1997年4月13日放送の J-WAVE「TOKIO HOT 100」を振り返る回顧コラムです。当時のチャート上位曲を手がかりに、その週の音楽シーンを読み解きます。
本サイトは非公式のファンサイトです。チャートデータの出典:J-WAVE「TOKIO HOT 100」(1997年4月13日放送回)。
この週の音楽シーン
1997年4月13日放送の「TOKIO HOT 100」で1位に輝いたのは、リサ・スタンスフィールドの「THE REAL THING」だった。90年代初頭に「All Woman」などのヒットで一躍脚光を浴びた彼女は、この時期、単なるダンス・ポップ・シンガーの枠を超え、クラシックなソウルの語法を自分のものとして歌いこなすヴォーカリストとしての評価を固めつつあった時期にあたる。英国出身でありながら、ディスコやフィリー・ソウルの残り香を色濃く感じさせる歌いぶりは、当時のUKソウル/ブラック・コンテンポラリー・シーンの成熟を象徴していたと言える。
この週のチャートを見渡すと、1位のリサ・スタンスフィールドと2位のブランニュー・ヘヴィーズという並びが実に象徴的だ。ブランニュー・ヘヴィーズはアシッド・ジャズ/ネオ・ソウルの旗手として、70年代ファンクやソウルのグルーヴを90年代的な感覚でアップデートしてきたグループであり、両者はジャンルは異なれど「黒人音楽への敬意とその再解釈」という点で共振していた。イギリスという場所から、アメリカ発祥のソウル・ミュージックがどのように再構築され、逆輸出されていったかを考えるうえで、この上位2曲の並びは興味深い資料でもある。
一方で3位にはケミカル・ブラザーズの「BLOCK ROCKIN’ BEATS」がランクインしている。ビッグビートと呼ばれるムーヴメントの中心にいた彼らのブレイクビーツとサンプリングを主体とするサウンドは、ソウルフルな歌ものが並ぶ上位とは対照的でありながら、同じ週のチャートに違和感なく共存していた点に、90年代後半という時代の懐の深さが表れている。ロックでもソウルでもない、クラブ・カルチャー発のダンス・ミュージックが茶の間にまで届き始めていた時代だった。
4位のエアロスミス「FALLING IN LOVE」は、ベテラン・ロックバンドとしての貫禄を感じさせる楽曲で、90年代に入ってからも第一線であり続けたことを物語る。5位のメアリー・J・ブライジ「LOVE IS ALL WE NEED」は、ヒップホップ・ソウルの母と呼ばれる彼女らしい、都会的で芯の強いR&Bナンバー。6位のU2「DISCOTHEQUE」は、ロックバンドがダンス・ミュージックへと大胆に接近した意欲作であり、当時のU2の実験精神を象徴する一曲だった。7位のエリック・クラプトン「CHANGE THE WORLD」は、映画『フェノミナン』の主題歌としても知られ、ベテラン・ギタリストが円熟の境地でポップスと向き合った成果と言える。
8位のスウィング・アウト・シスターは、80年代からソフィスティ・ポップの旗手として活動してきたユニットらしい、洗練されたメロディセンスを聴かせる。9位のクーラ・シェイカーは、当時のUKロック・シーンにおいてインド音楽的要素を取り入れたサイケデリックな音像で異彩を放っていたバンドだ。そして10位には、マサターボ・パーカーらが参加したニューヨーク・ハウスの精鋭ユニット、ヌヨリカン・ソウル feat. インディアによる「RUNAWAY」がランクイン。ハウス・ミュージックのクラシックとしても知られる楽曲であり、クラブ・カルチャーの深部から生まれたトラックがラジオチャートの一角を占めていたことは象徴的だ。
ソウル、ロック、ダンス、ヒップホップ隣接のR&Bが違和感なく肩を並べるこの週のTOP10は、ジャンルの境界が緩やかに溶け合っていた1997年という時代の空気を、いまも鮮やかに伝えてくれる。
1997年4月13日付 TOP10(出典:J-WAVE TOKIO HOT 100)
- 1位 THE REAL THING — LISA STANSFIELD ▶ YouTube Music / Spotify / 🛒 Amazonで探す / 🛒 楽天で探す
- 2位 SOMETIMES — THE BRAND NEW HEAVIES ▶ YouTube Music / Spotify / 🛒 Amazonで探す / 🛒 楽天で探す
- 3位 BLOCK ROCKIN’ BEATS — THE CHEMICAL BROTHERS ▶ YouTube Music / Spotify / 🛒 Amazonで探す / 🛒 楽天で探す
- 4位 FALLING IN LOVE — AEROSMITH ▶ YouTube Music / Spotify / 🛒 Amazonで探す / 🛒 楽天で探す
- 5位 LOVE IS ALL WE NEED — MARY J.BLIGE ▶ YouTube Music / Spotify / 🛒 Amazonで探す / 🛒 楽天で探す
- 6位 DISCOTHEQUE — U2 ▶ YouTube Music / Spotify / 🛒 Amazonで探す / 🛒 楽天で探す
- 7位 CHANGE THE WORLD — ERIC CLAPTON ▶ YouTube Music / Spotify / 🛒 Amazonで探す / 🛒 楽天で探す
- 8位 SOMEWHERE IN THE WORLD — SWING OUT SISTER ▶ YouTube Music / Spotify / 🛒 Amazonで探す / 🛒 楽天で探す
- 9位 HUSH — KULA SHAKER ▶ YouTube Music / Spotify / 🛒 Amazonで探す / 🛒 楽天で探す
- 10位 RUNAWAY — NUYORICAN SOUL FEAT. INDIA ▶ YouTube Music / Spotify / 🛒 Amazonで探す / 🛒 楽天で探す


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