2023年9月3日放送の J-WAVE「TOKIO HOT 100」を振り返る回顧コラムです。当時のチャート上位曲を手がかりに、その週の音楽シーンを読み解きます。
本サイトは非公式のファンサイトです。チャートデータの出典:J-WAVE「TOKIO HOT 100」(2023年9月3日放送回)。
この週の音楽シーン
2023年9月3日放送の「TOKIO HOT 100」で1位を飾ったのは、NewJeansの「ETA」だった。前年2022年にADORからデビューした5人組は、この年の夏にリリースしたミニアルバム『Get Up』を携え、韓国だけでなく日本のリスナーの耳もしっかりとつかんでいた時期にあたる。「ETA」は軽やかなUKガラージ/2ステップ的なビートに、Y2K的な質感のシンセとコーラスワークを重ねた作りが特徴で、過剰な作り込みよりも「気負わなさ」を前面に出すサウンドプロダクションが、当時のK-POPの中でも異彩を放っていた。ダンスやビジュアルの派手さで押し切るのではなく、あくまで楽曲と声の質感で聴かせる構成は、2020年代前半のポップミュージーク全体に広がっていたローファイ/レイヴ的な感覚とも響き合うものであり、この週の1位という結果は、そうした潮流が日本のリスナー層にも確実に浸透していたことを示すひとつの記録といえる。
TOP10全体を眺めると、2023年という年の音楽シーンの多層性がよく見えてくる。2位のLAUV「Love U Like That」、7位のOlivia Rodrigo「bad idea right?」は、いずれも歌詞世界の等身大な感情表現と、洗練されたポップ・プロダクションを両立させる欧米シンガーソングライターの系譜に連なる楽曲で、当時のUS/UKチャートの空気感をそのまま輸入するような形でランクインしていた。10位のFred again..&Obongjayarによる「Adore U」は、UKクラブカルチャー発のプロデューサーが世界的な評価を確立しつつあった時期の一曲であり、フェスやSNSでの断片的な拡散を通じてじわじわと支持を広げていった、当時ならではの聴かれ方を象徴する存在だった。
4位にはJUNG KOOK feat. LattoによるSEVENがランクインしている。BTSのメンバーとして活動してきたJUNG KOOKにとって、この時期はソロアーティストとしての存在感を本格的に打ち出し始めた大切な局面であり、Lattoという米ラッパーとの共演は、K-POPとUSヒップホップ/R&Bのフィールドが自然に接続されつつあった当時の状況をよく表していた。同じ週に星野源の「生命体」、藤井風の「Workin’ Hard」といった日本のアーティストの楽曲がTOP10に並んでいる点も見逃せない。国内シーンの独自性を保った楽曲が、K-POPや欧米ポップスと同じテーブルの上で違和感なく共存していたことは、当時のリスナーが国境やジャンルを意識せずに音楽を選び取っていたことのあらわれだろう。
さらに3位のMINA OKABE「Every Second」、8位のASOUND「オリジナル」、9位のハク。「自由のショート」といった顔ぶれは、当時勢いを増していた新世代の日本人アーティストたちの存在を印象づける。メジャー・インディーという区分にとらわれず、SNSやストリーミングを起点に支持を広げていくスタイルは、2020年代に入ってから加速度的に一般化した音楽の届き方であり、この週のチャートはその縮図のようにも見える。
1位に立ったNewJeansの「ETA」を軸に振り返ると、この週のTOP10は、K-POPの新しい表現、欧米ポップスの成熟した作家性、日本の音楽シーンの独自の熟成、そして国境を越えたクラブミュージックの浸透という、複数の潮流が同時並行で進んでいた2023年という時代を凝縮した一枚のスナップショットとして記憶しておきたい。
2023年9月3日付 TOP10(出典:J-WAVE TOKIO HOT 100)
- 1位 ETA — NEWJEANS ▶ YouTube Music / Spotify / 🛒 Amazonで探す / 🛒 楽天で探す
- 2位 LOVE U LIKE THAT — LAUV ▶ YouTube Music / Spotify / 🛒 Amazonで探す / 🛒 楽天で探す
- 3位 EVERY SECOND — MINA OKABE ▶ YouTube Music / Spotify / 🛒 Amazonで探す / 🛒 楽天で探す
- 4位 SEVEN — JUNG KOOK FEAT. LATTO ▶ YouTube Music / Spotify / 🛒 Amazonで探す / 🛒 楽天で探す
- 5位 生命体 — 星野 源 ▶ YouTube Music / Spotify / 🛒 Amazonで探す / 🛒 楽天で探す
- 6位 WORKIN’ HARD — 藤井 風 ▶ YouTube Music / Spotify / 🛒 Amazonで探す / 🛒 楽天で探す
- 7位 BAD IDEA RIGHT? — OLIVIA RODRIGO ▶ YouTube Music / Spotify / 🛒 Amazonで探す / 🛒 楽天で探す
- 8位 オリジナル — ASOUND ▶ YouTube Music / Spotify / 🛒 Amazonで探す / 🛒 楽天で探す
- 9位 自由のショート — ハク。 ▶ YouTube Music / Spotify / 🛒 Amazonで探す / 🛒 楽天で探す
- 10位 ADORE U — FRED AGAIN.. & OBONGJAYAR ▶ YouTube Music / Spotify / 🛒 Amazonで探す / 🛒 楽天で探す


コメント