1990年3月18日放送の J-WAVE「TOKIO HOT 100」を振り返る回顧コラムです。当時のチャート上位曲を手がかりに、その週の音楽シーンを読み解きます。
本サイトは非公式のファンサイトです。チャートデータの出典:J-WAVE「TOKIO HOT 100」(1990年3月18日放送回)。
この週の音楽シーン
1990年3月18日放送の「TOKIO HOT 100」を振り返ると、1位に輝いたのはジャネット・ジャクソンの「ESCAPADE」だった。前年発表のアルバム『Rhythm Nation 1804』からのシングルで、社会的なメッセージ性を強く打ち出した作品群の中にあって、このナンバーは開放感あふれるダンスチューンとして異彩を放っていた。ジミー・ジャムとテリー・ルイスによるプロダクションは相変わらず切れ味鋭く、シンセサイザーとパーカッシブなビートが絡み合うサウンドは、80年代後半から90年代初頭にかけてのブラックミュージックがポップスの主流へと躍り出ていく流れを象徴していたように思う。歌詞のテーマである「日常からの逃避」というポジティブな響きも、当時の空気にどこか合致していたのではないだろうか。
TOP10全体を眺めると、この週はまさに90年代開幕期のポップ・シーンの縮図のようなラインナップだ。2位にはリチャード・マークスの「TOO LATE TO SAY GOODBYE」がランクイン。ロック的な骨格を持ちながらもメロディアスで聴きやすい、いわゆるAORとアリーナロックの中間のような立ち位置は、当時のアメリカン・ポップスの一つの型を体現していた。3位のベイシアは、ジャズ、ボサノヴァ、ソウルを軽やかに融合させたスタイルで独自の地位を築いていたシンガーで、こうした洗練された大人のポップスがヒットチャート上位に食い込んでくるあたりに、当時のリスナー層の幅の広さがうかがえる。
4位のフィル・コリンズ、8位のダイアナ・ロスといったベテラン勢の存在感も見逃せない。彼らは70年代から活躍し続けてきたアーティストでありながら、90年代に入ってもなお第一線でヒットを飛ばしていた。世代を超えて支持されるメロディメイカーの強さを感じさせるランクインだ。一方で5位のポーラ・アブドゥル、6位のロクセット、9位のミリ・ヴァニリといった顔ぶれは、まさに80年代末から90年代初頭にかけてのMTV世代のポップ・アイコンたち。ダンサブルでキャッチー、かつビジュアル面でも強い印象を残す楽曲が並び、音楽がラジオだけでなく映像とセットで消費される時代への移行を感じさせる。
7位のテクノトロニックはユーロダンス、ハウスミュージックの潮流をアメリカのチャートに持ち込んだ存在として象徴的だ。ヨーロッパ発のクラブサウンドがラジオのポップチャートにも浸透し始めていたことが、この一曲からも読み取れる。そして10位のマイケル・ペンは、シンガーソングライター的な内省性を持つロックンロールで、量産型のダンスポップとは一線を画す個性を放っていた。
こうして並べてみると、この週のTOP10はダンス、ロック、AOR、ユーロビート、シンガーソングライター系と実に多彩なジャンルが共存しており、単一の潮流に収斂しない90年代初頭ならではの多様性を映し出している。ジャネット・ジャクソンの「ESCAPADE」が1位に君臨していたこの週は、まさに時代の転換点を象徴する一枚のスナップショットだったといえるだろう。
1990年3月18日付 TOP10(出典:J-WAVE TOKIO HOT 100)
- 1位 ESCAPADE — JANET JACKSON ▶ YouTube Music / Spotify / 🛒 Amazonで探す / 🛒 楽天で探す
- 2位 TOO LATE TO SAY GOODBYE — RICHARD MARX ▶ YouTube Music / Spotify / 🛒 Amazonで探す / 🛒 楽天で探す
- 3位 BABY YOU’RE MINE — BASIA ▶ YouTube Music / Spotify / 🛒 Amazonで探す / 🛒 楽天で探す
- 4位 I WISH IT WOULD RAIN DOWN — PHIL COLLINS ▶ YouTube Music / Spotify / 🛒 Amazonで探す / 🛒 楽天で探す
- 5位 OPPOSITES ATTRACT — PAULA ABDUL ▶ YouTube Music / Spotify / 🛒 Amazonで探す / 🛒 楽天で探す
- 6位 DANGEROUS — ROXETTE ▶ YouTube Music / Spotify / 🛒 Amazonで探す / 🛒 楽天で探す
- 7位 GET UP(BEFORE THE NIGHT IS OVER) — TECHNOTORONIC ▶ YouTube Music / Spotify / 🛒 Amazonで探す / 🛒 楽天で探す
- 8位 IF WE HOLD ON TOGETHER — DIANA ROSS ▶ YouTube Music / Spotify / 🛒 Amazonで探す / 🛒 楽天で探す
- 9位 ALL OR NOTHING — MILLI VANILLI ▶ YouTube Music / Spotify / 🛒 Amazonで探す / 🛒 楽天で探す
- 10位 NO MYTH — MICHAEL PENN ▶ YouTube Music / Spotify / 🛒 Amazonで探す / 🛒 楽天で探す


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