1992年5月17日放送の J-WAVE「TOKIO HOT 100」を振り返る回顧コラムです。当時のチャート上位曲を手がかりに、その週の音楽シーンを読み解きます。
本サイトは非公式のファンサイトです。チャートデータの出典:J-WAVE「TOKIO HOT 100」(1992年5月17日放送回)。
この週の音楽シーン
1992年5月17日放送の「TOKIO HOT 100」を振り返ると、1位に輝いたのはSOUL Ⅱ SOULの「JOY」だった。90年代初頭のUKブラック・ミュージックを語るうえで欠かせない存在だったSOUL Ⅱ SOULは、ジャジー・Bを中心に結成されたコレクティヴで、ロンドンのクラブカルチャーとサウンドシステム文化を背景に独自のグルーヴを作り上げてきた。ゆったりとしたビートに深みのあるベースライン、そしてどこか都会的で洗練された空気感は、当時「クラブ・クラシックス」という言葉が示すように、ダンスフロアだけでなくラジオでも心地よく響くサウンドとして受け入れられていた。「JOY」というタイトルが示す通り、喜びや解放感を静かに、しかし確かな説得力で伝えてくる楽曲は、バブル経済の終焉を迎えつつあった当時の日本のリスナーにも、都市生活の中でのささやかな豊かさとして響いたのではないだろうか。
この週のTOP10全体を眺めると、ブラック・コンテンポラリーとUKロック、そしてソウルフルな女性ヴォーカルが混在する、実に90年代初頭らしい多様性が浮かび上がる。2位にはEN VOGUEの「MY LOVIN’」がランクインしており、彼女たちの緻密なコーラスワークとR&B的なグルーヴは、SOUL Ⅱ SOULとはまた違う角度からブラック・ミュージックの魅力を体現していた。3位のCHAKA KHANは70年代から活躍するソウル・シンガーとしての実力を存分に発揮し、ベテランならではの説得力あるヴォーカルを聴かせている。こうした顔ぶれからも、当時のチャートがいかにソウル、R&B、ダンスミュージックを軸に構成されていたかが伝わってくる。
一方で4位にはPAUL WELLERが登場している。THE JAMやTHE STYLE COUNCILでの活動を経てソロとして再出発した彼の存在は、UKロックの伝統とブラック・ミュージックへの深い愛情が交差する地点を示しており、このチャートの奥行きをより豊かなものにしている。7位のANNIE LENNOXもまた、EURYTHMICSでの活動を経てソロとして独自の表現を確立していた時期であり、その透明感あるヴォーカルが個性を放っていた。さらに9位にはTRACY CHAPMANの名前も見える。フォーク的な質感を持つ彼女の楽曲が、ダンス寄りのサウンドが並ぶ中に自然と収まっているのも、このチャートの懐の深さを物語っている。
10位のX.T.C.は、パンク〜ニューウェイヴ期から活動を続けるバンドとして独自の作家性を保ち続けており、この週のラインナップに知的な陰影を添えていた。全体として、1992年5月というこの時期は、80年代的なブラック・コンテンポラリーの洗練が90年代のクラブ・カルチャーへと橋渡しされていく過渡期であり、SOUL Ⅱ SOULの「JOY」が1位に立ったことは、その空気感を象徴する出来事だったように思える。当時ラジオから流れていたであろうこの一曲を、今あらためて聴き直してみると、静かな熱を帯びたグルーヴの中に、時代の記憶がそっと息づいているのを感じ取ることができるはずだ。
1992年5月17日付 TOP10(出典:J-WAVE TOKIO HOT 100)
- 1位 JOY — SOUL Ⅱ SOUL ▶ YouTube Music / Spotify / 🛒 Amazonで探す / 🛒 楽天で探す
- 2位 MY LOVIN’ — EN VOGUE ▶ YouTube Music / Spotify / 🛒 Amazonで探す / 🛒 楽天で探す
- 3位 LOVE YOU ALL MY LIFE TIME — CHAKA KHAN ▶ YouTube Music / Spotify / 🛒 Amazonで探す / 🛒 楽天で探す
- 4位 UH HUH ON YEAR — PAUL WELLER ▶ YouTube Music / Spotify / 🛒 Amazonで探す / 🛒 楽天で探す
- 5位 MAKE IT ON MY OWN — ALISON LIMERICK ▶ YouTube Music / Spotify / 🛒 Amazonで探す / 🛒 楽天で探す
- 6位 DON’T TALK JUST KISS — RIGHT SAID FRED ▶ YouTube Music / Spotify / 🛒 Amazonで探す / 🛒 楽天で探す
- 7位 WHY — ANNIE LENNOX ▶ YouTube Music / Spotify / 🛒 Amazonで探す / 🛒 楽天で探す
- 8位 SAVE THE BEST FOR LAST — VANESSA WILLIAMS ▶ YouTube Music / Spotify / 🛒 Amazonで探す / 🛒 楽天で探す
- 9位 BANG BANG BANG — TRACY CHAPMAN ▶ YouTube Music / Spotify / 🛒 Amazonで探す / 🛒 楽天で探す
- 10位 THE DISAPPOINTED — X.T.C. ▶ YouTube Music / Spotify / 🛒 Amazonで探す / 🛒 楽天で探す


コメント