いま改めて、BE:FIRSTを聴くべき理由
BE:FIRST(ビーファースト)の名前を目にする機会が、ここ数年で一気に増えた。テレビの音楽番組、サブスクのバイラルチャート、SNSでのダンス動画。どこを覗いても、彼らの曲やパフォーマンスが差し込まれてくる。日本のボーイズグループの勢力図が動いているのは間違いなくて、その中心に彼らがいる。
ただ、名前は知ってるけど曲まではちゃんと聴いたことがない、という人は案外多い。ダンスが上手いグループ、SKY-HIのオーディションから出てきたグループ、そのくらいの解像度で止まっている人も少なくないはず。もったいない話だと思う。彼らの音楽は、パフォーマンスの派手さだけで語れるものじゃなくて、楽曲そのものの完成度がかなり高い。R&B、ヒップホップ、ダンスポップの引き出しをきちんと持っていて、しかもそれを日本語のポップスとして成立させている。
この記事では、彼らの出自から音楽性、代表曲の聴きどころ、シーンの中での位置づけまでを一通り追いかける。ファンダムの熱量ではなく、音楽の中身から入っていきたい人向けのガイドとして書いた。
プロフィールと結成までの経緯
BE:FIRSTは、SOTA、SHUNTO、MANATO、RYUHEI、JUNON、RYOKI、LEOの7人からなる男性グループ。2021年11月にプレデビュー、そして正式デビューを果たしている。所属レーベルはBMSG。このBMSGという会社の名前が、彼らを語るうえでどうしても最初に来る。
BMSGを立ち上げたのは、ラッパー・シンガー・プロデューサーとして知られるSKY-HI(日高光啓)。もともとAAAのメンバーとしても活動してきた人物で、ソロではヒップホップ寄りの表現を追求してきた。彼が私財を投じて始めたオーディションが「THE FIRST」で、その最終的な合格メンバーで組まれたのがBE:FIRSTだ。オーディション自体がYouTubeやテレビで話題を呼び、放送を追いかけていた人にとっては、デビュー時点で既に7人の人間性や関係性が見えていた、という珍しいスタート地点だった。
ここで大事なのは、SKY-HIが「才能に対価を払う」「アーティスト自身が納得できる契約と環境をつくる」ことを繰り返し公言してきた点だ。BMSGは事務所というより、ある種の思想を持ったレーベルとして立ち上げられていて、そこから最初に世に出たのがBE:FIRSTになる。だから彼らの活動は、単にひとつのボーイズグループの成功譚ではなく、日本の音楽業界のビジネスモデルに対する問いかけとしても読まれてきた。
メンバー個々のバックグラウンドも多彩で、ダンス出身、シンガー志望、ラップ好き、と入り口が違う。年齢もかなり幅があって、最年少と最年長では感覚がまったく違うはずなのに、その差が楽曲のなかで役割分担として機能している。
音楽性の核と変遷
BE:FIRSTのサウンドを一言でまとめるなら、R&Bとヒップホップの語彙を軸に置いたダンスポップ、ということになる。ただ、その「軸」の使い方が曲ごとに違っていて、そこが面白い。デビュー曲のGifted.🛒楽天は、暗めのビートに強いメッセージを乗せた、いわゆる決意表明ソング。少年たちの門出、みたいなキラキラした曲でスタートしなかった時点で、このグループの方向性はかなりはっきりしていた。
そこからShining One🛒楽天でメロディの強さとフックの気持ちよさを見せつけ、Bye-Good-Bye🛒楽天ではミッドテンポのグルーヴを軽やかに乗りこなす。ここまでの流れだけでも、彼らが「同じ路線を繰り返さない」ことを意識しているのが分かる。ダンスグループにありがちな、ひたすらアッパーな曲で押し切る戦略を取っていない。
ボーカルワークの設計も丁寧で、7人それぞれの声質を明確に活かしている。低音で地面を作る役、鋭くフロウを刻む役、サビでメロディを大きく開かせる役、フェイクや高音でトップに抜ける役。これが曲ごとに入れ替わる。だから同じグループなのに、聴くたびに曲の主役が違うように感じられる。ボーイズグループの中には、誰がどこを歌っているか判別しづらいまま曲が進むタイプもあるけれど、BE:FIRSTはむしろその逆で、ソロパートを聴かせて全体で回収する構造がはっきりしている。
プロデュース面ではSKY-HI自身が深く関わりつつ、外部の作家陣もかなり幅広い。海外のトラックメーカーやトップライナーとの共作も多く、いわゆる「Kポップ的な洗練」と「日本語ポップスの叙情性」の両方を吸収した音になっている。どちらかに寄り切らないバランス感覚が、彼らの音楽性の核だと思う。
聴きどころ3点
- 7人分の声の色が明確に描き分けられていて、ソロパートだけ抜き出しても成立する情報量がある。
- ミッドテンポとアッパーを行き来する曲順設計で、アルバム単位で聴くと構成の巧さが際立つ。
- R&B、ヒップホップ、ダンスポップの引き出しを、日本語詞の乗せ方まで含めて自然に消化している。
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代表作・ディスコグラフィの読みどころ
入り口としてまず押さえたいのが、シングルとして展開されてきた楽曲群。Gifted.🛒楽天はデビュー曲でありながら、いまだにライブでの重要曲として鳴らされ続けている。あの重さで始めたこと自体が、彼らの「軽く消費されない」という宣言だったと思う。
そこからBye-Good-Bye🛒楽天は、彼らの中でも間違いなくシグネチャー的なポジションにある一曲。ミュージックビデオのダンスがSNSで拡散され、いわゆるファン以外の層にまで到達した。ダンス動画から入って音源にたどり着いた人、というのがこの曲以降でかなり増えたはずだ。
アルバム作品としてはBE:1🛒楽天がひとつのマイルストーン。デビュー期の楽曲を含みつつ、アルバムでしか聴けない曲も並んでいて、シングルだけでは見えないバンドとしての幅が分かる作りになっている。曲順で聴くと、ダンサブルなナンバーとバラード寄りのミッドテンポが交互に配置されていて、ライブのセットリストを想像しながら聴ける。
その後の楽曲では、より攻めた音像や、逆にポップスとしての普遍性を狙った曲など、明らかに実験と定番の両方を試している。ある時期には海外のプロデューサー色が強い曲があり、別のタイミングでは日本のポップスとしての気持ちよさに振り切った曲がある。単発で聴くとバラバラに感じるかもしれないが、時系列で並べると「引き出しを開けている最中のグループ」の記録として面白い。
あと、BE:FIRSTを聴くうえで見逃せないのが、ライブ音源やパフォーマンス映像との合わせ技だ。彼らはスタジオ音源の完成度も高いが、生でやると別物になる曲が多い。特にラップパートやアドリブが入るタイプの楽曲は、映像を追ってはじめて全体像がつかめる。CDなり配信なりで音源を掴んだあとは、ライブ映像で答え合わせをする、という順番がわりと合っている。
カルチャー的な文脈と、彼らが動かしたもの
BE:FIRSTの登場は、日本のボーイズグループ市場に対して、いくつか具体的な変化をもたらした。ひとつは、オーディション番組のフォーマットが「メンバー選抜プロセス自体をコンテンツにする」時代を、日本のマーケットで改めて成立させたこと。オーディションを追いかけながらファンになる、という体験は韓国のサバイバル番組では定番だったが、それを日本発のグループでやり切って結果を出した意味は大きい。
もうひとつは、レーベル側の姿勢に対する意識を変えたこと。SKY-HIが繰り返し発信してきた、アーティストの取り分、契約の透明性、育成環境への投資、といった話題は、これまで業界内では触れづらいテーマだった。BE:FIRSTが商業的に結果を出したことで、それらの話題がタブーじゃなくなった、という空気の変化はある。他社のオーディションプロジェクトや新規レーベルの立ち上げにも、少なからず影響しているはずだ。
同時代のシーンでいえば、Kポップの日本進出、日本国内の複数の新興ボーイズグループの台頭、そしてサブスク中心のリスニング環境の定着、といった複数の潮流がぶつかっているタイミングで彼らはデビューしている。この乱戦のなかで、韓国発グループとも旧来のJポップとも違うレイヤーに自分たちを置いた、というのが彼らの立ち位置を面白くしている。「Jポップの正統派ボーイズグループ」でもないし、「Kポップ的な高精度アイドル」の丸コピーでもない。その中間で、独自の重心を作っている。
ラッパーとしてのSKY-HIのバックグラウンドが色濃く反映されていることも、他のグループとの差別化に効いている。ヒップホップの語法や、フリースタイル的な感覚が、7人のパフォーマンスの端々に染み込んでいる。だから、ダンスボーカルグループでありながら、ヒップホップリスナーからの支持もある程度取れてしまう。この越境の仕方はけっこう珍しい。
いまチャートで見せている強さ
チャートでの動きを見ると、BE:FIRSTはリリースのたびに一定以上の反応をきちんと出し続けているグループだ。初動の強さもあるし、ロングヒットしていく楽曲も持っている。ダンス動画から遅れて発火して、リリースから何ヶ月も経ってからチャートに再浮上する、というパターンもある。サブスク時代の聴かれ方に合ったカタログを作れているということでもある。
週次のラジオチャートやストリーミングのランキングでも、彼らの楽曲は継続的に顔を出している。新譜が出た週にドンと入って、その後もじわじわ残る。この「じわじわ残る」タイプの曲を複数持てているグループは、実はそう多くない。一発の話題性で瞬間最大風速だけ出すグループとは、明らかに違うフェーズにいる。
ライブ動員も年を追って規模を上げていて、アリーナクラスの会場でのツアーを回せる体制が整った。この規模になると、単に人気があるだけでは無理で、ステージ演出、バンド編成、映像、動線設計まで含めた総合的なクオリティコントロールが必要になる。BE:FIRSTはそこも、かなり早い段階で乗り越えてきた印象がある。
入門動線
初めて聴くなら、まずシングル「Bye-Good-Bye」を1曲通してみてほしい。彼らのグルーヴ感、ボーカルの分担、フックの強さがコンパクトに詰まっている。そこで感触を掴んだら、次はアルバム「BE:1」を頭から通しで。シングル単位では見えない曲順設計や、バラード寄りの楽曲での表現力まで見えてくる。もっと深く行きたくなったら、その後のアルバム作品や配信シングル群を時系列で追うのが良い。作風の振れ幅が広がっていく過程が面白い。
まずこの作品から聴く
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これから聴くならどこから
入り口の作り方は人によるけれど、迷ったら「代表曲を1曲」「初期アルバムを1枚」「最近作を1枚」の三段構えで攻めるのが結局いちばん外れない。BE:FIRSTの場合、この三段が綺麗にハマる。代表曲でグループの顔を掴み、初期アルバムで基礎体力を確認し、最近作で現在地を測る。この順番で聴くと、彼らが同じ場所に留まっていないグループだということがはっきり分かる。
個人的には、ダンスグループというカテゴリの中でだけ彼らを消費するのはもったいないと思ってる。楽曲のプロダクションだけを取り出して聴いても十分楽しめるし、ボーカルグループとして評価してもかなりレベルが高い。ヒップホップ、R&B、ポップスのどこから入っても引っかかる要素があるので、自分の好きなジャンルの入り口から聴き始めていい。
これから何が出てくるか、正直まだ読み切れない。国内シーンで定位置を確保した後、次にどこへ向かうか。海外のマーケットへの本格的な展開なのか、メンバーそれぞれのソロプロジェクトの拡張なのか、あるいはもっと別の形なのか。ここまで自分たちの立ち位置を自覚的に作ってきたグループなので、次の一手も面白いことになる気がしている。詳細な最新情報は公式サイトや公式SNSで追いかけてほしい。


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