1989年10月1日放送の J-WAVE「TOKIO HOT 100」を振り返る回顧コラムです。当時のチャート上位曲を手がかりに、その週の音楽シーンを読み解きます。
本サイトは非公式のファンサイトです。チャートデータの出典:J-WAVE「TOKIO HOT 100」(1989年10月1日放送回)。
この週の音楽シーン
1989年10月1日放送の「TOKIO HOT 100」で首位に立ったのは、ジャネット・ジャクソンの「MISS YOU MUCH」だった。前年のアルバム『コントロール』での自立宣言から一歩進み、この年発表されたアルバム『Rhythm Nation 1814』からのシングルであるこの曲は、ジャム&ルイスによる硬質で無駄のないビートと、力強くも親しみやすいボーカルが同居する一曲だ。ダンスミュージックとしての切れ味と、ポップスとしての聴きやすさを両立させたサウンドは、80年代末という時代の空気そのものを映していたと言えるだろう。デジタル録音やドラムマシンが当たり前になり、R&Bとポップスの境界が急速に溶け合っていった時期の、ひとつの完成形がここにある。
この週のTOP10を見渡すと、新しい潮流と古参勢が同じ土俵で鳴っていたことがよくわかる。2位にはローリング・ストーンズの「MIXED EMOTION」がランクイン。ロックンロールの原点を保ちながらも、当時の同時代的なプロダクションを取り入れた音作りは、ベテランバンドが90年代を見据えて自らを更新していく過程そのものだった。一方でプリンスは「PARTYMAN」で映画『バットマン』のサウンドトラックから参戦。ファンクとポップの実験を続けてきた彼らしく、ユーモアと毒気を併せ持つトラックが異彩を放っていた。マドンナの「CHERISH」も忘れてはならない存在で、この年話題を呼んだアルバム『Like a Prayer』からの一曲として、開放的でメロディアスな一面を見せている。
ソウル・ファンク方面では、D’アトラ・ヒックスの「SWEET TALK」や、ザップの「OOH BABY BABY」が並ぶ。トーキングモジュレーターを駆使したロジャー・トラウトマン率いるザップの存在は、後のG-ファンクやニュージャックスウィングへとつながる血脈を感じさせるし、ヒックスの楽曲もまた、当時のシカゴ/デトロイト系ソウルの層の厚さを物語っている。加えてベイビーフェイスが「IT’S NO CRIME」で自らボーカルを取っている点も興味深い。ソングライター・プロデューサーとしてすでに頭角を現していた彼が、シンガーとしての顔ものぞかせていた時期だ。
バラード勢ではリチャード・マークスの「RIGHT HERE WAITING」がじっくりと存在感を放つ。ドラマティックな展開と誠実な歌声は、当時のアダルト・コンテンポラリー市場の強さを示していた。ティアーズ・フォー・フィアーズの「SOWING THE SEEDS OF LOVE」は、ビートルズ的な音響美学を大胆に取り入れた意欲作で、80年代シンセポップの旗手が新たな段階に進んだことを感じさせる。そしてグロリア・エステファンの「DON’T WANNA LOSE YOU」は、ラテン由来のパーソナリティを保ちながらアメリカのメインストリームで確固たる地位を築いていく過程を示す一曲だった。
こうして並べてみると、この週のTOP10はロック、ファンク、ソウル、AC、ラテンポップと、驚くほど多様なジャンルが共存していたことがわかる。ジャネット・ジャクソンの「MISS YOU MUCH」が首位に立ったという事実は、単なる一曲のヒットにとどまらず、80年代が積み重ねてきた音楽的実験が、90年代への橋渡しとして結実しつつあった瞬間を象徴していたのではないだろうか。
1989年10月1日付 TOP10(出典:J-WAVE TOKIO HOT 100)
- 1位 MISS YOU MUCH — JANET JACKSON ▶ YouTube Music / Spotify / 🛒 Amazonで探す / 🛒 楽天で探す
- 2位 MIXED EMOTION — THE ROLLING STONES ▶ YouTube Music / Spotify / 🛒 Amazonで探す / 🛒 楽天で探す
- 3位 SWEET TALK — D’ATRA HICKS ▶ YouTube Music / Spotify / 🛒 Amazonで探す / 🛒 楽天で探す
- 4位 PARTYMAN — PRINCE ▶ YouTube Music / Spotify / 🛒 Amazonで探す / 🛒 楽天で探す
- 5位 CHERISH — MADONNA ▶ YouTube Music / Spotify / 🛒 Amazonで探す / 🛒 楽天で探す
- 6位 SOWING THE SEEDS OF LOVE — TEARS FOR FEARS ▶ YouTube Music / Spotify / 🛒 Amazonで探す / 🛒 楽天で探す
- 7位 RIGHT HERE WAITING — RICHARD MARX ▶ YouTube Music / Spotify / 🛒 Amazonで探す / 🛒 楽天で探す
- 8位 IT’S NO CRIME — BABYFACE ▶ YouTube Music / Spotify / 🛒 Amazonで探す / 🛒 楽天で探す
- 9位 OOH BABY BABY — ZAPP ▶ YouTube Music / Spotify / 🛒 Amazonで探す / 🛒 楽天で探す
- 10位 DON’T WANNA LOSE YOU — GLORIA ESTEFAN ▶ YouTube Music / Spotify / 🛒 Amazonで探す / 🛒 楽天で探す


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