STARGLOW『Drivin’ My Life』アフロビーツ×BMSG流サマーチューンの構造

夕暮れの海沿いを走る車のヘッドライトと、宙を舞うようにきらめく星の粒子を抽象化したビジュアルイメージ 楽曲

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STARGLOWの3rdシングルDrivin’ My Life🛒楽天が、真夏のチャートに静かに、しかし確かな手触りで滑り込んできた。BE:FIRST、MAZZELに続くBMSG3組目のボーイズグループが、デビューから半年でここまでの温度差を出してくるのかと、正直少し驚いている。

夏を煽らないサマーソング。5人が選んだのは、汗を蒸発させる方ではなく、氷が溶ける速度に合わせて呼吸することだった。この一行が今回の記事で言いたいことのほぼ全部で、あとはその根拠を音のレイヤーとキャリアの文脈から辿っていく作業になる。

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この曲の要点

  • STARGLOWの3rdシングル表題曲。2026年7月20日先行配信、7月22日CDリリース。
  • トラックメイクはメキシコ出身・ロサンゼルス拠点のDJ/プロデューサーデュオANG。アフロポップ/アフロビーツとエレクトロニックを交差させたミニマルな構成。
  • プロデュースはSKY-HIとANG。ソングライティングにはSKY-HI、STARGLOW本人、Adanna Duru、Tony Ferrariら海外ライター陣がクレジット。
  • デビュー曲『Star Wish』がオリコン週間シングル1位(2/2付)、Billboard JAPAN Hot 100で3位(1/28公開)を記録した勢いを受けた3枚目。
  • カップリングには、RUI・TAIKI・KANONがトリプル主演したFODドラマ『ゲート・オン・ザ・ホライズン〜GOTH〜』主題歌「GOTH」のグループ版を収録。

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3枚目で「引き算」を選ぶ勇気

結論から書く。この曲がSTARGLOWのキャリアの中で持っている意味は、「音を足す」のではなく「音を減らす」ことを3枚目でやったこと。それに尽きる。

デビュー曲『Star Wish』は文字通り星に手を伸ばす祝祭的なアンセムで、2ndシングル『USOTSUKI』はダークで骨太なミドルテンポだった。ここまでの2曲は、良くも悪くも「BMSGの新人グループが名刺として掲げる音」の範疇にあったと思う。派手で、意思が強くて、勝ちに来ている音。それがデビュー3ヶ月足らずでオリコン週間デジタルシングル1位(4/13付)を獲るところまで届いた。STARGLOW公式サイトのクレジット表記からもその戦略の連続性は読み取れる。

ところが3枚目でANGを引っ張ってきて、アフロビーツとチルの側に舵を切った。これは冒険というより、たぶんもっと自覚的な設計だ。「勢いのあるうちに、静けさで殴れるグループだと証明しておく」——BMSGが過去にBE:FIRGTやMAZZELで通ってきた道を、STARGLOWは半年遅れで、少し違う入口から始めている。

個人的な話をすると、私は3rdシングルというタイミングを軽く見ていない。この位置で何を出したかで、そのグループが「勢いのグループ」で終わるか「アーティストとして5年10年続く器」なのかがだいたい見える。過去のいろんなグループを見てきて、そう思う。3枚目でスマッシュヒット狙いのアッパーを出す選択肢は当然あって、それでもこのミニマルなサマーチューンを選んだ判断は、地味だけど大人の判断だと感じる。

ANGのトラック——アフロビーツの「都市化」

音の話を具体的にする。今回のトラックを手掛けたのは、メキシコ出身でロサンゼルスを拠点に活躍するDJ/プロデューサーデュオのANG。日本のリスナーには馴染みの薄い名前かもしれないが、LAのラテン/グローバルポップ界隈では、アフロビーツとレゲトンとハウスの間を器用に行き来する作家として知られている。

『Drivin’ My Life』でANGがやっているのは、ざっくり言えばアフロビーツの「都市化」だ。ナイジェリアやガーナのアフロビーツはもっと湿度が高くて、パーカッションのレイヤーが厚い。この曲はそれをLA的にドライに整理して、日本の都市部の夏——具体的には湾岸のドライブとか、ルーフトップバーの17時とか、そういう景色にハマる湿度に調整している。アフロポップ/アフロビーツとエレクトロニックサウンドがシームレスに交差するトラックが、胸が高鳴るような爽やかさと、極上のチルアウトを演出している。楽曲は、彼らの等身大の価値観と、自分自身の意思で人生を楽しむことの大切さが込められた内容。

イントロを聴くと、まずベースがほぼ後ろに引っ込んでいることに気づく。低域を鳴らしすぎない。かわりに、たぶんログドラムに近い質感の弾力あるパーカッションが、拍の裏を軽く突いてくる。この裏拍の処理はナイジェリア系アフロビーツというよりサウスアフリカのアマピアノに近い呼吸で、そこにANGのラテン耳が乗ってる感じがする。

A→Bメロの繋ぎでもう一つ好きな瞬間がある。コード進行を大きく動かさず、パッド系の音色をふわっと一枚重ねるだけで景色を変えている。転調で無理に感情を持ち上げないのは、この曲の思想として一貫している。夏を煽る音楽は世の中に溢れていて、STARGLOWがここでやったのはその逆張り。5人でいれば、そこがパーティー——というMVのコンセプト「5人でいれば、そこがパーティー」が音楽的な設計にも透けている。

SKY-HIとSTARGLOW本人がクレジットに並ぶ意味

ソングライティングのクレジットを見ると、地味に重要なことが書いてある。作詞作曲はAdanna Duru・Ale Alberti・Arturo Kahan・Gabriel Haber Ellstein・SKY-HI・STARGLOW・Tony Ferrariの連名。編曲がANG、プロデュースがSKY-HIとANG。

ここで見逃したくないのは「STARGLOW」名義でメンバー本人がライティングに入っていること。3枚目で早くも制作に関与し始めているのは、BMSGのアーティスト育成のスタイルとしてはある意味定石で、BE:FIRSTも初期からメンバーがクレジットに入ってきた。ただ、それを海外のライター陣(Adanna DuruもTony Ferrariもグローバルポップの現場で名前を見る作家だ)と一緒のテーブルでやっているのが、この座組の面白いところ。

そう。日本のグループが海外ライターと組む例はもう珍しくない。ただ多くは「サビだけ日本人が書き直す」とか「トップライナーを海外に外注する」といった、切り分けた協業になりがちだ。今回のクレジットは、7人(うち1人はグループ名義だが実質は5人)がフラットに並んでいて、これはトップダウンではなくラウンド型のセッションで作られたことをうかがわせる。SKY-HIが同席する制作会議で、19〜20歳のメンバーが英語混じりでアイデアを出している——そういう景色が浮かぶ。

ちなみに、BMSGはSKY-HIこと日髙光啓が2020年に設立した会社で、ラッパーで、プロデューサー、経営者という多彩な顔を持ち、音楽業界内でも唯一無二の存在でシーンを牽引しているSKY-HIと、話題のオーディションプロジェクト「THE LAST PIECE」より、SKY-HIがCEOを務める音楽事務所BMSGの第3のボーイズグループとして誕生したSTARGLOWという関係になる。この文脈を踏まえると、3rdでこの音を出してきた意味は一段深く読める。

「大切な人と過ごす今」というテーマ設計

歌詞そのものは引用しないが、テーマとして公式が繰り返し語っているのは、大切な人と過ごす”今”を気楽に楽しみ、自分らしく進んでいけばいいというメッセージを乗せた、ミニマルで爽快なサウンドのサマーチューンという位置づけだ。

この「今を楽しむ」というテーマ、正直、Jポップの夏曲としてはど真ん中すぎて、下手をすれば陳腐化する。ただこの曲がそこに落ちていないのは、音のミニマルさが歌詞のテーマと同じ方向を向いているから。派手な音で「今を楽しめ!」と煽らず、控えめな音数で「別に今のままでいい」と言う。歌詞とサウンドが同じ体温で握手している。

これ、たぶんZ世代以下のリスナーの空気感にすごく合ってる。前のめりに肯定される歌より、そばで静かに横並びになってくれる歌の方が刺さる時代。同じ夏に他アーティストから出ているサマーソング群と並べて聴くと、STARGLOWの温度の低さが逆に耳に残る。

聴きどころ3点

  • 低域の設計——キック&ベースを敢えて控えめに置き、パーカッションで前に出す。カーステで聴いたとき、ドンドンではなくコロコロ弾む感触になる。夏の車内BGMとしてのチューニングが徹底されている。
  • 5人のボーカル配置——低音のADAM、抜けの良いRUIとTAIKI、KANONの少しかすれたトーン、GOICHIのリズム感。この曲では誰かが目立ちすぎず、パスワークのように繋いでいく。ソロで殴らない設計。
  • フェードしない終わり方——サマーソングにありがちなフェードアウトで曖昧に終わらせない構成。パーティーの終わりを引き伸ばさない潔さがあり、これがミニマル設計の思想を最後まで貫いている。

チャートとキャリアの現在地

キャリアの数字を整理しておく。今年1月リリースのデビューシングル『Star Wish』が、オリコン週間シングルランキング1位(2/2付)、Billboard JAPAN Hot 100 3位(1/28公開)を記録。続く4月リリースの2ndシングル『USOTSUKI』でもオリコン週間デジタルシングル1位(4/13付)という数字を並べている。

デビュー半年で1st、2nd、3rd。ハイペースだ。ただ、今回のようなミニマルな曲を3枚目で出せるのは、逆に言うと1st・2ndで作り上げたポジションに余裕があるからで、この曲単体のチャート成績を短期で評価するのは筋が悪いと思っている。むしろ「夏の3ヶ月でロングテールにどれだけ滞留するか」の方がこの曲の真価に近い。真夏のドライブプレイリストに定着するかどうか。

あともう一つ。今回のシングルにはFODドラマ『ゲート・オン・ザ・ホライズン〜GOTH〜』主題歌「GOTH」のSTARGLOW版が収録されている。これは24年にRUI・TAIKI・KANONがトリプル主演を務めたFODオリジナルドラマ『ゲート・オン・ザ・ホライズン~GOTH~』主題歌で、当時はまだSTARGLOWとしてデビュー前の楽曲。今回それを5人版に再構築して収録したというのは、グループ以前の履歴をきちんと引き取っていく姿勢の表明でもあって、ちょっと好きな作法だ。

MVとダンス、そして「自然体」の解像度

MVについても短く触れる。本日公開されたMVのコンセプトは、「5人でいれば、そこがパーティー」。ティザー映像から続く本映像は、事前のニセ企画「1カットホームパーティーMV」を信じ込んでいた5人への、「カプセルトイで出たプランでMVを制作する」という仕掛けが施された。

ドッキリの構造を借りているのは、要は「作り込んだ様式美より、素の5人のケミストリーを見せた方がこの曲は伝わる」という判断だと思う。同じ日にはダンスパフォーマンス映像も公開されていて、パフォーマンス映像では、コレオグラファーRyusei haradaが手がけたチルな世界観が際立つ振付を見ることができる。またパフォーマンスの随所に、メンバーの自然体のコミュニケーションがちりばめられている。

ここで一つだけ引っかかるのは、「自然体」というワードの扱い。アイドル/ボーイズグループの文脈で「自然体」は諸刃で、雑さの言い訳になりやすい。ただ今回のダンスは、振付の設計として音数の少ないトラックに合わせて「動きも減らす」ことをやっている。減らして残ったジェスチャーだから自然に見える——という順序で、これはむしろすごく計算されている。

この曲が投げかけている論点

最後に、ファンの間で解釈が分かれそうな論点をひとつ置いておく。

『Drivin’ My Life』は、STARGLOWにとって「グループの色」なのか、それとも「夏に一度だけやったスピンオフ」なのか。この判断は今の時点では誰にも下せない。次のシングル、来年のアルバムでこの温度を残すのか、また『Star Wish』側の華やかさに戻るのか。私はどちらでも正解になると思っている。ただ、リスナーとして期待しているのは、この曲で見せた「引き算する勇気」を、勝ってる時期にどこまで持ち続けられるか、という点。

数字で殴れるフェーズにいるグループが、静かな音を選ぶ。そこにどれだけの意味があるかは、たぶん3年後にわかる。

アフロビーツが日本の夏に接続する瞬間

もう少しANGのトラックの話を続ける。この曲を音楽ジャンルの地図の上に置くと、意外な位置に立つ。

2020年代前半のグローバルヒットチャートは、レゲトンとアフロビーツが完全に主流になった。BadBunnyやRosalía、Burna Boyといった名前が英語圏のトップ10に常駐する時代。日本のJポップは長らくその波と距離を保ってきて、K-POPが先にアフロビーツ寄りの音を取り込んでいた印象がある。

『Drivin’ My Life』が面白いのは、そのグローバル文脈を「BMSG経由・SKY-HI編集」で日本に降ろしたときの手触りの独自さだ。ラテンの色気を薄め、アフロビーツの粘り気を減らし、代わりにJポップ的な語感の気持ちよさを残す。この配合は他のプロデューサーには真似しづらいと思う。SKY-HIがヒップホップ/R&B畑を歩いてきた作家性と、ANGのラテン耳、そこにSTARGLOWの均質じゃない5声——3層のフィルターを通した結果、他のどこにも似ていない夏の音が出た。

個人的な話をひとつ。この曲を初めて夜中の首都高で流したとき、湾岸線を大井から東京港トンネルを抜けるくだりで、車内の空気の湿度がすっと下がった感覚があった。エアコンの話じゃない。音のBPMと車の巡航速度が噛んで、外の景色の流速と一致する。そういう曲、なかなかない。ミニマルなトラックが車内という半密閉の音場でだけ本領を出す設計になっていて、これはたぶんANGがLAの車社会で音楽を作ってきた身体感覚とも無関係じゃないはず。

THE LAST PIECEから半年で見えたもの

グループの成り立ちにも触れておく。STARGLOWは、2025年にBMSG主催のオーディションプログラム「THE LAST PIECE」を通じて結成された日本の5人組ダンス&ボーカルグループ。SKY-HIが設立した会社BMSGが主催した。プレデビュー曲「Moonchaser」を経て、2026年1月にデビュー。

RUI(18)・TAIKI(18)・KANON(20)・GOICHI(19)・ADAM(20)の5人で構成されている。平均年齢は10代後半で、いまのボーイズグループとしては若い部類。若さゆえの荒っぽさが売りになりがちだが、STARGLOWのデビュー以降を追っていて感じるのは、ボーカルトレーニングと英語対応の徹底ぶり。海外ライターとの共作を3枚目でここまで自然にやれているのは、BMSGの育成プロセスに具体的な仕込みがあってのことだ。

THE LAST PIECEのテーマ曲「At The Last」から数えると、STARGLOWの音楽的な旅はまだ1年ちょっと。この短さで、パワーバラード側の『Star Wish』、ダーク側の『USOTSUKI』、チル側の『Drivin’ My Life』と三方に矢を放った。表現の引き出しが早い段階で開いているのは、単純にリスナーとして安心できる材料になる。

まあ、そういうこと。3枚のシングルで見せた振れ幅は、次の1年で「ぶれ」ではなく「幅」だったと証明されるフェーズに入る。この夏の『Drivin’ My Life』は、その証明の第一歩として置かれた曲だ。

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入門動線

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この夏、車のスピーカーから流し続けるサマーソングとして、あるいは日が落ちた後のベランダで缶を開ける時のBGMとして——『Drivin’ My Life』は、たぶん誰の生活にも角度を合わせて滑り込んでくる。急がず、煽らず、それでも前に進んでいる。そういう曲だ。

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