TOMOOのSuper Ball🛒楽天を、いま改めて聴き返す機会が増えている。2023年秋のメジャー1stアルバムTWO MOON🛒楽天のリードとして世に出た曲だが、2025年11月にメジャー2ndアルバムDEAR MYSTERIES🛒楽天が届いた今、この曲の輪郭は当時よりくっきりして見える。尖らないまま貫くこと。この曲が更新したのは、応援歌というジャンルの内側にあった前提そのものだった。当時の紹介ではなく、二年経ってから振り返って初めて言えることを書きたい。
この曲の要点
- 「Super Ball」は2023年9月27日発売のメジャー1stアルバム『TWO MOON』のリード曲。
- サウンドプロデュース/アレンジは小西遼(象眠舎、CRCK/LCKS)。
- 2024年1月放送のテレビ朝日『関ジャム 完全燃SHOW』年間ベスト企画で、いしわたり淳治が年間1位に選出。
- 2024年4月からはABEMA『ABEMA Prime』番組テーマソングに起用。
- 2025年11月12日にメジャー2ndアルバム『DEAR MYSTERIES』がリリースされ、キャリアの結節点として改めて位置づけ直された。
なぜ今『Super Ball』を聴き直すのか
結論から書く。この曲は「TOMOOの代表曲」と呼ばれた時点でひとつの評価が定まったように見えたが、2025年の2ndアルバムを通過した耳で聴くと、当時よりむしろ複雑な曲として立ち上がってくる。当時は”アゲ曲””ポップな快作”として受け取られる面が大きかった。ただ、ここに込められた芯の部分は、実は次の作品群を予告していた。
2023年の発売時点で、この曲はサウンドプロデュースおよびアレンジに小西遼(象眠舎、CRCK/LCKS)を迎えたアルバムのオープニングだった。跳ねるリズム、ホーンの華やかさ、TOMOOのピアノとボーカルが持つ重心の低さ。表層は明快だが、聴き込むと構造がずいぶん凝っている。二年経った今、その凝りが「TOMOOはただの歌モノSSWではない」という後の理解に直結していたことがわかる。
そう。2025年の耳で聴く「Super Ball」は、ポップの顔をした宣言文だ。
「尖らずに丸いままつらぬけ」という言葉の再評価
この曲の受容を決定的に押し上げた出来事がある。2024年1月放送の『関ジャム 完全燃SHOW』、プロが選ぶ年間マイベスト企画だ。いしわたり淳治が年間1位に選出したことで音楽ファンを中心に話題となった。ここで語られた評価は、シンプルだが強い切り口だった。
いしわたりは「目の前の壁を壊せとか未来を切り拓け、という歌はたくさんあるけど、”尖らずに丸いままつらぬけ”というメッセージはあまり聴いたことがない」と評した。応援歌というジャンルの中で、TOMOOがずらしたのは1ミリだ。だが、その1ミリが効く。壁を壊せと言われても壊せない日がある。突き抜けろと言われても、削れてしまう人がいる。丸いまま、跳ね返り続ける。この設計思想が、当時「良い曲だね」で終わらず、二年経っても引用され続ける理由になった。
TOMOO自身も、SNSでこう振り返っている。“丸いままつらぬいて”という詞をはじめ、作曲当時は伝わるだろうかとも思いながら、それでも今自分が発したい・残せるものはこれだと思って書いた歌でした——という趣旨のポストだ。書き手自身が「届くか不安だった」曲が、プロの年間1位で受け止められる。この非対称のねじれが、いま読み返すと余計に沁みる。
サウンド面──小西遼のアレンジが今から見て意味するもの
直接に書く。この曲のサウンドは、TOMOOの声を「歌モノの主役」から「バンドの一員」に押し出した最初の本格的な試みだった、と今なら言える。
イントロで耳が最初に掴まれるのはピアノとリズムの噛み合いだ。ビートは弾むけれど、決してBPMを上げすぎない。速さで押し切らないから、歌の子音が沈まない。ここに小西遼のアレンジ設計の慎重さが出ている。象眠舎やCRCK/LCKSでの仕事を知っている耳なら、彼のアレンジが「派手だが余白を残す」タイプであることがわかる。ホーンは前に出るが、歌の帯域を潰さない。ドラムは跳ねるが、フィルで自己主張しない。歌が”跳ねる”というテーマを、演奏側は”支える”側に徹して成立させている。
A→Bメロの動線でも、コード進行は意外と一直線に上がらない。上下しながら、着地の直前で一瞬息を止めるような間がある。この間があるから、サビのフレーズが跳ねる高さを持てる。二年前は「ポップで気持ちいい曲」として受け取ったが、いま聴くと、”落下と反発”という曲名そのもののダイナミクスがアレンジのミクロな判断で作られている、と気づく。
2025年の2nd『DEAR MYSTERIES』では、収録曲「Lip Noise」など、TOMOOはさらに声の質感やノイズを積極的に前に出す方向へ踏み出した。逆算すると、「Super Ball」はその出発点だった、と言える。
キャリアの結節点としての『Super Ball』
この曲は、TOMOOのキャリアで三つの機能を果たしていた。順に書く。
ひとつめ。昨年9月にアルバム『TWO MOON』をリリースして以来、TOMOOが快進撃を続けているという2024年時点の受け止め方。この快進撃の起点として、リード曲「Super Ball」がラジオ・テレビ露出の面でも入り口の役割を持った。
ふたつめ。番組テーマソングとしての広がり。「ABEMA NEWS チャンネル」で平日21時より毎日生放送している夜帯のニュース番組『ABEMA Prime』の4月からの番組テーマソングにTOMOOの「Super Ball」が決定した。ニュース番組の顔になる、というのは意外な起用に見える。だが、この曲の”丸いまま跳ね返る”というテーマは、日々ざらついたニュースを受け止める側の姿勢と、思ったより相性が良い。二年経って、この起用のセンスは正しかったと思える。
みっつめ。2025年11月12日リリースのメジャー2ndアルバム『DEAR MYSTERIES』を経て、この曲は「代表曲」から「原点を示す曲」へと少しずつ役割を変えつつある。2ndには「Present」(GLOBAL WORKのCMソング)、ドラマ主題歌「エンドレス」、「コントラスト」などタイアップ曲が並び、TOMOOの領土は明らかに広がった。その広がりの真ん中に、なお「Super Ball」がある。だから今この曲を聴き直すと、”どこから来て、どこへ行きたい人なのか”の見取り図として機能する。
どう聴かれているか──「日常の跳ね返し」として
この曲は、朝の曲や夜の曲というよりは、「戻ってくる時間の曲」として機能している気がする。仕事帰りの電車、月曜の始業前、思うようにいかなかった一日の終わり。派手に励ますのではなく、ただ「跳ねる形状であり続けろ」と静かにフォームを整えてくれる曲、として設計されている。
『ABEMA Prime』のテーマ曲として毎日流れていた時期の記憶を持つリスナーには、たぶん”夜21時の曲”としての体感も残っている。ニュースの前後に鳴っていた、あの跳ね方。テーマ曲としての機能を離れた後も、この曲は生活の中で場所を選ばずに効く。派手さより持続性で残るタイプの曲だ、と二年経って改めて思う。
聴きどころ3点
聴きどころ3点
- イントロのピアノとリズムの噛み合い——最初の数小節で”落下と反発”の物理感覚を提示する設計。BPMを上げずに跳ねさせる判断がここに凝縮されている。
- サビ前の”間”——コードが上がりきる直前に一瞬息を置く箇所がある。この間があるからサビの高さが出る。ヘッドフォンで意識するとアレンジの緻密さがわかる。
- ボーカルの重心——TOMOOの声は華やかな編成の中でも決して浮かず、地に足の付いた低い重心をキープする。この曲の”丸いまま貫く”というテーマを、歌唱の物理特性そのものが体現している。
関連作・入門動線
まずこの作品から聴く
- TWO MOON — この曲を収録するメジャー1st
▶ Amazon / 楽天 で探す - DEAR MYSTERIES — 2025年発売のメジャー2nd
▶ Amazon / 楽天 で探す - Grapefruit Moon — バラード側の代表曲
▶ Amazon / 楽天 で探す - Present — TVCM起用のヒット曲
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入門動線
この曲から次に進むなら、まずは同じアルバム『TWO MOON』の中でTOMOOのバラード側の到達点を示す「Grapefruit Moon」。関ジャムでは蔦谷好位置が「Grapefruit Moon」が2位に挙げたことでも知られる。「Super Ball」の裏面として聴くと、TOMOOの振れ幅がまず掴める。
その次は2025年11月12日発売の2ndアルバム『DEAR MYSTERIES』へ。「Present」「エンドレス」「Lip Noise」など、この2年で彼女が広げた表現の幅をまとめて確認できる。「Super Ball」で提示された”丸いまま貫く”姿勢が、どんな形で更新されているか——ここまで辿ると、キャリアの筋が一本の線でつながる。
2023年当時の受容と、2025年の耳のズレ
ここが、この記事で一番書きたかった話だ。2023年9月にアルバム『TWO MOON』が出たとき、リスナーの反応は「明るくて気持ちいい」「フックが強い」に集中していた印象がある。それは間違っていない。だがその後の2024年、2025年と時間が流れていく中で、この曲の受け止められ方は静かに変わった。ラジオでヘビロテされ、テレビ番組のテーマ曲になり、ライブで代表曲として何度も鳴らされ、その積み重ねの中で「元気が出る曲」から「日々に伴走する曲」へと役割を変えていった。この変化は、曲自体は何も変わらないのに、聴き手側の使い方が変わることで起きる。良い曲というのは、こういう変わり方をする。
もうひとつ、当時見えづらかった補助線を引く。この曲は、TOMOOがメジャーで最初に「自分の書きたいことを、外の視点を意識しながら、それでも譲らずに書いた」曲だと思っている。メジャー1stのリードという座組みは、ふつうもう少し丸く分かりやすく作りたくなる場所だ。だが彼女は「丸いまま貫け」というメッセージそのものを、そこに置いた。メタな整合が取れているというより、これは覚悟の位置取りだ。二年経って、その位置取りは正解だったとわかる。以降の曲はここを土台に伸びている。
ライブでの機能──『Super Ball』の跳ね方が変わる場所
この曲がライブで持つ意味も、二年でずいぶん厚くなった。TOMOOは1月30日に東京・TOKYO DOME CITY HALLで開催した全国ツアー「TOMOO LIVE TOUR 2023-2024″TWO MOON”」最終公演で「Super Ball」を演奏し、その映像がのちに公開された。ツアー最終日、それも代表曲。この文脈で鳴らされたときの「Super Ball」は、音源の印象より少し粘度が高い。跳ね方に、二年分の重さがついている。
ライブ盤・映像作品としては『TOMOO LIVE BOX 2022-2024』が2025年5月にリリースされ、ここまでのライブ活動の総括が形になった。さらに2025年から2026年にかけては、TOMOO HALL TOUR 2025-2026「DEAR MYSTERIES」が全国10都市12公演規模で回っている。会場スケールが大きくなればなるほど、「Super Ball」のような跳ねる曲は、観客側との反射の面積を必要とする。ホール規模の空気の中で、この曲がどう鳴っているか。二年前の初期観客と、いまホールで初めて聴く観客では、たぶん受け取り方も違う。良い曲は、環境が変わっても機能を失わない。むしろ環境ごとに違う効き方を発明していく。
タイトルの選び方について──「Super Ball」という単語の効き
細かい話をひとつ。この曲のタイトルは、意味を読ませる前に、音の質感で情景を持ってくる。スーパーボール。子どもの頃、駄菓子屋の店頭でくじを引いて手に入れたあの、握ると硬いのにコンクリートに叩きつけると想定より高く跳ねる、あの小さな球。誰もが身体で知っている物体だ。この身体的な既視感を借りて、曲のテーマを一瞬で説明してしまう。タイトル選定のうまさ、と二年経ってから改めて思う。
比喩としてのスーパーボールには面白い性質がある。跳ねる方向は、ぶつけた地面の質によって変わる。硬い床では素直に跳ね上がるが、砂の上ではほとんど跳ねない。つまり、跳ねる主体そのものが強いのではなく、受ける環境と主体の相互作用で跳ねる高さが決まる。この曲が「一人で戦え」ではなく「丸いまま」と言うのは、そこに繋がっている気がする。硬さでも尖りでもなく、形状を保つことで、環境からのエネルギーを跳ね返す。応援歌としてのユニークさは、この物理感覚から来ている。
2ndアルバム『DEAR MYSTERIES』を経て見えたこと
結論として、この記事で一番置いておきたいのはここだ。2025年11月に届いた『DEAR MYSTERIES』を聴いた後で「Super Ball」に戻ると、明らかに景色が違って見える。2ndには、日常のちょっとした揺れや、人と人の間にある名づけがたい感情を、より繊細に描いた曲が並ぶ。「Lip Noise」のような声の生々しさを前面に出したトラックもある。TOMOOはこの2年で、明快なポップから、もう少し陰影のある領域へ足を伸ばした。
その到達点から「Super Ball」を振り返ると、この曲が「明快なポップ」の顔をしながら、実は同じ静かな観察眼で書かれていたことに気づく。明るさの奥に、書き手の醒めた目線がある。跳ねる曲だが、書き手は決して自分ごと跳ねてはいない。少し離れた場所から、跳ねている人を見守るように書いている。そこがこの曲の”大人っぽさ”の正体だと、いまなら言える。
だから、この曲を「TOMOOの入り口」として2025年以降に聴く人にも、この曲は古びない。むしろ、彼女の芯が一番くっきり出ている曲として、これからも入り口であり続けるはずだ。二年前は代表曲。二年後は原点。この移り変わりを見届けられるのは、リアルタイムでキャリアを追うファンの特権だと思う。
『関ジャム』1位という出来事の意味
もう一段掘る。『関ジャム 完全燃SHOW』でプロが選ぶ年間ベスト1位を獲るというのは、チャート順位とは違う種類の出来事だ。チャートは再生数と購買行動の集積で、そこには市場の慣性が乗る。年間ベストは、作り手側の耳が一票ずつ独立に投じる場所で、そこで一位を取るというのは、業界の内側で「今年、これを聴いた」と証言されることに近い。数字より遅く効くが、長く効く。
この一位の効き方は、二年経った今、はっきり形になっている。テーマ曲起用、ホールツアー規模の拡大、2ndアルバムのリリース、そして継続的な露出。「Super Ball」を起点にした信頼の連鎖がここにある。「関ジャム年間1位の曲」というタグは、SNSで曲を紹介するときの共通言語として機能し続けている。TOMOOのファンが新規リスナーに曲を勧めるとき、いまも最初の一手として選ばれるのはこの曲だ。
残された問い
最後に、聴き手側に開いておきたい論点をひとつ。「Super Ball」は応援歌なのか、それとも自己観察の曲なのか。跳ね返るのは他人に向けた励ましなのか、自分自身のフォームの確認なのか。ここは意見が分かれる。個人的には、後者の色合いの方が強い曲だと思っている。だからこそ、押し付けがましくならずに人の生活に居座れる。ただ、これは正解のある話ではない。二年前とは違う解釈で聴けるようになった、という一点だけがおそらく確かで、ここから先はそれぞれのリスナーの持ち場だ。

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