チャートを追っている人ほど、この夏の異変に気づいたはずだ。Mrs. GREEN APPLEの新曲Brand New🛒楽天が、単なる新譜以上の重みを持って各所に登場している。日本のバンドが、ハリウッド大作の日本版主題歌を”書き下ろし”で担当する。しかもマーベル・スタジオ社長本人が指名した——という話が事実として動いている。この記事では、確度の高い公式情報のみを頼りに、この曲がなぜ話題なのか、どう聴けばいいのか、キャリアの中でどんな位置にあるのかを、ライターの耳で丁寧にほどいていきたい。
この曲の要点
- 「Brand New」はMrs. GREEN APPLEの新曲で、2026年7月13日にデジタルリリースされた。
- 映画『スパイダーマン:ブランド・ニュー・デイ』の日本版主題歌として大森元貴が書き下ろした楽曲で、日本語吹き替え版のエンドクレジットに使用される。
- マーベル・スタジオ社長ケヴィン・ファイギがMrs. GREEN APPLEを「私の一押しのバンド」と語り、大森に直接連絡を取って実現したコラボである。
- 制作にあたり、ケヴィン・ファイギ、製作のエイミー・パスカル、音楽監修のデイヴ・ジョーダン、監督のデスティン・ダニエル・クレットンらと対話を重ねて進められた。
- 映画は7月31日に日米同時公開。
まず事実から——「Brand New」はどんな座組みの曲か
「Brand New」は日本のバンドがハリウッド大作の主題歌を担う、その”書き下ろし”の一本だ。派手な話に見えて、実はよくある「既存曲のタイアップ差し込み」ではない。今作のために大森元貴(Vo/Gt)が書き下ろした”Brand New”は、『スパイダーマン:ブランド・ニュー・デイ』日本語吹き替え版のエンド・クレジットにアタッチされる。ここが重要で、映画本編のグローバル版音楽を差し替えるのではなく、日本語吹替版のクレジットに専用曲として置かれる形になっている。 発売スケジュールもすっきりしている。デジタルリリースは2026年7月13日。映画公開はその約2週半後。7月31日に日米同時公開されるので、曲が先に耳に馴染んでから劇場で”答え合わせ”できる設計だ。私はこの順序が好きで、主題歌が先に走る作り方は、曲そのものを一本の作品として扱っている感じがする。 座組みで見逃せないのが、プロジェクトを引き寄せた張本人の存在だ。ファイギ社長はミセスについて「彼らは私の一押しのバンドです」と明かしており、「LAや東京でじっくり語り合い、スパイダーマンへの愛と情熱を感じました。新曲への想いが伝わってきて本当に光栄に思います」とコメントしている。海外の映画スタジオのトップが、日本のバンドに直接ラブコールを送り、実際に会いに来る——という筋書きは、10年前ならフィクションに近かった。実際に起きている。 制作の現場も、思ったより厚い。Mrs. GREEN APPLEは楽曲制作に向けて、マーベル・スタジオ社長のケヴィン・ファイギや製作のエイミー・パスカル、音楽監修のデイヴ・ジョーダン、そしてデスティン・ダニエル・クレットン監督といった豪華な製作陣と対話を重ねながら制作を進めたとされる。単発の楽曲提供ではなく、映画側のクリエイティブと直接すり合わせて作った曲、という点は聴く前提として押さえておきたい。もう一段深く踏み込むと、この曲のニュース性は”順序”にも表れている。日本のアーティストが海外映画のグローバル版主題歌に採用されるパターンは過去にもあったが、多くはアジア展開や既存曲のライセンス使用が中心だった。今回のように、映画スタジオの社長本人が名指しで書き下ろしを依頼し、日本語吹替版のクレジットに専用曲として置く、という座組みは、少なくとも近年の邦楽シーンで頻繁に起きている事象ではない。海外側から”日本版のためだけの一曲”が要請された、という事実の重みが、この曲の背景にある。
私はこの構造を、単純なタイアップとは違うものとして扱いたい。曲を提供する側と映画を作る側が、”同じチームの一員”に近い距離で作業した痕跡が、公開されているコメントの端々にある。「今作の大切にしたいことを伺いまして、曲として精一杯の愛情を込めて制作いたしました!」——大森のこの言葉は、映画側の”大切にしたいこと”を先に聞いた上で書いた、という制作順序を示している。曲が先か映画が先か、ではなく、両者が同じ土台で走った。
タイトル「Brand New」が示す立ち位置
タイトルが映画タイトルとリンクしているのは、狙いだ。『スパイダーマン:ブランド・ニュー・デイ』——その”Brand New Day”の一節を、日本版主題歌が受け取り、”Brand New”として切り出している。字面としては地味な単語だが、ここに含意が二重に走っている。 ひとつは、映画側の物語との共鳴。「Brand New」は「真新しい」「新品の」という意味を持つ英語で、そこには、新しい人生の始まりや、過去を乗り越えて新たな一歩を踏み出すという、前向きなニュアンスも含まれている。前作『スパイダーマン:ノー・ウェイ・ホーム』で全世界の人々から自分の記憶を消したピーター・パーカー、という設定を前提にすると、この単語の効き方がずいぶん違って聞こえる。真新しい日、というより「新しくやり直すしかない日」だ。 もうひとつは、バンド側の位置取り。Mrs. GREEN APPLEは2020年に一度活動を止めて再始動している、という経緯があるバンドだ。”Brand New”というワードを、いま彼らが背負って歌う意味は、単に映画の言葉遊びにとどまらない。私はここに、外部タイアップにありがちな「借り物の主題歌感」を打ち消す狙いを感じている。曲のテーマとバンドのテーマが、たまたま、しかしきれいに重なった。サウンドと作風の読みどころ
作詞・作曲の情報はシンプルだ。作詞:大森元貴、作曲:大森元貴、発売日:2026/07/13。バンドの中心人物が単独で書いた曲、ということになる。ここに、外部のハリウッド作曲家の名前が入らなかった意味は大きい。日本語吹替版のエンドクレジットに”日本のバンドの世界観”をそのまま乗せる、という判断だ。 大森元貴という作家は、ここ数年で明らかに書き方が変わっている。初期の疾走感重視から、ミドルテンポの中でメロディをたっぷり泳がせる方向へ。転調の入り方も、以前ならBメロ頭でガクッと変えていた場所を、いまはAメロの後半でスッと差し込んで来る。「Brand New」もその線の作品で、映画の情感に寄り添うためにテンポとダイナミクスをコントロールしている印象がある。 プロダクションの観点でひとつ推測できるのは、”英語圏の耳”を意識したミックスの整え方だ。日本語詞で書かれつつも、映画本編の音響設計と地続きに聴こえるように、リバーブの長さやローエンドの処理はグローバル基準で仕上げてくる可能性が高い。実際に音源で確かめてほしいのは、間奏のギターとストリングス(あるいはシンセ・パッド)の重ね方。ここが映画音楽的な密度で作られていれば、エンドクレジットで観客の耳に残る仕掛けが機能する。聴きどころ3点
- タイトル・ワードの往還:映画タイトル『ブランド・ニュー・デイ』と曲名「Brand New」の呼応。同じ単語が、映画側の物語とバンド側の歩みの両方に効く。
- 大森元貴の”手癖”を超える書き分け:単独作詞作曲でありながら、映画側の製作陣と対話して作っている。従来のMrs. GREEN APPLE節と、映画音楽的な引き算がどこで折り合ったか、が聴きどころ。
- 日本語吹替版限定という設計:グローバル版とは別の音を、日本の観客だけがエンドロールで浴びる。曲そのものを”体験”として味わえる稀な条件。
キャリアの中での位置づけ——「スパイダーマンとの縁」の本気度
この曲は突然の抜擢ではない。伏線が長い。Mrs. GREEN APPLEはデビュー当時よりスパイダーマンの大ファンであることを公言してきたグループで、公にファン心を出し続けた結果として今回のオファーに繋がっている。私はこの点をライターとしていちばん面白いと思っていて、「たまたま声がかかった」ではなく「言い続けた側に呼ばれた」構造なのが良い。 実際、制作の場は東京だけでは完結していない。“Brand New”は『スパイダーマン:ブランド・ニュー・デイ』日本語吹き替え版のエンド・クレジットにアタッチされる。制作にあたり、2026年2月には米ロサンゼルスに大森元貴が渡っていると各所で伝えられている。LAで映画側の中枢と会い、テーマを共有した上で日本に持ち帰って書く——このプロセスは、いわゆる”提供曲”のワークフローとは違う。共同制作の色が濃い。 大森元貴とファイギ社長の関係性についても、面白い話が出ている。大森元貴が「ケヴィン・ファイギとメル友」と語り、『スパイダーマン』制作秘話を告白したという報道があり、単発のビジネス的な関係を超えたやり取りが続いていることが読み取れる。海外の映画プロデューサーとメールで日常的に会話する日本のバンドマン、という絵はまだ珍しい。 大森はコメントも残している。「いち映画ファンとして、そしてMCUファンとして、日本語版主題歌の存在意義を、愛を、しっかりと伝えたいという想いで参加させていただきます。小さい頃から大好きだったスパイダーマンにこうして関われる事とても嬉しく胸がいっぱいです。」——ここには、”提供楽曲”に対する言葉の温度としては珍しいほど、個人の熱量がのっている。Mrs. GREEN APPLEというバンドの現在地
Mrs. GREEN APPLEはここ2〜3年、アニメ映画『名探偵コナン』シリーズや複数のCMタイアップ、ドラマ主題歌を立て続けに担当し、シングル単位の”当てる力”が突出しているバンドになっている。ヒット曲を出し続けているだけでなく、ジャンルを跨ぐ器用さがある。バラードもフェスアンセムもファンクっぽいポップスも、同じバンド名義で成立させている。この幅の広さが、外部からの信頼を積み上げてきた。 アルバム単位でも次の一手が控えている。6thオリジナル・フル・アルバムは2026年9月30日リリース予定で、「Brand New」はそのアルバム前の重要な布石になる可能性が高い(収録可否は公式発表を待つべきだが、時期的にはアルバム制作期と重なっている)。夏に映画主題歌でリスナーを一気に引き寄せ、秋にアルバムで受け止める——というプロモーション上の設計は、素直に強い。 10周年関連のリリースも並行している。Blu-ray/DVD『MGA MAGICAL 10 YEARS ANNIVERSARY LIVE ~FJORD~ ON SCREEN』が2026年7月8日リリース、『MGA MAGICAL 10 YEARS DOCUMENTARY FILM ~THE ORIGIN~』も同日リリースという形で、キャリア総括モードと新曲リリースが同時に走っている。振り返りと更新の同時進行。バンドが10年を”まとめる”のではなく”起点にし直す”ムードが濃い。チャートと話題性——数字より前に動いていること
チャートについては、具体的な順位や再生数の断定は避けたい(各サービスで日次変動があるため)。ただ、動きの”性質”は書ける。7月13日リリース、映画公開は7月31日。この2週間強のあいだにストリーミング側で走らせ、映画公開週に劇場体験と組み合わさって二段目のブーストがかかる、という設計だ。事実として、歌詞掲載ページの表示回数だけで既に約19万回に達しているような反応が出ており、リリース直後から関心の集まり方は速い。 話題の広がり方も面白くて、通常のJ-POP新曲リリースだと日本語圏SNSが中心になるが、この曲はマーベル関連で英語圏の映画ファンにも波及している。映画『スパイダーマン』シリーズ公式Xがファイギ社長の発表コメントを日本版アカウントで発信したこともあって、映画ファン側からの流入が普段のミセス周りの層と混ざっている。この”客層の混線”がいちばん貴重で、単発の再生数以上に、次の作品への地ならしになる。 チャートで数字が跳ねる曲は毎月出るが、この曲は「跳ねた後に何が起きるか」のほうが本題だ。日本のバンドが海外大作と直接組んで、書き下ろしを納品して、社長がSNSで発信する——このモデルが機能した実例として、今後数年語られる可能性がある。私はそう見ている。この曲を、映画の外でどう楽しむか
映画主題歌は、映画を観ないと乗れない、と思っているリスナーがたまにいる。この曲に関してはその心配は要らない。書き下ろしといっても、映画本編の劇伴ではなくエンドクレジットの独立曲だ。単体で完結するポップスとして聴ける設計になっている。 むしろ推奨したいのは、二段階の聴き方だ。まず、映画を観る前に何度か聴いて、この曲だけの世界観を頭に入れる。次に、映画公開後にもう一度聴く。エンドクレジットのシーンを浴びた耳で聴くと、同じメロディがまったく別の意味で響く。書き下ろし主題歌の醍醐味はここにある。 個人的な聴き方の話をすると、私は夜の作業BGMとしてイヤホンでリピートしている。深夜、部屋の照明を落として、リバーブの奥行きを感じながら聴くと、映画音楽っぽいスケール感が際立って気持ちいい。通勤電車でシャッフル再生に混ぜるより、腰を据えて連続で聴くほうが合う曲だと思う。もうひとつ、リスナー側の視点で書いておきたいことがある。この曲はサブスクで気軽に聴ける形で配信されているが、”エンドクレジットで聴く体験”を経てから改めて聴くと、印象が反転する曲になる可能性が高い。映画本編のクライマックスを浴びた直後、暗転した劇場でこの曲のイントロが鳴る——その情景を想定してミックスされているなら、家のスピーカーで聴くのとは違う受け取り方が用意されている。書き下ろし主題歌の”劇場体験”を、あえて優先する聴き方はアリだと思う。
入門動線
この曲でMrs. GREEN APPLEに初めて触れた人には、次の1曲として「ライラック」を薦めたい。アニメタイアップで幅広く聴かれた楽曲で、大森元貴の書き分けの幅が分かる。もう一枚聴くなら、10周年関連の映像作品『MGA MAGICAL 10 YEARS ANNIVERSARY LIVE ~FJORD~』のライブ音源系。「Brand New」がスタジオワークの精緻さで勝負している曲だとすれば、ライブ音源はバンドの生身のグルーヴが分かる補助線になる。まとめ——”Brand New”を額面通り受け取っていい理由
この曲の面白さは、タイトル通り”新しい”ことが本当に起きている点だ。日本のポップバンドがハリウッド大作の主題歌を、単独作家の書き下ろしで、映画側の中枢と直接対話して制作する——この座組みが、事実として整っている。派手な単発の抜擢ではなく、長年公言してきた「好き」が呼び水になって、実際にオファーが飛んで来た、という筋書きも美しい。 正直に言うと、映画主題歌タイアップは、いまや珍しくない。毎月どこかで発表されている。ただ、この曲は”海外大作×日本語吹替版限定×バンドの個人的な愛”という三点セットが揃っていて、そこに大森元貴の作家としての現在地が乗る。数字が跳ねる曲は今後もいくらでも出るだろうが、”モデル”として振り返られる曲は多くない。「Brand New」は、後者になり得る。 映画公開後の受け取られ方も含めて、しばらく追いかけたい一曲だ。詳細な制作エピソードや今後の展開は、公式サイト・公式SNS・映画公式の発表を参照してほしい。まずこの作品から聴く
- ライラック — 書き分けの幅が分かる代表曲
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