LE SSERAFIM『UNFORGIVEN』今聴き直す 西部劇とナイル・ロジャースの意図

夕暮れの荒野に立つ影と、白いレスポールギターの弦にかかるリバーブの光 楽曲

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2023年5月にリリースされたUNFORGIVEN🛒楽天を、いま聴き直すと当時とは違う輪郭で像を結ぶ。リリース直後のレビューは賛否が割れた曲だった。ナイル・ロジャースのカッティング、エンニオ・モリコーネの『続・夕陽のガンマン』引用、そしてK-POPガールグループがまとう西部劇の設え。要素が多すぎて、当時は「何がやりたいのか」がすぐには掴めなかった、と正直に思う。

この曲は許されない側に立つ宣言ではなく、許しを求めない自由を装備するための音の設計図だった。3年近く経って、『EASY』『CRAZY』『HOT』と続く近年のシングルまで並べて聴くと、そう思う。UNFORGIVENは通過点ではなく、あの時点で骨格が置かれていた。

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この曲の要点

  • LE SSERAFIMの1stスタジオアルバム『UNFORGIVEN』のタイトル曲として2023年5月1日にリリース
  • Chic〜Daft Punk『Get Lucky』で知られるナイル・ロジャースがギターで参加
  • エンニオ・モリコーネ作曲『続・夕陽のガンマン』メインテーマをサンプリング
  • アルバムはオリコン週間アルバムランキング1位を記録し、日本での存在感を大きく引き上げた
  • 2024年のコーチェラでもセットリストに組み込まれ、ライブ定番曲として定着

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基本情報——2023年5月、1stフルアルバムの中心

まず事実の整理から。UNFORGIVEN (feat. Nile Rodgers)は、LE SSERAFIMの1stスタジオアルバム『UNFORGIVEN』のタイトルトラックとして2023年5月1日にリリースされた。プロデュース陣にはSource Music/HYBE陣営のScore、Megatone、Supreme Boiらが並び、韓国語版と日本語版が同時に用意されている。3分ちょうどの尺、ジャンル表記はヒップホップ。

ここで注目したいのは、彼女たちがデビューからまだ1年しか経っていなかったという時間軸だ。1st EP『FEARLESS』でデビュー、2nd EP『ANTIFRAGILE』でK-POPガールグループとして最速級の勢いを見せ、そして初のフルアルバム。この位置で西部劇とディスコの生き神様を同時に呼び込むのは、普通に考えれば無茶だ。無茶を通したこと自体が、この曲の意味の半分を占めている。

アルバムは日本のオリコン週間アルバムランキングで1位を記録。フィジカルの売上でも初動から強く、彼女たちが日本市場で外資系ガールグループの中でも特別な位置に立った起点になった。

ナイル・ロジャース参加の本当の意味

ナイル・ロジャースがこの曲に何をもたらしたか。表面的にはChic直系のカッティングギター、あの粒立ちの揃った16分の刻みだ。だがそれ以上に大きいのは、K-POPが白人ロックの引用装置を借りずに、黒人ダンスミュージックの本流に手を伸ばしたという文脈側の意味だと思う。

K-POPの女性グループがロック/メタル的な意匠を強く出す例は、当時BLACKPINKやITZYの流れで一定量あった。UNFORGIVENは違う道を取った。イントロで銃声のような低音とモリコーネのメロディを鳴らしながら、コアはディスコとヒップホップのビート。西部劇の荒野を、ドライな砂ぼこりではなく、ミラーボールの下の乾いたグルーヴとして表現している。ここが独特で、ここが当時わかりにくかった。

プリコーラスあたりでロジャースのカッティングが薄く前に出てくる瞬間があるのだが、あれは装飾ではなく接着剤の役割だと聴くたびに思う。モリコーネ由来の口笛/エレキの引用と、現代のTrap的なドラムの間に、ディスコの弦の張力が挟まっている。3層構造。だから曲が引き裂かれず、ひとつのタペストリーとして立つ。

モリコーネ引用が担った物語の装置

サンプリング元はセルジオ・レオーネ監督の1966年のイタリア製西部劇『続・夕陽のガンマン』(The Good, the Bad and the Ugly)のメインテーマで、作曲はエンニオ・モリコーネ。あの口笛のフレーズだ。60代以上の映画ファンなら反射で反応し、Z世代でもミームやCM経由でどこかしらで耳にしている、稀有な共有記憶の一つ。

この引用は、単に「かっこいい映画音楽を借りた」で済ませられない仕事をしている。西部劇はアウトローの物語だ。法の外側で自分の掟を持つ人間の話。K-POPガールグループがその紋章を掲げるとき、そこには品行方正なアイドル像に対する明確な距離の取り方が刻まれる。

ここが今から振り返って一番効いてくる。2024年以降の『EASY』の脱力、『CRAZY』の割り切ったフィジカル賛歌、『HOT』の直球ダンスポップ。表面のモードは大きく変わったのに、根っこの外側に立つ姿勢は一貫している。UNFORGIVENはその紋章をまず打ち込んだ曲だった、と読み直せる。

当時のわかりにくさを、今の位置から振り返る

正直に書く。2023年5月に初めて聴いたときの自分の第一印象は「詰め込み過ぎでは」だった。同時期の海外レビュー、たとえばThe Bias Listなどでも、期待の高さゆえに評価は割れていた。モリコーネの荘厳さ、ナイル・ロジャースの華やかさ、K-POP的サビの飛距離。それらが3分の中で全部主張してくるので、初聴は情報過多に感じた。

今の耳で聴くと、逆にこの過剰さが設計だったとわかる。彼女たちはこの後、『Perfect Night』や『EASY』で引き算のLE SSERAFIMを見せていく。UNFORGIVENは、引き算のためにまず全部乗せて名刺を配った曲だ。「これだけの素材を、私たちの土俵で一緒に鳴らせる」という宣言。だから当時わかりにくかったのは、聴き手ではなく、この曲の役割の側だった。

もう一つ、後から効いてくるのがボーカルの粗さだ。あえて滑らかにしすぎない、少し掠れた発声を残す処理。これは以降の楽曲でも一貫していて、彼女たちのボーカル・ディレクションの原則になっている。UNFORGIVENの時点でそれが確立していた、と気づく。

キャリアの中の位置づけ——名刺としてのタイトル曲

LE SSERAFIMのシングル群を並べると、UNFORGIVENの位置がはっきり見える。『FEARLESS』が名乗り、『ANTIFRAGILE』が世界にひらいた扉、UNFORGIVENが美術館級のゲストと同じ床に立てる証明、『EASY』以降が引き算のブランド確立。この流れの3番目。

ゲストがナイル・ロジャースであることの重みも、後から効いてくる。彼はChicで70年代のディスコを定義し、David Bowie『Let’s Dance』、Madonna『Like a Virgin』、Daft Punk『Get Lucky』とポップミュージックの決定的な瞬間に何度も立ち会ってきたギタリストだ。そのカタログに、K-POP4世代のガールグループがサビの背後で並んでいる、という事実は、10年後にディスコグラフィを振り返る誰かにとって象徴的な1行になるはずだ。

2024年4月のコーチェラでも本曲はセットリスト中盤の山場に置かれた。フェスの照明とダンサーの陣形が、まさに西部劇の一場面に見える設計。曲が持っていた視覚的な骨格は、ライブで初めて完成した気がする。

プロダクションの細部——3分に詰まった判断

3分ちょうどという尺は、K-POPのタイトル曲としても短めの部類だ。ストリーミング時代のフォーマットに寄せた設計であることは間違いない。ただ、この曲の場合、短さがただの時流合わせではなく、詰め込みの必然に変換されている。10秒あるかないかのイントロで銃声めいたSEとモリコーネの引用を鳴らし切り、Aメロに雪崩れ込む。導入で溜めない。この判断が、映画的な引用と現代のショートフォーム感覚を両立させている。

低音の作り方も特徴的だ。当時のK-POPタイトル曲は808ベースの持続音でボトムを支える手法が主流だったが、UNFORGIVENは低音を細かく刻んで、上物のディスコ弦と互い違いに動かしている。これは踊れる曲というより、体を前に押し出す曲の作り方だ。歩きながら聴くとよくわかる。歩幅が微妙に変わる。

ミックスに関しても、リバーブの残し方が独特。西部劇的な荒野の広さを出すためにリバーブを深く使うのが定石だが、この曲はドライに寄せている。広さは音場ではなく、音色の選択で表現している。口笛のフレーズが遠く鳴っているように聴こえるのは、リバーブではなく倍音成分の削り方によるものだと思う。細かいが、ここが上手い。

グループ内の役割分担——5人の声で立ち上がる西部劇

メンバー5人(サクラ、キム・チェウォン、ホ・ユンジン、カズハ、ホン・ウンチェ)の声の使い分けも、UNFORGIVENでは丁寧に設計されている。ラップパートを担うホ・ユンジンとキム・チェウォンの低めのトーンが、モリコーネ由来の男性的な物語装置を受け止め、サクラとカズハの少し高めのボーカルが、ディスコの華やかさを担う。ホン・ウンチェの声はサビの厚みに溶かして、全体の一体感を作る。

この配分が、後の曲になると変わっていく。『EASY』ではキム・チェウォンのウィスパー的な低音が主役になり、『CRAZY』ではサクラのグルーヴが前に出る。UNFORGIVENは全員に見せ場が均等に配られていた曲で、そこには新しいアルバムの顔としての気合いが読み取れる。

ライブ映像を見ると特にわかるのだが、この曲のパフォーマンスは陣形の変化に依存している。銃を構えるようなポーズ、円陣、横一列。振付の記号性が強く、視覚的にも西部劇の絵作りをしている。楽曲だけでなく、パッケージ全体で世界観を成立させる作り。この総合力が、当時のK-POPガールグループの中でも突出していた。

日本のリスナーにとってのUNFORGIVEN

日本でのLE SSERAFIMの受容を語る上で、UNFORGIVENは節目になった曲だ。日本語版が用意され、フィジカルでもストリーミングでも数字が動いた。特に日本語版のボーカルディレクションは、韓国語版よりも少し柔らかい。子音の立て方を控えめにして、日本語のリズムに乗るように作り直している。細かいが、そこに手を抜かなかったことが結果に効いている。

カズハとサクラという日本人メンバー2人を擁するグループが、日本市場に単に楽曲を輸出するのではなく、届け方まで作り込む姿勢を明確に見せたのがこの曲だった。以降、彼女たちの日本での存在感は加速していく。UNFORGIVENの日本語版はその起点として、記録的な意味を持つ。

この曲がどう聴かれているか

UNFORGIVENは気合いを入れたい時のプレイリストに入っている曲だと思う。ワークアウトの締め、長距離運転の下道区間、あるいはプレゼン前の3分。曲構造がドラマチックに起承転結を持っているので、聴き終わったときに小さな儀式が完了した感覚が残る。そう設計されている気がする。

逆に、就寝前のリラックスや朝の目覚めには向かない。汎用のBGMではなく、武装するための曲。この用途の限定性は弱点ではなくて、むしろ強度だ。何度聴いても薄まらない。

聴きどころ3点

  • イントロの口笛モチーフ。モリコーネの引用が、K-POPの現在形のビートにどう接続されるかの瞬間
  • プリコーラス裏のカッティングギター。ナイル・ロジャースの粒立ちが薄く前に出て、曲を接着する数秒
  • ラストサビ前のブレイク。一度全部が引いてから戻ってくる、西部劇のクライマックスに寄せた設計

解釈が分かれる論点

この曲を巡っては、いまも意見が分かれる論点がある。「西部劇のアウトロー像を、韓国と日本を拠点にするガールグループがどう引き受けるか」という問いだ。批判寄りの見方は、モチーフの借用が装飾に留まっているのでは、というもの。肯定寄りの見方は、K-POPが世界の音楽アーカイブから自由に引用する時代を象徴した曲だ、というもの。

個人的にはどちらの読みも成立すると思っている。だからこそ、この曲は聴き手それぞれの立ち位置を試す。あなたはUNFORGIVENを衣装として楽しんでいるのか、宣言として受け取っているのか。答えは変わっていい。というより、この3年で変わったことに意味がある。

入門動線

UNFORGIVENから広げるなら、まず同じアルバムに収録された『Eve, Psyche & the Bluebeard’s wife』へ。文学モチーフ×ダンスビートという、LE SSERAFIMのもう一つの得意技が味わえる。関連1枚はもちろん1stアルバム『UNFORGIVEN』。フェイスとしてのタイトル曲だけでなく、収録曲群の幅を知ると、この時期の彼女たちがどれだけ多方向に手を伸ばしていたかがわかる。

2023年5月の風景——何が同時に起きていたか

UNFORGIVENがリリースされた2023年5月の周辺を思い出しておくと、この曲の位置がさらに立体的になる。同時期にはNewJeansが『Super Shy』のリリース前で、K-POPガールグループの覇権争いが最も加熱していた頃だった。BLACKPINKのメンバーがそれぞれのソロ活動を本格化させ、(G)I-DLEやIVEも大きな曲を出していた。世代交代の圧が最大化していた時期だ。

その中でLE SSERAFIMは、派手さで殴るのではなく、引用と参照で殴る戦略を取った。ナイル・ロジャースとモリコーネという固有名詞は、音楽ファンダムの外側にも波紋を届ける装置だ。K-POPの熱心なリスナーだけでなく、映画好き、ディスコ愛好家、往年の洋楽ファンにも何か起きていると気づかせた。これは戦略として賢い。

結果として、UNFORGIVENは音楽メディアだけでなくカルチャー全般で語られた曲になった。批評の質量で言えば、同時期のヒット曲の中でも屈指だと思う。賛否が割れたこと自体が話題性の証明でもあった。

今から入る人へ——聴く順番のおすすめ

もしあなたが2025年以降にLE SSERAFIMを知った新規リスナーなら、UNFORGIVENは少し古い硬派な曲に聴こえるかもしれない。『EASY』や『HOT』の柔らかさを先に浴びた耳には、確かにゴツゴツして感じられる。ただ、そこで飛ばさないでほしい。この曲を通過してから最新シングルに戻ると、彼女たちがどう変化したかの地図が手に入る。

おすすめの順番はこう。まず『FEARLESS』で名乗りを聴き、『ANTIFRAGILE』で拡張を聴き、UNFORGIVENで骨格の確立を聴き、『EASY』『CRAZY』『HOT』で引き算のブランド化を聴く。時系列に沿うだけで、彼女たちの現在地の意味がわかる。UNFORGIVENはその真ん中で、最も重い錘の役割を果たしている。

まとめ——3年後に効いてくる曲

UNFORGIVENは、リリース当時に完全に理解される必要のなかった曲だと思う。むしろ、その後のキャリアが積み上がってから振り返って「あそこで骨格が置かれていた」と気づく類の曲。ナイル・ロジャースの参加もモリコーネの引用も、当時は派手な装飾に見えたが、いまは許しを求めない側に立つための装備として一貫している。

だから今、この曲を聴き直す価値がある。3年前に流し聴きしていた人ほど、今の彼女たちのシングルの後で戻ると、輪郭が違って見えるはず。まだ聴いていない人には、ぜひ1stアルバム『UNFORGIVEN』ごと通してほしい。順序としては、収録曲を先に聴いてから、タイトル曲に戻る聴き方もおすすめ。名刺の意味が、後から立ち上がってくる。

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