2021年2月7日放送の J-WAVE「TOKIO HOT 100」を振り返る回顧コラムです。当時のチャート上位曲を手がかりに、その週の音楽シーンを読み解きます。
本サイトは非公式のファンサイトです。チャートデータの出典:J-WAVE「TOKIO HOT 100」(2021年2月7日放送回)。
この週の音楽シーン
2021年2月7日放送のJ-WAVE「TOKIO HOT 100」で首位に立ったのは、SZAの「GOOD DAYS」だった。彼女の名を一躍知らしめた2017年のアルバム『Ctrl』から数年、ソロ名義でのシングルとしてこの曲が届けられたタイミングは、パンデミックが世界を覆い、東京でも緊急事態宣言下で人と人との距離が強いられていた時期と重なる。派手なビートで踊らせるのではなく、揺らぐようなトラックの上でSZAの声が漂い、聴く者の内側にゆっくりと沈み込んでいくような作りは、まさに「家で過ごす時間」が長引いていたあの頃の空気にしっくりと馴染むものだった。R&Bというジャンルが持つ即興性と親密さを、彼女は決して声を張り上げることなく、むしろ抑制の効いた歌い回しで体現していて、そこにこの曲の説得力があったように思う。
この週のTOP10を見渡すと、SZAを筆頭に洋楽と邦楽、メジャーとインディーが違和感なく並んでいるのが印象的だ。2位のKROIは、日本のシーンから生まれたバンドでありながらUSのR&Bやオルタナティブの語法を自在に取り込むグループとして注目を集めていた存在で、3位のTHE FUR.、4位のRHYEもまた、ムードやテクスチャーを重視するサウンドメイクで共通する感触を持つ。こうした「静けさ」や「肌触り」を大事にする楽曲群がひとつのチャートに集まっていたこと自体が、当時のリスナーが何を求めていたかを物語っているのかもしれない。外出や交流が制限されるなかで、大きく騒ぐ音楽よりも、ひとりの部屋でじっくり聴き込める音楽に耳が向いていた時期だったのだろう。
一方で5位のOfficial髭男dismは、邦楽ロックシーンの中心にいながらポップスとしての強度を持つバンドとして、この時期すでに幅広い層からの支持を確立していた。7位のYONA YONA WEEKENDERSや9位のヨルシカ「春泥泥棒」(ヨルシカらしい繊細な情景描写と物語性を持つ楽曲)も含め、邦楽勢が持ち込む叙情性は、洋楽勢のムード感とはまた違ったかたちでこの週のチャートに厚みを与えていた。特にヨルシカは、n-bunaの紡ぐ言葉とsuisの歌声が作り出す独特の世界観で、当時すでに幅広いリスナー層を獲得しつつあった。
そして6位に入っているオリヴィア・ロドリゴの「drivers license」は、のちにこの年最大級のヒットとして語られることになる楽曲であり、この時点ではまだその爆発的な広がりの初期段階にあった。10代の心情を赤裸々に綴ったこの曲が、まさにこのタイミングでTOP10入りしていたことは、後から振り返ると象徴的な瞬間だったと言えるだろう。8位のアーロ・パークスもまた、この後まもなく大きな評価を得ていく新世代のアーティストのひとりで、静かな筆致で内面を描く歌詞世界とサウンドが、当時の気分と共鳴していた。
10位のSilk City and Ellie Goulding feat. Diplo and Mark Ronsonという豪華な顔合わせの新曲も含め、この週のチャートは、パンデミック下という特殊な状況の中で、リスナーがジャンルや国境を越えて「自分の部屋で聴く音楽」を選び取っていたことを物語っている。SZAの「GOOD DAYS」が首位に立ったのは偶然ではなく、あの時期に多くの人が求めていた、静かに寄り添うような音楽の象徴だったのではないだろうか。
2021年2月7日付 TOP10(出典:J-WAVE TOKIO HOT 100)
- 1位 GOOD DAYS — SZA ▶ YouTube Music / Spotify / 🛒 Amazonで探す / 🛒 楽天で探す
- 2位 PAGE — KROI ▶ YouTube Music / Spotify / 🛒 Amazonで探す / 🛒 楽天で探す
- 3位 OH WHY — THE FUR. ▶ YouTube Music / Spotify / 🛒 Amazonで探す / 🛒 楽天で探す
- 4位 COME IN CLOSER — RHYE ▶ YouTube Music / Spotify / 🛒 Amazonで探す / 🛒 楽天で探す
- 5位 UNIVERSE — OFFICIAL髭男DISM ▶ YouTube Music / Spotify / 🛒 Amazonで探す / 🛒 楽天で探す
- 6位 DRIVERS LICENSE — OLIVIA RODRIGO ▶ YouTube Music / Spotify / 🛒 Amazonで探す / 🛒 楽天で探す
- 7位 唄が歩く時 — YONA YONA WEEKENDERS ▶ YouTube Music / Spotify / 🛒 Amazonで探す / 🛒 楽天で探す
- 8位 CAROLINE — ARLO PARKS ▶ YouTube Music / Spotify / 🛒 Amazonで探す / 🛒 楽天で探す
- 9位 春泥棒 — ヨルシカ ▶ YouTube Music / Spotify / 🛒 Amazonで探す / 🛒 楽天で探す
- 10位 NEW LOVE — SILK CITY AND ELLIE GOULDING FEAT. DIPLO AND MARK RONSON ▶ YouTube Music / Spotify / 🛒 Amazonで探す / 🛒 楽天で探す


コメント