2011年7月31日放送の J-WAVE「TOKIO HOT 100」を振り返る回顧コラムです。当時のチャート上位曲を手がかりに、その週の音楽シーンを読み解きます。
本サイトは非公式のファンサイトです。チャートデータの出典:J-WAVE「TOKIO HOT 100」(2011年7月31日放送回)。
この週の音楽シーン
2011年7月31日というタイミングでTOKIO HOT 100の頂点に立ったのが、サカナクションの「バッハの旋律を夜に聴いたせいです。」だった。この年、サカナクションはアルバム『シンシロ』を軸に活動しており、エレクトロニカのひんやりとした質感とロックバンドとしての生々しい躍動感を同居させるスタイルが、それまでのJ-POPのフォーマットに収まらない存在として広く支持されていた時期にあたる。タイトルからしてすでに文学的で、クラブミュージック的な反復とバンドサウンドの緊張感が拮抗する作りは、ヘッドフォンで聴くにも、フェスの屋外で浴びるように聴くにも耐える強度を持っていた。震災から数ヶ月が経ち、節電が呼びかけられた夏の東京で、この曲の持つ静けさと高揚感の同居は、当時の空気とどこか重なるものがあったように思える。
この週のTOP10を眺めると、洋楽と邦楽、ロックとダンスミュージック、歌謡的なポップスが渾然一体となっている点が興味深い。2位にはレディー・ガガの「THE EDGE OF GLORY」。アルバム『Born This Way』からのシングルで、当時のガガはポップアイコンとしてすでに世界的な存在感を確立しており、この曲はサックスを大胆に取り入れた高揚感あふれるアリーナ向けの一曲として、ラジオでもクラブでも鳴り響いていた。8位にはLMFAOの「PARTY ROCK ANTHEM」。パーティーロックダンスという振り付けとともに世界中で踊られたこの曲は、2011年という年を象徴するダンスミュージックの一つと言っていいだろう。享楽的でありながら中毒性の高いこの手のトラックが上位に食い込んでいたことも、この時代のリスナーの気分をよく表している。
一方で邦楽勢も存在感を放っていた。3位のJUJUによる「YOU」は、彼女らしいソウルフルな歌唱力を生かしたバラード寄りの楽曲で、大人のR&B/ポップスとしての完成度の高さが際立つ。6位のいきものがかり「笑ってたいんだ」は、バンドの持ち味であるまっすぐなメロディーとポジティブな言葉選びで、震災後の夏という時期にリスナーの心情に寄り添う一曲として広く流れていた印象がある。9位のKREVA「KILA KILA」は、日本語ラップのフロウの巧みさとポップな親しみやすさを両立させた楽曲で、当時のKREVAが持っていたシーンでの独自の立ち位置をよく示している。
4位のSCHOOL FOOD PUNISHMENTや5位のSOIL & PIMP SESSIONS feat. Maia Hirasawaといった名前が並ぶのも、この番組らしいセレクトだ。前者はマスロック的な変拍子とポップさを両立させるバンドとして、後者はジャズを軸にした鋭いバンドサウンドに北欧のシンガーを迎えたコラボレーションとして、それぞれ音楽的な実験性を持ち込んでいた。7位のカサリンチュ、10位のCSSも含め、このチャートはメインストリームのヒット曲だけでなく、感度の高いリスナーが支持する楽曲を積極的にすくい上げていたことがうかがえる。
震災後の重苦しさが残りつつも、夏という季節が持つ開放感、そして音楽が持つ純粋な高揚感がせめぎ合っていた2011年7月末。このTOP10は、そんな時代の複雑な気分を、ジャンルも国籍も問わない多様な選曲によって静かに映し出していたのではないだろうか。サカナクションの繊細さとLMFAOの享楽性が同じ週のチャートに並ぶという事実そのものが、当時のリスナーの耳の広さを物語っている。
2011年7月31日付 TOP10(出典:J-WAVE TOKIO HOT 100)
- 1位 バッハの旋律を夜に聴いたせいです。 — サカナクション ▶ YouTube Music / Spotify / 🛒 Amazonで探す / 🛒 楽天で探す
- 2位 THE EDGE OF GLORY — LADY GAGA ▶ YouTube Music / Spotify / 🛒 Amazonで探す / 🛒 楽天で探す
- 3位 YOU — JUJU ▶ YouTube Music / Spotify / 🛒 Amazonで探す / 🛒 楽天で探す
- 4位 IN BLOOM — SCHOOL FOOD PUNISHMENT ▶ YouTube Music / Spotify / 🛒 Amazonで探す / 🛒 楽天で探す
- 5位 MOVIN’ — SOIL AND PIMP SESSIONS FEAT. MAIA HIRASAWA ▶ YouTube Music / Spotify / 🛒 Amazonで探す / 🛒 楽天で探す
- 6位 笑ってたいんだ — いきものがかり ▶ YouTube Music / Spotify / 🛒 Amazonで探す / 🛒 楽天で探す
- 7位 やめられない とまれない — カサリンチュ ▶ YouTube Music / Spotify / 🛒 Amazonで探す / 🛒 楽天で探す
- 8位 PARTY ROCK ANTHEM — LMFAO ▶ YouTube Music / Spotify / 🛒 Amazonで探す / 🛒 楽天で探す
- 9位 KILA KILA — KREVA ▶ YouTube Music / Spotify / 🛒 Amazonで探す / 🛒 楽天で探す
- 10位 HITS ME LIKE A ROCK — CSS ▶ YouTube Music / Spotify / 🛒 Amazonで探す / 🛒 楽天で探す


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