ローリング・ストーンズ”Jealous Lover” ウィンウッド参加が示す1970年代の再翻訳

夜のバーカウンターに置かれたローズ・ピアノとエレキ・ギターのシルエット、暖色の光が漏れる抽象的な音楽イメージ 楽曲

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ローリング・ストーンズが2026年6月25日にリリースした新曲Jealous Lover🛒楽天は、7月10日発売のスタジオ・アルバムForeign Tongues🛒楽天からの先行シングルにあたる。ミック・ジャガーがファルセットで歌い、スティーヴ・ウィンウッドがフェンダー・ローズとオルガンで参加した一曲。プロデュースは前作から続投のアンドリュー・ワット。60年以上のキャリアを持つバンドが、いまだに”新譜のリード曲”として通用する球を投げてくる。この事実そのものが、この曲を語る出発点になる。

ストーンズの新譜は、たいてい懐古で語られてきた。今回は少し違う。ストーンズが過去に戻ったのではなく、過去がストーンズを追い越さなかっただけだ。この一文が、Jealous Loverを聴いたあとに残るものの正体だと思う。

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この曲の要点

  • ローリング・ストーンズの新曲「Jealous Lover」は2026年6月25日にリリースされた先行シングル。
  • アルバム『Foreign Tongues』(2026年7月10日、Polydor/Capitol)からの2枚目のシングルにあたる。
  • スティーヴ・ウィンウッドがフェンダー・ローズとオルガンで参加。プロデュースはアンドリュー・ワット。
  • ミュージックビデオはクリス・バレット&ルーク・テイラーが監督。アニヤ・テイラー=ジョイとチャールズ・メルトンが出演。
  • ミック・ジャガーは楽曲全体をファルセットのリード・ヴォーカルで歌い切っている。

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曲の基本情報:2026年夏の”新譜からの一曲”として

Jealous Loverは、スタジオ・アルバムからの2枚目のシングル。シングルは、7月10日にCapitol Recordsから発売される予定のスタジオ・アルバム『Foreign Tongues』から公開された最新曲という位置づけだ。1枚目の「In the Stars」/「Rough and Twisted」が5月に切られ、そこから約7週間後の投下。アルバムの全貌に近づく段階での”顔となる曲”、と受け取っていい。

アルバムはロンドンのメトロポリス・スタジオで、プロデューサーのアンドリュー・ワットとともに1ヶ月足らずでレコーディングされた。この短さは効いている。2023年の『Hackney Diamonds』でも、ワットは短期集中の作り方を持ち込んだ人物だった。60代・70代・80代のプレイヤーが、若手プロデューサーの熱量で追い立てられるように録る。この構図が、Jealous Loverの”軽く弾む”感触にも直結している。

参加ミュージシャンの布陣も明快だ。「Jealous Lover」にはスティーヴ・ウィンウッドが参加し、ローズとオルガンを弾いている。曲ではミック・ジャガーがファルセットのリード・ヴォーカルを取り、キース・リチャーズとロニー・ウッドがエレキ・ギター、ダリル・ジョーンズがベース、スティーヴ・ジョーダンがドラムを担当。ワット自身もアコースティック・ギターとピアノで加わっている。チャーリー・ワッツ亡き後のリズム・セクションを、ジョーダンとジョーンズがきっちり支える。この編成、実はけっこう地味な意味を持っている。

サウンドの読みどころ:ソウルとR&Bに寄せた”軽さ”

まず耳を惹くのはグルーヴの質感だ。ロックンロールの直線的なノリではなく、少し腰を落とした跳ね方。ローリング・ストーンズは、来る7月10日のアルバム『Foreign Tongues』から「Jealous Lover」と題した新曲をリリースし、ソウルフルなR&Bのグルーヴと魅力的なファルセットのリード・ヴォーカルを聴かせている。R&Bの器にストーンズを注いだ、というより、ストーンズが元々もっていた”1970年代の黒っぽさ”を、いま2026年の音像で取り出したような感じ。

イントロで鳴るローズの粒立ちに耳を澄ますといい。ウィンウッドはルーツ色の強いローズ・ピアノとオルガンをフィーチャーされており、続く『Foreign Tongues』全体にわたって参加することになった。エレピの音色はドライではなく、少し湿気を含んだトレモロがかかっている。オルガンは背後で厚みを作りつつ、サビでは前に出てくる。ここが効いている。ロックのアンサンブルで鍵盤が”リズム楽器の一員”として鳴る瞬間、ストーンズはいつも化ける。

キースとロニーのギター・ワークも聴きどころ。キース・リチャーズとロニー・ウッドによる表情豊かなギター・ワークが曲を推進し、その繊細な絡み合いがドライブ感を生む。二人のギターがユニゾンではなく、掛け合いになっている場面がいくつかある。片方がコードの背骨を作り、もう片方が半歩後ろから合いの手を入れる。この”間”は、若いバンドが真似しても出ない類のもの。

そしてジャガーのファルセット。齢80を過ぎたヴォーカリストがファルセットをリードに据える判断は、ふつうに考えれば無謀に近い。無理してる感じがしない。裏声を”武器として使い切る”のではなく、”曲の温度として置いておく”感覚に近い。若い頃の「Emotional Rescue」(1980年)のファルセットが挑発的だったのに対し、Jealous Loverの裏声は淡い。この対比は、聴き比べる価値がある。

ウィンウッド参加の意味:ニッキー・ホプキンスへの間接的な返答

結論を先に書く。この曲でのウィンウッド起用は、単なる豪華ゲストではなく、ストーンズが自分たちの1970年代を”埋め直す”ための人選だ。

ウィンウッド本人がそう語っている。ウィンウッドは、「Jealous Lover」での自分の演奏がニッキー・ホプキンスと共にあったストーンズのクラシック期のサウンドを想起させると語った。わずか50歳で早世したホプキンスは、1967年の『Their Satanic Majesties Request』から1981年の『Tattoo You』まで、ストーンズの一連のアルバムに参加していた。ホプキンスは正式メンバーではない。でも「She’s a Rainbow」の跳ねるピアノ、「Loving Cup」の主旋律を導くフレーズ、あの音がないとストーンズの何割かは成立しない。1994年、50歳で亡くなった。以後、あの椅子は空いたままだった。

そこにウィンウッドが座る。「ニッキー・ホプキンスと私は、ある意味で似た道を歩んでいた」とウィンウッドはUncut誌に語った。トラフィックのウィンウッドとストーンズは同時代の英国ロック・シーンを共有しつつ、これまで正面から組む機会が少なかった。彼は2023年の前作『Hackney Diamonds』でのコラボレーションの機会を逃した後、『Foreign Tongues』全体にわたって参加することになった。前作で叶わなかった座組みが、次のアルバムで一気に開花した格好。

ここが個人的に一番グッときた部分でもある。ストーンズは自分たちのクラシック期を”神格化”することもできた。逆に”忘れたふり”もできた。彼らが選んだのは、当時の音の質感を知っている同世代のミュージシャンを呼び、鍵盤の椅子を静かに埋め直すことだった。ノスタルジーではなく、補修。ここに彼らの現役性がある。

ミュージックビデオと制作陣:短編映画のような画作り

MVも語っておく価値がある。2026年6月25日、ローリング・ストーンズは新曲「Jealous Lover」を、レディオヘッドやジャック・ホワイトを手がけたクリス・バレット&ルーク・テイラー監督によるMVとともにリリースした。MVにはアニヤ・テイラー=ジョイとチャールズ・メルトンが出演している。バレット&テイラーは、レディオヘッドの近年の映像を担当してきた監督コンビ。バンドのメンバーがほとんど映らない、短編映画型のMVに寄せてきた。

テイラー=ジョイは『クイーンズ・ギャンビット』『マッドマックス:フュリオサ』のあの人。メルトンは『メイ・ディセンバー』(2023)でゴールデングローブにノミネートされた俳優。二人の起用は、この曲のテーマ——嫉妬という感情の、演技可能な範囲——を映像で受け止めるための人選。ストーンズが自分たちを映さないMVを選ぶこと自体、いまの彼らのスタンスを示している。80代のロックンローラーが画面に映ることではなく、曲そのものが呼び起こす感情に焦点を絞る。

プロデューサーのアンドリュー・ワットにも触れたい。オジー・オズボーン、ポスト・マローン、イギー・ポップ、ペール・ウェイヴス。ジャンルを横断して仕事を積んできた1990年生まれのプロデューサーが、ストーンズの2作を連続で任されている。アルバムは1ヶ月足らずでレコーディングされたと本人が語る作り方は、ワットの短距離走的なプロデュースを反映している。ダラダラ録らない。この判断が、Jealous Loverの重すぎない音像に効いている。

キャリアの中での位置づけ:25作目のスタジオ・アルバムから

Foreign Tonguesは、ローリング・ストーンズにとって25作目にあたる、来るスタジオ・アルバム。25枚目という数字は、シンプルに凄まじい。1964年のデビューから数えて62年間で25枚。単純平均で2〜3年に1枚のペース。晩年になっても間隔が延びていない。

前作『Hackney Diamonds』(2023)は、彼らにとって”18年ぶりのオリジナル新曲集”だった。『Hackney Diamonds』はストーンズが久しぶりに新譜を出した2023年のアルバムであり、ミック・ジャガーはそれが彼らの最終リリースになると予想していた。その最終リリースの想定を、Foreign Tonguesは超えていく。ジャガー自身が”次はない”と思っていた作品の、その先が今こうして出ている。この文脈を踏まえて聴くと、Jealous Loverの軽やかさは意味を変える。終わりを覚悟したあとの、余禄としての一曲、ではない。むしろその逆で、”まだ次を作る前提で書かれた曲”の腰の据わり方をしている。

アルバムには他にもゲストが並ぶ。レコードには特別ゲストとして、スティーヴ・ウィンウッド、ポール・マッカートニー、ザ・キュアーのロバート・スミス、レッド・ホット・チリ・ペッパーズのチャド・スミスらが参加している。ストーンズと同世代・下世代の英国/米国ロックの主要人物が集められている。Jealous Loverはそのなかで、ウィンウッド枠の一曲、という見取り図で捉えるとわかりやすい。

いま聴かれる理由:60年選手が”新曲”で通用する不思議

ストーンズの新曲は、常に”若い人にも届くか”という問いを引き受けてきた。答えは毎回微妙に違う。今回のJealous Loverは、そこそこ届く球だと思う。理由は3つある。

ひとつ、テンポ設定。派手なロックンロールに寄せていない。ミッドテンポのソウル寄りグルーヴは、2020年代のR&Bリバイバル(シルク・ソニックやレオン・ブリッジス以降の潮流)と地続きに聴ける。ふたつ、ヴォーカルの温度。ファルセットで押しすぎないジャガーの歌は、ハイテンションなロック・ヴォーカルよりも、いまの耳に馴染む音量域にある。みっつ、プロダクションの現代性。ワットの手癖で、低域はぼんやりさせず、ハイハットの粒が近い。この処理はSpotifyのラウドネス基準にも馴染む。

ただ、いちばん本質的なのは、彼らが”自分たちの過去を上手に自己引用している”点だと思う。1970年代のブラック・ミュージック寄りのストーンズ——『Sticky Fingers』の「I Got the Blues」、『Exile on Main St.』の「Loving Cup」、『Some Girls』の「Beast of Burden」あたりの系譜——を、いまの機材といまのメンバーで撚り直している。ノスタルジーではなく、翻訳。この作業を諦めないバンドが、25枚目まで走れた理由なのだと思う。

聴きどころ3点

  • ウィンウッドのローズとオルガン:イントロの湿った電子ピアノの粒と、サビで前に出てくるオルガンの厚み。ニッキー・ホプキンスが不在になった椅子を、同世代のプレイヤーが埋める瞬間。
  • ジャガーのファルセット:裏声を”武器”ではなく”温度”として使う歌唱。「Emotional Rescue」の攻めた裏声との対比で聴くと、80代の歌手が到達したフレーズ処理が見えてくる。
  • キース&ロニーの掛け合い:ユニゾンではなく、半歩ずらして絡む二本のギター。この”間”がストーンズの正体で、他のバンドが最も真似できない部分。

入門動線

Jealous Loverが刺さった人には、まず同じアルバムからの先行シングル「In the Stars」を薦めたい。Foreign Tonguesの二つの表情を並べて聴ける。そこから遡るなら、前作『Hackney Diamonds』(2023)を一枚通しで。同じアンドリュー・ワット・プロデュース、同じ短期集中の熱量が、二作でどう連続しているかを確認できる。さらに深く潜るなら、1972年の『Exile on Main St.』のうちニッキー・ホプキンスがピアノを弾く曲——「Loving Cup」「Torn and Frayed」——を聴いてほしい。Jealous Loverのウィンウッドの鍵盤が、なぜ”あの椅子”を意識した音になっているかがわかる。

チャートと配信での動き:まだ本作は序盤戦

Jealous Loverはアルバム発売前の先行シングルで、まだチャートの本格的な数字が固まるフェーズではない。アルバム発売は2026年7月10日、Polydor/Capitolから。ローリング・ストーンズは新譜のトラックリストをさまざまな外国語で公開した。彼らは25作目のスタジオ・アルバムを7月に発売するという、少しユーモアの効いたプロモーションも展開している。アルバム・タイトルの”Foreign Tongues”(外国の言葉)と掛けた仕掛けだ。

詳細なチャート順位・売上・再生数の推移は、公式発表と各国のチャート機関の情報を参照してほしい。ここで書きたいのは順位ではなく、この曲が”新譜のリード曲として通用する”事実そのもの。ストーンズがヒット・チャートで勝負するバンドかと言われれば、もう厳密には違う。それでも新曲がリリースされるたび、世界中の音楽メディアが速報を打ち、映像作家が短編を撮り、俳優が出演する。60年選手の周りに、いまだにこの規模の”事件性”が発生する。Jealous Loverは、その事件のうちの一件として記録される。

ファンに残る問い:この曲を10年後どう聴くか

最後に、答えを閉じずに残しておきたい問いを一つ。Jealous Loverは、10年後にストーンズのカタログのどこに収まる曲だろうか。「Beast of Burden」や「Miss You」のような定番曲の隣に並ぶのか、それとも後期の佳作として静かに聴き継がれるのか。この判断はいますぐには下せない。

ヒントは、この曲が”最後のジャガーの新曲”にならないと仮定して聴けるかどうか、にある気がする。もし彼らが本当にこの後も新譜を作るなら、Jealous Loverは通過点の一曲として軽く聴ける。もし本当にこれが晩期の重要作の一つになるなら、ウィンウッド起用の意味も、ファルセットの選択も、あとから重みを増して聴こえてくるはず。答えはリスナー一人ひとりが、これから何年もかけて出していく。ストーンズがまだ次を作る前提で音を鳴らしている以上、こちらも次を待つ前提で聴いていていい。それでいいんじゃないかと思ってます。

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  • Foreign Tongues — 本曲収録の2026年新作
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  • Hackney Diamonds — 同プロデューサー前作
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  • Exile on Main St. — ホプキンス期の到達点
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  • Emotional Rescue — ファルセット期の代表作
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