2012年6月3日放送の J-WAVE「TOKIO HOT 100」を振り返る回顧コラムです。当時のチャート上位曲を手がかりに、その週の音楽シーンを読み解きます。
本サイトは非公式のファンサイトです。チャートデータの出典:J-WAVE「TOKIO HOT 100」(2012年6月3日放送回)。
この週の音楽シーン
2012年6月3日放送分の「TOKIO HOT 100」で1位に輝いたのは、NORAH JONESの「HAPPY PILLS」だった。ジャズ寄りのピアノ弾き語りで一世を風靡した彼女が、この時期にはガンズ・アンド・ローゼズや先鋭的なプロデューサーと組んだ作品で知られるデンジャー・マウスを迎え、アルバム『Little Broken Hearts』を発表していた頃であり、「HAPPY PILLS」はその中心を担うナンバーだった。清潔でアコースティックなイメージが強かった彼女が、ビンテージ感のあるシンセや歪みを効かせたトラックに乗せて歌う姿は、当時のリスナーにとって新鮮な驚きだったはずだ。ジャズ/アダルト・コンテンポラリーの枠に収まらない、ドリーミーでどこか翳りのあるポップスとして、この曲がチャート最上位に立ったことは、2012年という年がジャンルの垣根を軽やかに越えていく時代であったことを象徴している。
TOP10全体を眺めると、当時の音楽シーンの多層性がよくわかる。2位には木村カエラの「マミレル」がランクインしており、日本のポップ・アイコンが独自のポップセンスを磨き続けていたことがうかがえる。4位のきゃりーぱみゅぱみゅ「CANDY CANDY」は、まさにこの前後で彼女がカルチャーの中心へと躍り出ていた時期の一曲であり、原宿発のポップ・アートがグローバルな注目を集め始めていたタイミングと重なる。5位のPES from RIP SLYMEや6位のサカナクションといった顔ぶれからは、ヒップホップ由来のセンスとオルタナティブなバンドサウンドが並び立つ、当時の邦楽シーンの豊かさが見えてくる。8位の大橋トリオが醸すやわらかなソングライティングも含め、この週のチャートは「歌もの」としての強度を持つ楽曲が国内外問わず支持されていたことを物語っている。
一方で洋楽勢も存在感を放っていた。3位のCARLY RAE JEPSEN「CALL ME MAYBE」は、この年を代表するグローバル・ヒットとなり、SNSでのミーム的拡散も含めてポップミュージックの新しい届き方を予感させる存在だった。7位のMAROON 5 feat. WIZ KHALIFA「PAYPHONE」は、ロックバンドがヒップホップ的な客演を取り入れるという、当時ますます一般化しつつあったクロスオーバーの好例だ。10位のOWL CITY「SHOOTING STAR」や9位のKINA GRANNIS「IN YOUR ARMS」といった、シンセポップやネット発のシンガーソングライターの楽曲がチャートインしていたことも、YouTubeやブログを通じて音楽が発見される時代の空気を伝えている。
こうして見渡すと、2012年6月のこの週は、ベテランが変化を恐れずに新しい音像へ踏み出し、若い才能が国境を越えて評価され、邦楽と洋楽が同じ土俵で聴かれていた、実に豊かな瞬間だったと言える。1位の「HAPPY PILLS」が持つ、どこか儚くも前向きな響きは、当時のリスナーがラジオの向こうに求めていた気分そのものだったのかもしれない。ヘッドフォンごしにあの週のTOP10を通して聴くと、ジャンルという言葉がまだ意味を持ちながらも、少しずつ溶け合い始めていた時代の手触りが、今もなお鮮やかに蘇ってくる。
2012年6月3日付 TOP10(出典:J-WAVE TOKIO HOT 100)
- 1位 HAPPY PILLS — NORAH JONES ▶ YouTube Music / Spotify / 🛒 Amazonで探す / 🛒 楽天で探す
- 2位 マミレル — 木村 カエラ ▶ YouTube Music / Spotify / 🛒 Amazonで探す / 🛒 楽天で探す
- 3位 CALL ME MAYBE — CARLY RAE JEPSEN ▶ YouTube Music / Spotify / 🛒 Amazonで探す / 🛒 楽天で探す
- 4位 CANDY CANDY — きゃりーぱみゅぱみゅ ▶ YouTube Music / Spotify / 🛒 Amazonで探す / 🛒 楽天で探す
- 5位 女神のKISS — PES FROM RIP SLYME ▶ YouTube Music / Spotify / 🛒 Amazonで探す / 🛒 楽天で探す
- 6位 僕と花 — サカナクション ▶ YouTube Music / Spotify / 🛒 Amazonで探す / 🛒 楽天で探す
- 7位 PAYPHONE — MAROON 5 FEAT. WIZ KHALIFA ▶ YouTube Music / Spotify / 🛒 Amazonで探す / 🛒 楽天で探す
- 8位 フラワー — 大橋トリオ ▶ YouTube Music / Spotify / 🛒 Amazonで探す / 🛒 楽天で探す
- 9位 IN YOUR ARMS — KINA GRANNIS ▶ YouTube Music / Spotify / 🛒 Amazonで探す / 🛒 楽天で探す
- 10位 SHOOTING STAR — OWL CITY ▶ YouTube Music / Spotify / 🛒 Amazonで探す / 🛒 楽天で探す


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