1998年9月13日放送の J-WAVE「TOKIO HOT 100」を振り返る回顧コラムです。当時のチャート上位曲を手がかりに、その週の音楽シーンを読み解きます。
本サイトは非公式のファンサイトです。チャートデータの出典:J-WAVE「TOKIO HOT 100」(1998年9月13日放送回)。
この週の音楽シーン
1998年9月13日の「TOKIO HOT 100」で1位に輝いたのは、ローリン・ヒルの「DOO WOP(THAT THING)」だった。フージーズの一員として世界的な成功を収めた彼女が、満を持して発表したソロ・アルバム「The Miseducation of Lauryn Hill」からのリード・シングルであり、この曲がその年のR&B/ヒップホップ・シーンにおける象徴的な存在になったことは、今振り返っても疑いようがない。ラップとソウルフルな歌唱を自在に往還するスタイルは、当時のアーバン・ミュージックが持っていた懐の深さそのものを体現していたように思う。同じ週のチャートでは6位にも彼女の名前があり、フォー・シーズンズで知られるスタンダード曲「CAN’T TAKE MY EYES OFF OF YOU」を取り上げている。1枚のアルバムから複数の曲が同時にチャートインするというのは、当時のリスナーの支持の厚さを物語っている。
このトップ10全体を眺めると、1990年代後半という時代の空気が色濃く漂ってくる。2位のエイス・オブ・ベイスは北欧発のポップ・グループとしてグローバルなヒットを飛ばし続けていた存在で、3位のデズリーは「Life」というタイトルの曲で存在感を示している。4位のシェリル・クロウ、5位のデベラ・モーガン、7位のナタリー・マーチャントといった顔ぶれは、ロックとR&B、シンガーソングライター的な表現が並列して支持されていた当時のアメリカン・ミュージック・シーンの多様性を感じさせる。8位のシルヴァー・サンのようなブリットポップ勢がその中に混ざっているのも、当時の洋楽チャートらしい風景だ。
そして注目すべきは、9位にMISIA、10位に古内東子という日本人アーティストが並んでいる点だろう。「TOKIO HOT 100」は洋楽・邦楽の枠を取り払い、東京のリスナーが実際に聴いている音楽をフラットに並べる番組コンセプトを持っていたが、この週のランキングはまさにそれを体現している。MISIAはデビューして間もない時期であり、圧倒的な歌唱力を武器に日本のR&Bシーンに新しい風を吹き込みつつあった。古内東子もまた、equal(イコール)という独自の音楽性で女性リスナーから強い支持を得ていたシンガーソングライターであり、洋楽の一級品と肩を並べる形でチャートインしていることが、当時の東京の音楽リスナーの耳の確かさを示している。
1998年という年は、ヒップホップがポップ・ミュージックの中心へとさらに深く浸透していった時期であり、ローリン・ヒルの躍進はその流れを象徴する出来事だった。彼女がソロとして提示した音楽は、ラップ、ソウル、レゲエ、ゴスペルといった要素を横断しながらも、決してジャンルの寄せ集めには終わらない一貫した個性を持っていた。「DOO WOP(THAT THING)」というタイトルからも窺えるように、ドゥーワップという古いR&Bのスタイルへのオマージュを込めながら、当時のヒップホップ・サウンドとして鳴らしてみせた手腕は、多くのミュージシャンやリスナーに衝撃を与えたはずだ。この曲がトップに立ったこの週のチャートは、洋楽の最先端と日本のシンガーたちの表現が同じ土俵で鳴っていた、東京という都市ならではのラジオの聴き方を今に伝えてくれる貴重な記録だと言えるだろう。
1998年9月13日付 TOP10(出典:J-WAVE TOKIO HOT 100)
- 1位 DOO WOP — LAURYN HILL ▶ YouTube Music / Spotify / 🛒 Amazonで探す / 🛒 楽天で探す
- 2位 LIFE IS A FLOWER — ACE OF BASE ▶ YouTube Music / Spotify / 🛒 Amazonで探す / 🛒 楽天で探す
- 3位 LIFE — DES’REE ▶ YouTube Music / Spotify / 🛒 Amazonで探す / 🛒 楽天で探す
- 4位 MY FAVORITE MISTAKE — SHERYL CROW ▶ YouTube Music / Spotify / 🛒 Amazonで探す / 🛒 楽天で探す
- 5位 I LOVE YOU — DEBELAH MORGAN ▶ YouTube Music / Spotify / 🛒 Amazonで探す / 🛒 楽天で探す
- 6位 CAN’T TAKE MY EYES OFF OF YOU — LAURYN HILL ▶ YouTube Music / Spotify / 🛒 Amazonで探す / 🛒 楽天で探す
- 7位 KIND AND GENEROUS — NATALIE MERCHANT ▶ YouTube Music / Spotify / 🛒 Amazonで探す / 🛒 楽天で探す
- 8位 TOO MUCH,TOO LITTLE,TOO LATE — SILVER SUN ▶ YouTube Music / Spotify / 🛒 Amazonで探す / 🛒 楽天で探す
- 9位 陽のあたる場所 — MISIA ▶ YouTube Music / Spotify / 🛒 Amazonで探す / 🛒 楽天で探す
- 10位 心にしまいましょう — 古内 東子 ▶ YouTube Music / Spotify / 🛒 Amazonで探す / 🛒 楽天で探す


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