポップ/ロックとして、アメリカのR&B・ヒップホップ勢とは異なる質感を持ち込んでいた。シンセ・ポップの知性とロックのエッジ、それぞれの個性がチャートの中で拮抗している様子は、当時のラジオが多様なジャンルを横断的に聴かせていたことの証でもある。8位のキャロン・ウィーラーはソウルII・ソウルからの流れを引くUKソウルの担い手として、ブラック・ミュージックの英国的解釈を提示していた。
9位に入ったマライア・キャリーの「LOVE TAKES TIME」も見逃せない。デビューからまだ間もない時期の彼女が、圧倒的な歌唱力を早くも印象づけていた一曲であり、この後90年代を通じて音楽シーンの中心を歩んでいくことになる歌姫の、まさに出発点の輝きがここにある。3位のジョニー・ギルや10位のペブルスといった名前も、ニュージャックスウィング以降のR&Bシーンの充実を物語っている。
こうして並べてみると、この週のTOP10は80年代的な洗練と90年代的な新しい波が交錯する、まさに時代の分岐点を映し出したチャートだったと言える。「SO CLOSE」が1位に据えられていたことは、変化の渦中にあってもメロディとソングクラフトの価値が揺らがなかったことの証left であり、同時にその周囲を取り囲む多彩な楽曲群が、次の時代への胎動を確かに感じさせてくれる。ラジオから流れてきたこの一週間の音の風景は、今聴き返しても色褪せない魅力を持っている。
1990年11月4日付 TOP10(出典:J-WAVE TOKIO HOT 100)
- 1位 SO CLOSE — DARYL HALL AND JOHN OATES ▶ YouTube Music / Spotify / 🛒 Amazonで探す / 🛒 楽天で探す
- 2位 I’M YOUR BABY TONIGHT — WHITNEY HOUSTON ▶ YouTube Music / Spotify / 🛒 Amazonで探す / 🛒 楽天で探す
- 3位 FAIRWEATHER FRIEND — JONNY GILL ▶ YouTube Music / Spotify / 🛒 Amazonで探す / 🛒 楽天で探す
- 4位 PRAY — M.C. HAMMER ▶ YouTube Music / Spotify / 🛒 Amazonで探す / 🛒 楽天で探す
- 5位 SO HARD — PET SHOP BOYS ▶ YouTube Music / Spotify / 🛒 Amazonで探す / 🛒 楽天で探す
- 6位 SUICIDE BLODE — INXS ▶ YouTube Music / Spotify / 🛒 Amazonで探す / 🛒 楽天で探す
- 7位 ROMEO — DINO ▶ YouTube Music / Spotify / 🛒 Amazonで探す / 🛒 楽天で探す
- 8位 LIVIN’ IN THE LIGHT — CARON WHEELER ▶ YouTube Music / Spotify / 🛒 Amazonで探す / 🛒 楽天で探す
- 9位 LOVE TAKES TIME — MARIAH CAREY ▶ YouTube Music / Spotify / 🛒 Amazonで探す / 🛒 楽天で探す
- 10位 GIVING YOU THE BENEFIT — PEBBLES ▶ YouTube Music / Spotify / 🛒 Amazonで探す / 🛒 楽天で探す


コメント