ストロークス6年ぶりの帰還 “Going Shopping”が示す新しい距離感

ネオンの光が滲むショッピングモールの通路と、その奥に見えるひとつの人影を抽象化したイメージ 楽曲

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The Strokesが戻ってきた。2020年の『The New Abnormal』から6年、バンドの動きを追ってきた側からすると、この空白は長かった。ジュリアン・カサブランカスがThe Voidzの活動に軸足を移していた時期を含めれば、なおさら。そこに突然、リード・シングルGoing Shopping🛒楽天が落ちてきた。初期の切っ先ではなく、時代のノイズを一枚薄いフィルム越しに眺める曲。ここには成熟ではなく、距離の取り方の更新がある。この記事はそれを解きに行く話です。

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この曲の要点

  • 「Going Shopping」は2026年のシングルで、The Strokesの7thスタジオアルバム『Reality Awaits』からのリードシングルであり、2026年4月7日にリリースされた。
  • アルバム『Reality Awaits』はコスタリカでプロデューサーのRick Rubinとレコーディングされ、世界各地で仕上げられた。2020年の『The New Abnormal』以来となる新作。
  • この曲はインディーロックにアートパンク、サーフロック、シンセポップの要素を含むと評されている。
  • アルバムはRCA/Cultからのリリースで、全長41:02、プロデューサーはRick Rubin。2nd シングル「Falling out of Love」は2026年5月13日にリリースされた。

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6年ぶりのシングルという事実の重さ

まず時間の話から。The Strokesの新曲を待つというのは、この10年ずっと続いてきた行為だった。『Reality Awaits』はThe Strokesにとって2020年の高く評価された『The New Abnormal』以来の新音源となる。この間、カサブランカスはThe Voidzを回し、他のメンバーもそれぞれ動いていた。バンドが完全に止まっていたわけではないけれど、”新曲”という形での更新は途絶えていた。

だから4月7日の朝、この曲がプラットフォームに並んだ瞬間、SNSのタイムラインが妙な空気になった。歓喜と、警戒と、その両方が混ざった空気。正直、自分も最初の30秒で判断がつかなかった。あのIs This Itの角ばったギターを期待していると、肩透かしを食う。だが数回聴くと、これは別の場所に向かっている曲だと気づく。そう。ここが分岐点。

NMEは6年の空白について皮肉と歓迎を混ぜて書いていて、The Strokesは最初の3枚をツアーで回し続けるだけでも稼げたはずなのに、そうしなかった正直さが歓迎されると評していた。これはこのバンドの立ち位置を突いている。過去で食える体勢を作らず、6年経ってから、明らかに過去とは違う手つきの曲を出してきた。この選択自体が、Going Shoppingの背景として大きい。

コスタリカとRick Rubin — 制作の周辺情報

制作環境が興味深い。『Reality Awaits』はコスタリカでプロデューサーのRick Rubinとレコーディングされ、世界各地で仕上げられた。Rubinがこのバンドを手掛けるのは初めてで、この組み合わせ自体がニュース性を持っていた。

Rubinの仕事の傾向を知っている人ならわかると思うが、彼は”引き算”の人だ。装飾を削って、演奏そのものの温度を残す。Going Shoppingを聴くと、その痕跡はある。ギターのレイヤーは薄めで、隙間が多い。ドラムのアタックは前に出ず、部屋鳴りをそのまま残したような手触り。一方で、後述するボーカル処理はむしろ足し算の方向で、そこのバランス感覚が独特の距離感を作っている。

コスタリカという場所も面白い。ニューヨークで生まれ、Room on Fire以降もマンハッタンの音を引きずってきたバンドが、中米の湿度と光の中で音を録った。The Crimsonのレビューはトラックはリラックスした中テンポのグルーヴに乗り、ギターはクリーンだがわずかにミュートされ、初期作より鋭さが減り、『The New Abnormal』の磨かれた質感に近いと指摘している。この”クリーンでややミュート”という状態は、ロケーションの気候と無関係ではない気がしている。

サウンドの読み — オートチューンと消費社会の霧

この曲を語るときに避けて通れないのがボーカル処理。カサブランカスがオートチューン/ピッチ補正を明確に前に出してきた点で、評価が真っ二つに割れている。NMEはニューヨークのロック古参が、賛否両論のオートチューン、整ったギター、そして時折きらめくエネルギーとともに、リテールセラピー(買い物療法)を通じて7thアルバム『Reality Awaits』を紹介したと評している。

この処理をどう受け取るかで、この曲の見え方は変わる。批判的な立場では、ピッチ補正がボーカルの上に非現実の層を加えるどころか、その上に乗ってフレージングと粒立ちを削いでしまい、ジュリアン・カサブランカスのパフォーマンスを追う価値そのものを削っている、という読みがある。この意見、わかる部分はある。初期のカサブランカスの声は、あのざらつきがすべてだった。それを均してしまうと、確かに何かが失われる。

ただ、別の角度もある。The Crimsonは「I can’t wait, I’m goin’ shoppin’」のようなラインが、意図的に空っぽで、ほとんど風刺的に響き、話者が同時に信じ、憎悪しているマントラのように反復される、と読んでいる。ここで、話者の声がフラットに処理されていることは、テーマと一致してしまう。消費のマントラを唱える声が、生身の温度を失って均される。装置としては、成立している。

Atwood Magazineの評はより肯定側で、ダイナミックで一見ゆるやかに聞こえるが、軽く楽な感触のグルーヴの上に組まれた、タイトでキネティックなインディーロックの一撃であり、The Strokesが常に得意としてきたものに寄り添いながら、静かにその縁を押し広げていると書いていた。ここで大事なのは”静かに縁を押し広げる”という言い方。革命ではなく、輪郭の再定義。

過去作との距離 — Angles、Comedown Machine、The Voidz

この曲の参照点は、Is This ItでもRoom on Fireでもない。音楽評論家によると、この曲はリードシンガー、ジュリアン・カサブランカスのThe Voidzでの仕事、そしてAngles、The New Abnormalに収録された過去のStrokesの曲を想起させる。

個人的な聴取メモを書くと、イントロのギターのフレージング処理を追っていくと、確かにAngles期の実験性——特にMachu Picchu周辺——との接続が見える。ただしそれよりもComedown Machine(2013)の湿度に近い瞬間が何度かある。The Michigan Dailyもサウンド面ではシングルがバンドの5thスタジオアルバムComedown MachineおよびカサブランカスのもうひとつのバンドThe Voidzを想起させ、シンセポップと風変わりなサーフロックにインスパイアされ、The Strokesが楽しんでいるように聞こえる、と評した。

ここが重要。Comedown Machineは、当時のリアルタイム評価で最も割れたアルバムだった。そこに戻る、あるいはそこを再訪する姿勢は、単なる懐古ではなく、”あの時に手を出しかけて中途半端になった領域”に、いまRick Rubinと組んで踏み込み直したという読みが成立する。バンドの中の時計は、直線ではなく、螺旋で回っている。

この曲の聴かれ方 — 平日午後に効くという読み

この曲、夜に聴いても正直あまり伸びない気がしている。初期のThe Strokesが持っていた”バーの明け方”的な機能は、ここにはない。むしろ、平日の午後、街に出て、雑貨屋の入口でふと立ち止まった時のBGMとして設計されているような手触りがある。中テンポでクリーンなギター、風刺として反復されるマントラ、その全体が生活の”買い物という行為の周辺”に置かれている。

だから、ファンが”リピートしてる”という時、それは初期のStrokesを繰り返し聴いていた時の反復とは、たぶん質が違う。あの頃の反復は熱の再訪だったが、この曲の反復は、生活の背景に置いておく反復に近い。断定はしないが、そういう聴かれ方を許容する設計になっている気がする。

批判側の意見も紹介しておくと、NMEはこのサウンドをThe Strokesの過去6枚のいずれにも明確に位置づけることはできないが、終盤のギターソロを除けば、精神や粘りに欠けることが目立つ、と評した。この見立ても正しい。初期の熱を求める人には、この曲は薄く感じる。逆に、薄いことを機能として使える人には、これは新しい引き出しになる。ここは聴き手側の姿勢で分かれる論点で、正解はない。

アルバム『Reality Awaits』の中の位置

単曲としてだけでなく、アルバム全体の中でこの曲がどこに立つのかも考えたい。プロデューサーはRick Rubinで、Reality AwaitsはThe Strokesの7枚目のアルバムであり、フルトラックリストは9曲の新曲を含む。9曲、41分。長くない。近年の大作志向の潮流とは逆側の設計です。

アルバムからのシングルはGoing Shopping(2026年4月7日リリース)に続き、Falling out of Love(2026年5月13日リリース)。この2曲目の存在は、Going Shoppingがアルバムの唯一の名刺ではないことを示している。リード曲が”消費と距離”のモチーフだとすれば、2曲目のタイトルには別のテーマが示唆されている。この構成は、アルバム全体がひとつの雰囲気で塗られているというより、複数の距離感を並べる方向に向かっている可能性を示している。

Rubinの介在も大きい。彼と組む多くのバンドで起きるのは、”バンドがバンドとして鳴る密度”の再確認。過剰なオーバーダブを剥がして、5人が同じ部屋にいることを聴かせる方向へ。Going Shoppingでオートチューンが目立つのは、その方針と矛盾するように見えて、実はカサブランカスの声を”演奏体の中のひとつの楽器”として扱っている、という別の統一性で成立している可能性がある。ここは6月26日以降、アルバム全体を通して聴いて再検証したい部分。

賛否が割れる曲を、どう聴くか

正直に書くと、この曲の評価はまだ揺れている。The Crimsonは総合的に肯定寄りだったが、NMEやCult Followingでは辛口の側面が強く、リスナー投稿レビューではもっと分裂している。バンドの歴史が長くなり、期待の総量が膨らんでいる状態で、6年ぶりの1曲目が”新しい距離感”を提示してきた。この受け止められ方は、そもそも一直線には収まらない。

ここでファンに問いたいのは、”初期のStrokesがくれた熱”と”いまのStrokesがくれる距離”を、どう並べて置くかという話。両方を欲しがると、Going Shoppingは肩透かしになる。どちらか一方を選べと言われれば、たぶん多くの人は前者を選ぶ。でも、両方を別々の棚に置くという整理をすると、この曲は棚のどこに置くかで機能が変わる。この整理は、リスナーの側の作業として残される。バンドは、その余白ごと投げてきた気がする。

聴きどころと、次への地図

聴きどころ3点

  • 終盤のギターソロ: 曲全体の”薄さ”を意識的に設計している中で、最後のギターだけが明確に熱を持って前に出る。NMEも例外的に評価していた箇所。ここのコントラストは、曲の設計思想を読む上での鍵になる。
  • ボーカル処理の是非: オートチューンをどう聴くか。装飾として拒否するか、テーマ(消費のマントラ)と一致した装置として受け入れるか。この判断で、曲の姿が変わる。
  • ギターのミュート具合: クリーンだが、わずかにダンパーがかかっている。この”半歩引いた”手触りが、コスタリカで録られたという事実と、Rubinの引き算志向と、たぶん繋がっている。

入門動線

Going Shoppingで初めてThe Strokesに触れた人には、逆順の入り方を勧めたい。まず前作The New Abnormal🛒楽天(2020)を通しで聴く。ここが”いまのStrokes”の起点で、Going Shoppingの手触りの多くはここからの延長線上にある。そこからさらに遡るなら、Comedown Machine🛒楽天(2013)。今回の曲の参照点として複数の評者が名前を挙げているアルバムで、当時割れた評価がいま聴くとどう変わるか、実験としても面白い。The Voidzの音源も、カサブランカスの現在のボーカル観を理解する補助線になる。

2000年代NYロック復権の文脈から見る

もう少し広い時代の枠で置いてみたい。2001年のIs This Itが同世代のNYCシーン——Interpol、Yeah Yeah Yeahs、TV on the Radio——を引き上げた歴史は、いま25年前の話になった。あの時期に大学生だったリスナーは、いま40代半ばで、初期作は”青春の名盤”の棚に固定されている。この棚の重力は強い。バンドが新曲を出すたびに、その重力に引き戻されて評価される。

Going Shoppingが背負っているのは、この重力です。過去3枚の力があまりに強いから、後発の曲は”初期に比べて”という補助線でしか語られない。この状況は、バンドにとって創作の枷になる。だから彼らはこの10年、あえて過去のフォーマットを繰り返さない方向で動いてきた。今回のオートチューンの強めの使用も、その戦略の延長として読めば筋が通る。復刻ではなく、変換。ここに賛否が集まるのは自然な帰結だと思う。

面白いのは、彼らと同時期にデビューした同世代バンドの現在地です。InterpolもYeah Yeah Yeahsもここ数年で新作を出していて、それぞれ初期のクリシェから距離を取る方向にいる。The Strokesが今回選んだ”消費社会の霧を、フラットな声で歌う”というアプローチは、この世代の共通したテーマ——初期のロマンティシズムをどう更新するか——への、彼らなりの答え方に見える。

まとめ — 距離の取り方の更新として

Going Shoppingは、The Strokesの過去の最良瞬間を更新する曲ではない。そういう曲を期待して聴くと、たぶん失望する。でも、このバンドが2026年に、6年の沈黙を経て、Rick Rubinとコスタリカで録った1曲目としてこれを選んだ、という事実には意味がある。消費と距離、マントラと風刺、装置としてのオートチューン。全部が完全に成功しているかは別として、彼らが”いま置きたい距離”を提示してきた。それを受け取るかどうかは、聴き手の側にある。個人的には、6月26日のアルバム全体を待って、この曲の位置を再評価するつもりでいる。1曲だけで結論を出すには、まだ早い。

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  • Comedown Machine / The Strokes — 今回の参照点にあるアルバム
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  • Angles / The Strokes — 実験期の入口
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  • Virtue / The Voidz — カサブランカスの並行線
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