1998年10月4日放送の J-WAVE「TOKIO HOT 100」を振り返る回顧コラムです。当時のチャート上位曲を手がかりに、その週の音楽シーンを読み解きます。
本サイトは非公式のファンサイトです。チャートデータの出典:J-WAVE「TOKIO HOT 100」(1998年10月4日放送回)。
この週の音楽シーン
1998年10月4日放送分の「TOKIO HOT 100」で1位に輝いたのは、ローリン・ヒルの「DOO WOP (THAT THING)」だった。この年の夏に発表されたソロ・アルバム『The Miseducation of Lauryn Hill』からのシングルで、フージーズでの活動を経て単独名義で世に問うた楽曲として、当時のR&B/ヒップホップ・シーンに大きな衝撃を与えた一曲だ。ソウルフルな歌声とラップを一枚のトラックの中で自在に行き来する構成、そして生演奏を感じさせる温かみのあるサウンドは、打ち込み主体のヒップホップが主流だった時代にあって、むしろクラシックなソウル/ゴスペルの香りを強く感じさせるものだった。歌詞の内容についてここで踏み込むことは控えるが、男女それぞれの生き方や価値観に静かに問いを投げかけるメッセージ性の強さも、この曲が単なるヒット曲以上の存在感を放った理由のひとつだろう。
この週のTOP10を見渡すと、90年代後半という時代の音楽的な多様性がよく見える。2位のシェリル・クロウは、ロック的なソングライティングと女性シンガーソングライターらしい率直さを兼ね備えたアーティストとして、90年代を通してアメリカのメインストリームに確固たる地位を築いていた。3位のジュリアン・レノンは、ビートルズのジョン・レノンの息子という出自を超えて、独自のメロディセンスと繊細な声で長くファンを持つミュージシャンであり、彼の楽曲が並ぶこと自体が当時のロック・リスナー層の厚みを物語っている。4位のフーティー・アンド・ザ・ブロウフィッシュは、90年代前半のブレイク以降も安定した支持を集めていたバンドで、こうした「王道ロックバンド」がヒットチャートの中位に食い込んでくるのも当時らしい光景だ。
5位のホールは、オルタナティブ・ロックからの流れを汲むバンドで、「Celebrity Skin」はよりメロディアスでプロダクションの整った方向へと舵を切った作品として知られる。90年代前半のグランジ/オルタナ・ムーブメントがひと段落し、よりポップなアプローチへと変化していく過渡期の空気を感じさせる。6位のファストボールの「The Way」は、乾いたギターサウンドとキャッチーなメロディが印象的な楽曲で、この年のサマー・ヒットの一つとして記憶している人も多いはずだ。7位のデベラ・モーガンはR&B/ポップ・シンガーとして、8位のフィル・コリンズは言わずと知れたベテランとして、それぞれ異なる世代・スタイルの音楽性を持ち込んでいる。9位のカレン・ラミレスはダンス/クラブ・ミュージック方面からのヒットで、10位のナタリー・マーチャントは10,000 Maniacs時代から続くフォーク/ロック的な作家性を持つソロ・アーティストだ。
こうして並べてみると、この週のTOP10は、ヒップホップ/R&Bの新しい波、ロックの成熟、ダンス・ミュージックの浸透という、90年代後半のアメリカン・ポップスの縮図のようにも見える。とりわけローリン・ヒルの1位は、その後のR&B/ヒップホップの表現の幅を大きく広げていく象徴的な出来事として、今振り返っても意義深い。ジャンルの垣根を越えて聴き手を惹きつける楽曲が並んだこの週のチャートは、当時のラジオが果たしていた「新しい音楽への入口」としての役割を、あらためて思い出させてくれる貴重な記録と言えるだろう。
1998年10月4日付 TOP10(出典:J-WAVE TOKIO HOT 100)
- 1位 DOO WOP — LAURYN HILL ▶ YouTube Music / Spotify / 🛒 Amazonで探す / 🛒 楽天で探す
- 2位 MY FAVORITE MISTAKE — SHERYL CROW ▶ YouTube Music / Spotify / 🛒 Amazonで探す / 🛒 楽天で探す
- 3位 DAY AFTER DAY — JULIAN LENNON ▶ YouTube Music / Spotify / 🛒 Amazonで探す / 🛒 楽天で探す
- 4位 I WILL WAIT — HOOTIE AND THE BLOWFISH ▶ YouTube Music / Spotify / 🛒 Amazonで探す / 🛒 楽天で探す
- 5位 CELEBRITY SKIN — HOLE ▶ YouTube Music / Spotify / 🛒 Amazonで探す / 🛒 楽天で探す
- 6位 THE WAY — FASTBALL ▶ YouTube Music / Spotify / 🛒 Amazonで探す / 🛒 楽天で探す
- 7位 I LOVE YOU — DEBELAH MORGAN ▶ YouTube Music / Spotify / 🛒 Amazonで探す / 🛒 楽天で探す
- 8位 TRUE COLORS — PHIL COLLINS ▶ YouTube Music / Spotify / 🛒 Amazonで探す / 🛒 楽天で探す
- 9位 LOOKING FOR LOVE — KAREN RAMIREZ ▶ YouTube Music / Spotify / 🛒 Amazonで探す / 🛒 楽天で探す
- 10位 KIND AND GENEROUS — NATALIE MERCHANT ▶ YouTube Music / Spotify / 🛒 Amazonで探す / 🛒 楽天で探す


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