1992年4月12日放送の J-WAVE「TOKIO HOT 100」を振り返る回顧コラムです。当時のチャート上位曲を手がかりに、その週の音楽シーンを読み解きます。
本サイトは非公式のファンサイトです。チャートデータの出典:J-WAVE「TOKIO HOT 100」(1992年4月12日放送回)。
この週の音楽シーン
1992年4月12日放送の「TOKIO HOT 100」で首位に立ったのは、WORKSHYの「TROUBLE MIND」。WORKSHYは英国発のソウル/ファンク・ユニットで、いわゆるUKソウルの潮流の中から出てきた存在として90年代初頭のクラブ・シーンやブラック・ミュージック好きのリスナーから注目を集めていた。当時は米国のR&Bやニュージャックスウィングだけでなく、こうした英国産のソウルフルなグルーヴがラジオのチャートに食い込んでくる時代でもあり、「TROUBLE MIND」の1位獲得は、洋楽ファンにとって「アメリカだけが音楽の中心ではない」ことを改めて実感させる出来事だったはずだ。
この週のTOP10を見渡すと、時代の空気が濃密に詰まっている。SHANICE「I LOVE YOUR SMILE」やCE CE PENISTON「WE GOT A LOVE THANG」は、90年代前半のダンス〜R&Bクロスオーバーを象徴する存在で、シャニースの弾けるようなポップ感覚と、シシー・ペニストンのハウス由来のフロア対応力は好対照だった。ADEVAの「IT SHOULD HAVE BEEN ME」も同様にハウス/ソウル文脈の女性シンガーで、この時期のチャートは女性ヴォーカリストの層の厚さが際立っていたことがよくわかる。VANESSA WILLIAMSの「SAVE THE BEST FOR LAST」は後にAC(大人向けポップス)方面でも長く愛される定番曲となる楽曲で、この週すでにTOP10入りしているのも興味深い。
そしてマイケル・ジャクソンの「REMEMBER THE TIME」。前年秋にリリースされたアルバム『デンジャラス』からのシングルで、エディ・マーフィーやマジック・ジョンソンらが出演した壮大なミュージックビデオも大きな話題となった。ニュージャックスウィングの仕掛け人テディ・ライリー流のビートに、マイケルならではのメロディセンスが乗った一曲であり、90年代のポップ〜R&Bの方向性を示す重要なシングルだった。同じ曲がこの週のリストに二度顔を出しているのも、当時の集計や放送尺の都合を感じさせて興味深い。
異色なのはKEZIAH JONESの「THE WISDOM BEHIND THE SMILE」。ナイジェリア出身でロンドンを拠点に活動していたシンガーソングライターで、アフロ・ビートやファンクを消化した独自のギターサウンドが評価されていた人物。こうしたワールドミュージック的な感性を持つアーティストが自然にチャートインしてくるあたりに、J-WAVEらしい選曲の幅広さが表れている。9位のBRUCE SPRINGSTEENの「HUMAN TOUCH」は、同名アルバムと『LUCKY TOWN』を同時発売するという異例のリリース戦略で世間を騒がせた一曲。長年Eストリート・バンドと歩んできたボスにとって、新しいサウンドへの挑戦を印象付けるタイミングでもあった。10位のBETTE MIDLERの「IN MY LIFE」は、彼女ならではの歌唱力で聴かせるナンバーで、映画やテレビでも活躍していた大御所ならではの貫禄を感じさせる。
こうして並べてみると、1992年4月のこの一週間は、ダンスミュージック、UKソウル、王道ポップ、ロックの重鎮、ワールドミュージック的感性までが一つのチャートに同居していた、実に懐の深い時代だったことがわかる。WORKSHYの「TROUBLE MIND」が首位に輝いたという事実は、単なる一曲のヒットにとどまらず、当時のリスナーがジャンルの垣根を意識せずに音楽を楽しんでいたことの証でもある。今こうして振り返ると、当時のTOKIO HOT 100が持っていた選曲眼の確かさと、90年代初頭ならではの音楽シーンの豊かさに、改めて感慨を覚える。
1992年4月12日付 TOP10(出典:J-WAVE TOKIO HOT 100)
- 1位 TROUBLE MIND — WORKSHY ▶ YouTube Music / Spotify / 🛒 Amazonで探す / 🛒 楽天で探す
- 2位 I LOVE YOUR SMILE — SHANICE ▶ YouTube Music / Spotify / 🛒 Amazonで探す / 🛒 楽天で探す
- 3位 WE GOT A LOVE THANG — CE CE PENISTON ▶ YouTube Music / Spotify / 🛒 Amazonで探す / 🛒 楽天で探す
- 4位 REMEMBER THE TIME — MICHAEL JACKSON ▶ YouTube Music / Spotify / 🛒 Amazonで探す / 🛒 楽天で探す
- 5位 IT SHOULD HAVE BEEN ME — ADEVA ▶ YouTube Music / Spotify / 🛒 Amazonで探す / 🛒 楽天で探す
- 6位 SAVE THE BEST FOR LAST — VANESSA WILLIAMS ▶ YouTube Music / Spotify / 🛒 Amazonで探す / 🛒 楽天で探す
- 7位 THE WISDOM BEHIND THE SMILE — KEZIAH JONES ▶ YouTube Music / Spotify / 🛒 Amazonで探す / 🛒 楽天で探す
- 8位 REMEMBER THE TIME — MICHAEL JACKSON ▶ YouTube Music / Spotify / 🛒 Amazonで探す / 🛒 楽天で探す
- 9位 HUMAN TOUCH — BRUNCE SPRINGSTEEN ▶ YouTube Music / Spotify / 🛒 Amazonで探す / 🛒 楽天で探す
- 10位 IN MY LIFE — BETTE MIDLER ▶ YouTube Music / Spotify / 🛒 Amazonで探す / 🛒 楽天で探す


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