1998年10月11日放送の J-WAVE「TOKIO HOT 100」を振り返る回顧コラムです。当時のチャート上位曲を手がかりに、その週の音楽シーンを読み解きます。
本サイトは非公式のファンサイトです。チャートデータの出典:J-WAVE「TOKIO HOT 100」(1998年10月11日放送回)。
この週の音楽シーン
1998年10月11日放送の「TOKIO HOT 100」を振り返ると、1位に輝いていたのはシェリル・クロウの「MY FAVORITE MISTAKE」だった。当時のシェリル・クロウは、セルフタイトルのセカンドアルバムから連なる路線を経て、この曲を含む新作へと歩みを進めていた時期にあたる。ざらついたギターサウンドと、乾いた声質で紡がれる歌唱スタイルは、90年代後半のアメリカン・ロックが持っていた「肩の力が抜けた強さ」を象徴していたように思う。派手なプロダクションに頼らず、バンドサウンドの生々しさと歌詞世界の距離感で聴かせる作風は、当時のFM番組が好んで取り上げるタイプの楽曲でもあった。
TOP10全体を見渡すと、この週は実に多彩な顔ぶれが並んでいる。2位のローリン・ヒルによる「DOO WOP」は、ヒップホップとソウル、R&Bを行き来しながら、ジェンダーやコミュニティへの視線を織り込んだ歌詞世界で知られる楽曲で、当時のブラック・ミュージックシーンにおける女性アーティストの存在感の大きさを物語っていた。一方で3位のファストボールによる「THE WAY」は、90年代ギターロックらしい爽快さと、どこか不思議な浮遊感を併せ持つ楽曲として、オルタナティブ・ロックがまだラジオの主戦力だった時代の空気を伝えている。
邦楽勢では4位にブリリアントグリーンの「冷たい花」がランクイン。渋谷系以降のギターポップ感覚を継承しながら、よりバンドサウンド寄りに舵を切っていた当時の彼らの方向性がうかがえる一曲だ。海外の同時代のロック/ポップスと並んでチャートインしていること自体が、この番組の洋邦混在という編成の特徴をよく表している。
また6位にはホールの「CELEBRITY SKIN」がランクイン。コートニー・ラブ率いるバンドが、グランジ以降のオルタナ・ロックをよりメロディアスに、かつスタジアム映えするサウンドへと拡張していた時期の代表曲であり、90年代ロックが多様化していく過程を象徴する存在だった。7位のジュリアン・レノン、8位のフィル・コリンズという名前も興味深い。ともに70〜80年代から活動を続けるベテランでありながら、90年代末のポップ・シーンにおいてもなお現役感のあるサウンドを提示していた点は、当時のAOR/ポップス受容の幅広さを感じさせる。
9位のフーティー&ザ・ブロウフィッシュは、アメリカン・ルーツ・ロックの温かみを保ちながらメインストリームで支持を集めていたバンドであり、10位のディベラ・モーガンはR&B/ポップのフィールドから新たな才能として名前が挙がっていた時期にあたる。こうして並べてみると、この週のTOP10は、ロック、ヒップホップ、R&B、AORが渾然一体となった1998年秋という時代の縮図のようでもある。ジャンルの垣根が今よりもずっと緩やかで、ラジオの一つの番組の中に多様な音楽が同居していたことこそ、当時のポピュラー音楽シーンの豊かさを物語っているのではないだろうか。
1998年10月11日付 TOP10(出典:J-WAVE TOKIO HOT 100)
- 1位 MY FAVORITE MISTAKE — SHERYL CROW ▶ YouTube Music / Spotify / 🛒 Amazonで探す / 🛒 楽天で探す
- 2位 DOO WOP — LAURYN HILL ▶ YouTube Music / Spotify / 🛒 Amazonで探す / 🛒 楽天で探す
- 3位 THE WAY — FASTBALL ▶ YouTube Music / Spotify / 🛒 Amazonで探す / 🛒 楽天で探す
- 4位 冷たい花 — THE BRILLIANT GREEN ▶ YouTube Music / Spotify / 🛒 Amazonで探す / 🛒 楽天で探す
- 5位 BOOGIE MI VISTA — MATT BIANCO ▶ YouTube Music / Spotify / 🛒 Amazonで探す / 🛒 楽天で探す
- 6位 CELEBRITY SKIN — HOLE ▶ YouTube Music / Spotify / 🛒 Amazonで探す / 🛒 楽天で探す
- 7位 DAY AFTER DAY — JULIAN LENNON ▶ YouTube Music / Spotify / 🛒 Amazonで探す / 🛒 楽天で探す
- 8位 TRUE COLORS — PHIL COLLINS ▶ YouTube Music / Spotify / 🛒 Amazonで探す / 🛒 楽天で探す
- 9位 I WILL WAIT — HOOTIE AND THE BLOWFISH ▶ YouTube Music / Spotify / 🛒 Amazonで探す / 🛒 楽天で探す
- 10位 I LOVE YOU — DEBELAH MORGAN ▶ YouTube Music / Spotify / 🛒 Amazonで探す / 🛒 楽天で探す


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