1993年8月15日放送の J-WAVE「TOKIO HOT 100」を振り返る回顧コラムです。当時のチャート上位曲を手がかりに、その週の音楽シーンを読み解きます。
本サイトは非公式のファンサイトです。チャートデータの出典:J-WAVE「TOKIO HOT 100」(1993年8月15日放送回)。
この週の音楽シーン
1993年8月15日のJ-WAVE「TOKIO HOT 100」のトップに立ったのは、UB40による(I CAN’T HELP)FALLING IN LOVE WITH YOUだった。言わずと知れたエルヴィス・プレスリーの名曲を、UKバーミンガム出身のレゲエ/ポップ・バンドが独自のスキャンクなリズムで包み直したこのカバーは、映画のサウンドトラックとして起用されたことも追い風となり、世界中のチャートを席巻していた。ルーツ・レゲエの色合いを残しながらもラジオ・フレンドリーな仕上がりに整えられたこのトラックは、90年代前半という時代がまだ「カバー・ソングがヒットの中心に躍り出る」余地を残していたことを物語っている。
2位にはU2のNUMBがランクイン。アルバム『Zooropa』からのカットで、ジ・エッジがボーカルを取るという異色のスタイルや、実験的でノイジーなサウンド・アプローチは、当時のU2が「ジョシュア・トゥリー」的な王道ロックから大きく舵を切り、テクノロジーとメディア社会への批評性を強めていた時期の空気を色濃く映していた。3位のJAMIROQUAIによるBLOW YOUR MINDは、ジェイ・ケイ率いるこのユニットのデビュー作からのナンバーで、アシッド・ジャズというムーブメントがロンドンから世界へ広がっていく渦中の一曲。ファンクとジャズの語法をクラブ・カルチャーの文脈で再構築するそのセンスは、90年代のダンス・ミュージックに新しい風を吹き込んでいた。
4位のJANET JACKSON「IF」は、アルバム『janet.』を象徴するダンサブルなナンバーで、ニュー・ジャック・スウィング以降のR&B/ポップが到達したひとつの完成形とも言える洗練を聴かせる。5位のWORKSHYによるBUT ALIVEは、UKのソウルフルなポップ・ユニットとして一部のリスナーに支持された楽曲で、当時のイギリスの音楽シーンの層の厚さを感じさせる存在だった。6位のINNER CIRCLEはジャマイカ出身のレゲエ・バンドで、SWEET(A LA LA LA LA LONG)は同時期に世界的ヒットを飛ばしていた彼らの勢いを裏付ける一曲。UB40とINNER CIRCLE、二組のレゲエ・アクトが同時にトップ10入りしていたことは、この夏のチャートがいかにレゲエの温度感を求めていたかを物語っている。
7位のO.M.D.ことオーケストラル・マヌーバーズ・イン・ザ・ダークは、80年代からシンセポップの旗手として活動してきたベテランで、DREAM OF MEはそのキャリアの中でも円熟味を感じさせる楽曲だった。8位のJEREMY JORDANによるWANNAGIRLは、当時のティーン・ポップ市場の広がりを象徴する存在で、MTV世代の若いリスナー層に向けた爽やかなサウンドが特徴的。9位のAZTEC CAMERAは、ロディ・フレイム率いるスコットランド出身のギター・ポップ・バンドで、BIRDSはネオアコースティックの系譜を受け継ぐ楽曲として英国ロックの奥行きを感じさせた。そして10位のJODECIによるLATELYは、スティーヴィー・ワンダーの名曲をニュー・ジャック・スウィング/R&B世代の感性で再解釈したもので、当時アメリカのR&Bシーンを牽引していた男性コーラス・グループの実力を示している。
レゲエ、UKロック、アシッド・ジャズ、シンセポップ、そしてアメリカのR&B。このトップ10を眺めるだけで、1993年という年がジャンルの垣根を越えてポップ・ミュージックが百花繚乱の様相を呈していた時代であったことがよくわかる。ラジオの電波を通して、世界各地の異なる音楽的潮流が一堂に会していたこの週のチャートは、90年代前半という時代の豊かさそのものを凝縮した記録として、今なお興味深く聴き返す価値がある。
1993年8月15日付 TOP10(出典:J-WAVE TOKIO HOT 100)
- 1位 (I CAN’T HELP)FALLING IN LOVE WITH YOU — UB40 ▶ YouTube Music / Spotify / 🛒 Amazonで探す / 🛒 楽天で探す
- 2位 NUMB — U2 ▶ YouTube Music / Spotify / 🛒 Amazonで探す / 🛒 楽天で探す
- 3位 BLOW YOUR MIND — JAMIROQUAI ▶ YouTube Music / Spotify / 🛒 Amazonで探す / 🛒 楽天で探す
- 4位 IF — JANET JACKSON ▶ YouTube Music / Spotify / 🛒 Amazonで探す / 🛒 楽天で探す
- 5位 BUT ALIVE — WORKSHY ▶ YouTube Music / Spotify / 🛒 Amazonで探す / 🛒 楽天で探す
- 6位 SWEET( A LA LA LA LA LONG) — INNER CIRCLE ▶ YouTube Music / Spotify / 🛒 Amazonで探す / 🛒 楽天で探す
- 7位 DREAM OF ME — O.M.D. ▶ YouTube Music / Spotify / 🛒 Amazonで探す / 🛒 楽天で探す
- 8位 WANNAGIRL — JEREMY JORDAN ▶ YouTube Music / Spotify / 🛒 Amazonで探す / 🛒 楽天で探す
- 9位 BIRDS — AZTEC CAMERA ▶ YouTube Music / Spotify / 🛒 Amazonで探す / 🛒 楽天で探す
- 10位 LATELY — JODECI ▶ YouTube Music / Spotify / 🛒 Amazonで探す / 🛒 楽天で探す


コメント