1989年1月22日放送の J-WAVE「TOKIO HOT 100」を振り返る回顧コラムです。当時のチャート上位曲を手がかりに、その週の音楽シーンを読み解きます。
本サイトは非公式のファンサイトです。チャートデータの出典:J-WAVE「TOKIO HOT 100」(1989年1月22日放送回)。
この週の音楽シーン
1989年1月22日放送の「TOKIO HOT 100」で首位に立っていたのは、リック・アストリーの「SHE WANTS TO DANCE WITH ME」だった。前年に「Never Gonna Give You Up」で全世界を席巻した英国出身のシンガーが、その勢いを保ったまま送り出した楽曲であり、ストック・エイトキン・ウォーターマン(SAW)のプロデューサー・チームによる、あのシンプルで力強いビートとキャッチーなフックが存分に生かされた仕上がりになっている。低く艶のあるバリトン・ヴォイスと、ダンスフロアを意識した打ち込みサウンドの組み合わせは、80年代後半のヒット工場的なポップ・ミュージックの典型であり、ラジオから流れれば誰もが一度で口ずさめてしまうほどの親しみやすさを備えていた。
この週のTOP10を見渡すと、80年代の終盤を象徴する多彩な音楽性が並んでいるのが印象的だ。2位にはボン・ジョヴィの「BORN TO BE MY BABY」がランクインし、アリーナ・ロックの熱狂がまだ健在であったことを伝えている。3位のボビー・ブラウンによる「MY PREROGATIVE」は、ニュージャック・スウィングという新しい潮流の胎動を感じさせる一曲で、これ以降のR&Bやヒップホップの方向性に大きな影響を与えていく存在だった。4位のカイリー・ミノーグもまた、SAWプロデュースによるダンス・ポップの申し子であり、リック・アストリーと並んで、このプロダクション・チームが当時のチャートにどれほどの存在感を持っていたかがうかがえる。
5位のフィル・コリンズ、7位のU2、8位のバングルスといった名前からは、ロックやAOR系の成熟したアーティストたちが依然として強い支持を得ていたことも見て取れる。9位のアート・オブ・ノイズが手掛けた「KISS」は、プリンスの楽曲をトム・ジョーンズの歌声で再構築したユニークなカバーで、実験的なサウンド・プロダクションとポップの融合という、当時のUKミュージック・シーンならではの遊び心が感じられる一曲だ。10位のボーイ・ミーツ・ガールは、後にマライア・キャリーがカバーしたことでも知られる楽曲を携え、メロディアスなポップスの系譜を担っていた。
こうして並べてみると、この週のチャートはダンス・ポップ、ロック、R&B、実験的なポップスといった複数のジャンルが同時に共存し、しかもそれぞれが高い完成度を誇っていたことがわかる。リック・アストリーの首位獲得は、単なる一発屋的なブレイクではなく、SAWプロデュースというヒット・メイキングの方法論が確かな支持を得ていたことの証でもあった。今聴き返しても、当時のプロダクションの緻密さやメロディの強さは損なわれておらず、ラジオの向こう側にあった80年代末のポップ・ミュージックの豊かさを、あらためて実感させてくれる一週間だったといえるだろう。
1989年1月22日付 TOP10(出典:J-WAVE TOKIO HOT 100)
- 1位 SHE WANTS TO DANCE WITH ME — RICK ASTLEY ▶ YouTube Music / Spotify / 🛒 Amazonで探す / 🛒 楽天で探す
- 2位 BORN TO BE MY BABY — BON JOVI ▶ YouTube Music / Spotify / 🛒 Amazonで探す / 🛒 楽天で探す
- 3位 MY PREROGATIVE — BOBBY BROWN ▶ YouTube Music / Spotify / 🛒 Amazonで探す / 🛒 楽天で探す
- 4位 TURN IT INTO LOVE — KYLIE MINOGUE ▶ YouTube Music / Spotify / 🛒 Amazonで探す / 🛒 楽天で探す
- 5位 TWO HEARTS — PHIL COLLINS ▶ YouTube Music / Spotify / 🛒 Amazonで探す / 🛒 楽天で探す
- 6位 I REMEMBER HOLDING YOU — BOYS CLUB ▶ YouTube Music / Spotify / 🛒 Amazonで探す / 🛒 楽天で探す
- 7位 ANGEL HARLEM — U2 ▶ YouTube Music / Spotify / 🛒 Amazonで探す / 🛒 楽天で探す
- 8位 IN YOUR ROOM — BANGLES ▶ YouTube Music / Spotify / 🛒 Amazonで探す / 🛒 楽天で探す
- 9位 KISS — ART OF NOISE ▶ YouTube Music / Spotify / 🛒 Amazonで探す / 🛒 楽天で探す
- 10位 WAITING FOR A STAR TO FALL — BOY MEETS GIRL ▶ YouTube Music / Spotify / 🛒 Amazonで探す / 🛒 楽天で探す


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