Shakiraを聴き直す|ラテンポップの女王、越境の軌跡と代表曲

ラテンのリズムを想起させる抽象的な色彩とダンスの動きのイメージ アーティスト

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チャートに戻ってきたラテンポップの女王

Shakira(シャキーラ)というアーティストを、ここ数年で「再発見」した人は多いんじゃないかと思う。若い世代にとってはTikTokで流れてくるコラボ曲の人、少し上の世代にとっては2000年代のワールドヒットでラテンポップの扉を叩き破った人。世代によって入り口がまったく違うのに、どの層にも刺さり続けているのが、この人の異常なところだと個人的には感じている。

ラテン音楽が世界のメインストリームに完全に組み込まれた今、その道を最初にこじ開けた側の一人がShakiraだった、という文脈は改めて確認しておきたい。レゲトンやラテンアーバンが英語圏のチャートを埋め尽くす現在の景色は、いきなり出来上がったものではない。スペイン語のまま歌う女性シンガーが、英語圏のポップ市場のど真ん中で戦えることを証明してきた人がいたから、今の裾野がある。

今週のチャートに名前が並んでいるということは、単なる懐古ではなく、今も現役の作り手として更新され続けているという証拠でもある。近年のリリース攻勢、私生活の変化を反映したとされる楽曲群、そして若手アーティストとの共作。60分の番組に収まりきらないほど話題の絶えないアーティストを、一度腰を据えて整理してみたい。

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コロンビア・バランキージャからの出発

Shakira Isabel Mebarak Ripoll。コロンビアのカリブ海沿岸の街バランキージャで生まれた。父方はレバノン系のルーツを持ち、この中東由来の背景は後のダンススタイル(ベリーダンスの導入)や、アラビックなメロディの取り込みに直結していく。ラテンとアラブの混ざり合い、というのは彼女の音楽を語るうえで外せない補助線だ。

10代前半でレコード契約を結び、地元コロンビアでシンガーソングライターとしてキャリアをスタート。ただし最初の数枚は商業的に大きな成功を収めたわけではなく、いわゆる下積みの時期がある。この時期に本人が作詞作曲に深く関与するスタイルを確立していたことは重要で、後のワールドスターになってからも「歌わされる人」ではなく「自分で書く人」であり続けている。

ブレイクのきっかけになったのは、90年代後半のスペイン語圏でのヒット作群。ロック色の強いポップ、フォルクローレの香り、そしてキャッチーなメロディが同居する独自のフォーマットで、まずラテンアメリカとスペインを制圧した。ここで英語圏に急がず、まずスペイン語圏で確固たる地位を築いたのが、結果的に長いキャリアの土台になっている気がする。

英語圏クロスオーバーとワールドヒット

2000年代初頭、Shakiraはスペイン語圏の枠を飛び越えて英語圏マーケットに本格参入する。プロデュース面ではエミリオ・エステファンら、ラテン系アーティストの英語圏進出をサポートしてきた才人たちも関わり、言語を跨ぐアーティストとしての設計が丁寧に組まれていた。

この時期の代表作がLaundry Service🛒楽天。英語楽曲を大幅に含んだアルバムで、世界中で爆発的なセールスを記録した。ここから生まれたヒットは、単にラテン風味のポップというだけでなく、ロック、ダンス、フォークが同居するハイブリッドな作りで、「Shakiraって結局どのジャンルなの?」という問いを永遠に棚上げにさせるだけの強度があった。

2000年代半ばには、二部作として構想されたスペイン語盤と英語盤をリリースしている。同一コンセプトを2言語で提示するというやり方は、当時としては相当挑戦的で、しかも両方ちゃんと売れた。ここで英語圏だけに軸足を移さなかったのが本当に大きくて、スペイン語圏のコアファンを手放さないまま英語圏でも勝負するという二正面作戦を、キャリアを通じて維持し続けている。

そして2010年、南アフリカ開催のFIFAワールドカップ公式ソングとして起用されたWaka Waka (This Time for Africa)🛒楽天が、彼女を完全にグローバルアイコンの位置に押し上げる。アフリカのグループFreshlygroundとの共作で、ワールドカップ関連曲としては歴代でも屈指の再生数を記録している。スポーツイベントの主題歌という枠を超えて、ラテンとアフリカのリズムがポップスに溶け込むショーケースになった。

音楽性の核と変遷

Shakiraの音楽性を一言で括るのは正直難しい。ロックのバンドサウンド、コロンビアのクンビアやバジェナート、アラビックスケール、レゲトン、EDM、アコースティックなフォーク──それぞれの時期で軸足がずれるし、しかも同じアルバム内でも混ざる。「一貫性のなさ」こそが彼女の一貫性、みたいなところがある。

ただ、通底しているものはいくつかある。ひとつは、独特のヴォーカル・テクスチャー。ヴィブラートの強弱、しゃくり、時にヨーデルのようにひっくり返す音の跳ね方。これは他の誰かで代替できない声質で、どんな編成の曲に乗っても「Shakiraの曲だ」と一発でわかる。もうひとつは、身体のリズム。ダンスも含めて設計されている曲が多く、腰から下のグルーヴが常に意識されている。

2010年代後半以降は、レゲトンやラテンアーバンとの接続がぐっと強くなった。Maluma、J Balvin、Anuel AA、Ozunaといったラテンシーンの新世代とのコラボが増え、若い世代のリスナーにもアクセスしやすい入り口が用意された。ここで面白いのは、若手に「乗せられる」のではなく、Shakiraの方が主導権を握って自分のスタイルに引き込んでいく感じがあること。ベテランとしての貫禄と、流行を取り込む柔軟さが両立している。

聴きどころ3点

  • ラテン、ロック、アラビック、アーバンを行き来する越境力。同じアーティストとは思えない振れ幅を、声質ひとつで統一している。
  • 作詞作曲に深く関与するシンガーソングライター的側面。単なるパフォーマーではなく、自分の物語を自分の言葉で書く姿勢を貫いている。
  • 身体で聴かせる設計。ダンス、ベリーダンス由来の身のこなし、リズムのハネ方まで含めて音楽になっている。

代表作・ディスコグラフィの読みどころ

スペイン語圏での評価を決定づけたのがPies Descalzos🛒楽天と、その次に続くロック色の強い作品群。この時期のShakiraは、まだ「ラテンポップのアイコン」というより「南米発のロックシンガーソングライター」に近い立ち位置で、ギターリフの効いた曲や内省的なバラードが並ぶ。今聴くと、後年のポップスターとしての姿とのギャップに驚くと思う。

英語圏での認知を決定づけたのが前述のLaundry Service🛒楽天。ここに収録された代表曲は、ラテンのリズムを英語のメロディに落とし込む方法論として、後続のアーティストに与えた影響がとにかく大きい。今のバイリンガル・ヒットの文法の一部は、この時期のShakiraが実験的に敷いたものだと言っていいと思う。

2000年代半ばの二部作、そこから続くダンサブルな路線、そしてワールドカップ主題歌によるグローバル・アンセム化。この流れを経て、キャリア中盤以降はよりポップ/ダンス寄りにシフトしていく。近年の作品では、私生活の変化を反映したとされる楽曲や、若手プロデューサー・アーティストとの共作が話題を呼び、シングル単位でチャートを賑わせるスタイルに軸足を移してきた印象がある。詳細な制作背景や関係者情報は公式サイトや正規のインタビュー記事を参照してほしい。

個人的に面白いのは、キャリア初期のロック少女的な作品と、近年のアーバン寄りの作品を並べて聴くと、まるで別人のように聞こえるのに、声を聴くと同じ人だと即座にわかること。この振れ幅を1人のアーティストの中で処理してきたことが、単純にすごい。

カルチャー的な文脈と影響

Shakiraが英語圏で勝ち始めた2000年代前半、ラテン系アーティストが世界のメインストリームで通用するかどうかは、まだ大きな賭けだった。リッキー・マーティン、ジェニファー・ロペスなど同時期に活躍していたアーティストと並走しながら、彼女はスペイン語のアイデンティティを捨てないままクロスオーバーに成功した数少ない例のひとつだ。

今、Bad Bunny、Karol G、Rosalíaといったスペイン語圏のスターが英語圏チャートを普通に席巻している。この地殻変動の遠因のひとつに、「スペイン語のままでも世界で売れる」という前例をShakiraが作り続けてきたことがある、と考えるのは無理筋ではないと思う。特にKarol Gのような同じコロンビア出身のアーティストが世界規模の存在になれた背景には、Shakiraが築いた道筋の存在が大きい。

スポーツとの結びつきも彼女の文化的存在感を語るうえで欠かせない。ワールドカップ主題歌の担当は、単なる楽曲提供ではなく、地球規模のイベントに音楽面から関与する経験だった。音楽が国境や言語を越える瞬間を、Shakiraはキャリアの節目で何度も体験してきている。

また、慈善活動家としての顔もある。母国コロンビアの子どもたちの教育を支援する財団を長年運営していて、単なるチャリティ的な関与にとどまらず、実務的なコミットメントを続けている。アーティストとしての表現と、社会活動家としての立場の両立は、彼女のパブリックイメージの重要な一部だ。

今チャートでの立ち位置

デビューから30年近く経つアーティストが、2020年代後半のチャートで新曲を戦わせている、という事実そのものが結構レアだと思う。しかも懐かしさで返り咲いているのではなく、現在進行形のリリースで聴かれている。ラテンアーバンの潮流に自分を合わせることもできれば、それを自分の音楽性に引き寄せることもできる柔らかさが、この長寿ぶりの理由じゃないかと感じている。

チャート内での動きは週によって変動があるので、具体的な数値はその週のオンエア情報や公式チャートで確認してほしい。ただ、名前が定期的に出てくること自体、ラテンポップというジャンルが局所的なブームではなく、恒常的なメインストリームの一部として定着したことの裏返しでもある。

若手コラボ、フィーチャリング、リミックスといった形でチャートに顔を出すことも増えていて、「新曲アルバムを出す」以外のルートでリスナーに届く経路が広がっているのも今っぽい。フェス出演やワールドツアーなど、ライブ面での活動もキャリアの重要な柱になっている。

入門動線

  • まずこの1曲: ワールドカップ主題歌として世界的に広まった「Waka Waka (This Time for Africa)」。ラテンとアフリカのリズムが混ざる、Shakira入門として最強の一発。
  • 次にこの1枚: 英語圏ブレイクの象徴「Laundry Service」。バイリンガルなヒットの原型として、今の耳で聴いても発見が多い。
  • 深めるならこの1枚: スペイン語圏での評価を決定づけたロック色の強い時期の作品「Pies Descalzos」。今のShakiraしか知らない人ほど、驚くはず。

これから聴くならどこから

Shakiraの魅力を短時間で掴みたいなら、まずはワールドヒットの入口から入って、そこから時間を遡っていくのがおすすめ。近年のラテンアーバン期の華やかさに触れて、2000年代前半のクロスオーバー期に戻って、最後にスペイン語ロック時代まで潜る。この順番で聴くと、彼女がどれだけの領域を渡り歩いてきたのかが体感できる。

逆に、コアなシンガーソングライターとしての側面に興味があるなら、90年代後半のスペイン語作品から入ってもいい。歌詞の意味が細部までわからなくても、メロディと声の表情だけで十分に伝わる強度がある。歌詞を訳詞サイトで確認しながら聴くと、彼女がずっと自分の物語を自分の言葉で書いてきた作り手であることが見えてくる。

正直、ラテン音楽をあまり通ってこなかった人ほど、Shakiraは入り口として優秀だと思ってる。ポップスの文法で聴けるのに、ちゃんとラテンの体温がある。そこから先、レゲトンでも、コロンビアのフォルクローレでも、好きな方向に潜っていける。長く聴けるアーティストです。

まずこの作品から聴く

  • Laundry Service — 英語圏ブレイクの原点
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  • Pies Descalzos — スペイン語期の名盤
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  • Waka Waka (This Time for Africa) — 世界を掴んだ一曲
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  • Fijación Oral, Vol. 1 — スペイン語期の到達点
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