1988年12月11日放送の J-WAVE「TOKIO HOT 100」を振り返る回顧コラムです。当時のチャート上位曲を手がかりに、その週の音楽シーンを読み解きます。
本サイトは非公式のファンサイトです。チャートデータの出典:J-WAVE「TOKIO HOT 100」(1988年12月11日放送回)。
この週の音楽シーン
1988年12月11日放送分の「TOKIO HOT 100」で1位に輝いたのは、ビーチ・ボーイズの「KOKOMO」だった。結成から四半世紀以上が経ったバンドにとって、この曲はトム・クルーズ主演の映画『カクテル』のサウンドトラックとして制作された一曲であり、マイク・ラヴのボーカルを中心に、往年のハーモニーの美しさとフロリダ・キーズの架空のリゾート地を歌う開放的な世界観が同居していた。60年代のサーフ・サウンドで一時代を築いた彼らが、80年代も終わろうとするこの時期に大衆的なヒットを飛ばしたこと自体が興味深く、映画音楽としてのタイアップが持つ拡散力の大きさを示す象徴的な事例でもあった。冬の気配が濃くなる12月に、常夏を思わせるこの曲が首位にあったというのも、日本のリスナーにとっては小さな清涼剤のような存在だったのではないだろうか。
この週のTOP10を眺めると、80年代後半のロック・シーンの多様さが見えてくる。2位のU2「DISIRE」はアルバム『ラトル・アンド・ハム』からのナンバーで、ルーツ志向を強めていた当時のバンドの方向性を色濃く反映していた曲。3位のボン・ジョヴィ「BAD MEDICINE」はアルバム『ニュージャージー』からのシングルで、アリーナ・ロックの様式美を体現するサウンドだった。4位のジョージ・マイケルは『フェイス』からの楽曲で、ワム!時代のポップ性とソロとしての洗練されたソウル/R&B感覚を融合させ、この時期のアダルト・コンテンポラリー市場を牽引していた。5位にはカイリー・ミノーグによる「ロコ・モーション」のカバーが入っており、原曲であるリトル・エヴァのモータウン・クラシックを、ストック・エイトケン&ウォーターマン印のダンス・ポップとして蘇らせたヴァージョンだ。オーストラリア出身のポップ・アイコンが世界的なスターダムに躍り出ていく過程が刻まれている一曲と言える。
6位のガンズ・アンド・ローゼズ「WELCOME TO THE JUNGLE」は、デビュー作『アペタイト・フォー・ディストラクション』からの楽曲で、荒々しいギター・リフとアクセル・ローズの攻撃的なボーカルが、当時隆盛を極めていたグラム/ヘアメタルの様式に対するオルタナティブな存在感を放っていた。8位のトラヴェリング・ウィルベリーズ「HANDLE WITH CARE」も見逃せない。ジョージ・ハリスン、ボブ・ディラン、トム・ペティ、ロイ・オービソン、ジェフ・リンという豪華な顔ぶれによる覆面的スーパーグループの一曲で、ベテラン勢が肩の力を抜いて楽しむ空気感がそのまま音に表れていた。9位のウィル・トゥ・パワーは、ピーター・フランプトンとレーナード・スキナードという世代もジャンルも異なる二曲をメドレーで再構築するという実験的なアプローチが、当時のフリースタイル/ダンス・ポップのシーンらしい試みだった。
そして10位には、松任谷由実「リフレインが叫んでいる」がランクイン。テレビドラマとの連動によってお茶の間に浸透した楽曲であり、洋楽が並ぶチャートの中に日本語詞のバラードが自然に溶け込んでいる様子は、この番組が国内外を問わずヒットの熱量をフラットに扱っていたことをうかがわせる。バブル景気の高揚感が街を包んでいたこの年の暮れ、洋楽ロックの骨太なサウンドと、映画・ドラマというメディアミックスから生まれたポップスが同じテーブルに並んでいたことこそ、この週のTOP10が伝える最大の面白さだろう。
1988年12月11日付 TOP10(出典:J-WAVE TOKIO HOT 100)
- 1位 KOKOMO — BEACH BOYS ▶ YouTube Music / Spotify / 🛒 Amazonで探す / 🛒 楽天で探す
- 2位 DISIRE — U2 ▶ YouTube Music / Spotify / 🛒 Amazonで探す / 🛒 楽天で探す
- 3位 BAD MEDICINE — BON JOVI ▶ YouTube Music / Spotify / 🛒 Amazonで探す / 🛒 楽天で探す
- 4位 KISSING A FOOL — GEORGE MICHAEL ▶ YouTube Music / Spotify / 🛒 Amazonで探す / 🛒 楽天で探す
- 5位 THE LOCO MOTION — KYLIE MINOGUE ▶ YouTube Music / Spotify / 🛒 Amazonで探す / 🛒 楽天で探す
- 6位 WELCOME TO THE JUNGLE — GUNS N’ ROSES ▶ YouTube Music / Spotify / 🛒 Amazonで探す / 🛒 楽天で探す
- 7位 I DON’T WANT YOUR LOVE — DURAN DURAN ▶ YouTube Music / Spotify / 🛒 Amazonで探す / 🛒 楽天で探す
- 8位 HANDLE WITH CARE — TRAVELLING WILBURYS ▶ YouTube Music / Spotify / 🛒 Amazonで探す / 🛒 楽天で探す
- 9位 BABY I LOVE YOUR WAY/FREEBIRD MEDLEY — WILL TO POWER ▶ YouTube Music / Spotify / 🛒 Amazonで探す / 🛒 楽天で探す
- 10位 リフレインが叫んでいる — 松任谷 由実 ▶ YouTube Music / Spotify / 🛒 Amazonで探す / 🛒 楽天で探す


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